世界初ナノカーレースでフェアプレー賞
世界初のナノカーレースで,日本チームがフェアプレー賞を受賞しました。それはどんなレースなのでしょうか。
ナノカーレースは,超高真空で超低温のコースで行われる最先端の科学者のみが挑戦できるカーレースです。

レースには,先端の分子原子の知恵と技術が駆使されます。

ナノカーレースへ挑戦する姿は,創造,協働,探求の姿であり,学校教育の「主体的・対話的深い学び」の先が見えるようです。

1 夢のある心躍るニュース

今朝の毎日新聞の朝刊を見ていると,興味深い見出しが目に飛び込んできました。

「日本『フェアプレー賞』ナノカーレース 棄権も復旧努力」毎日新聞西部版朝刊(2017/05/01)

世界初のナノカーレースで,日本チームがフェアプレー賞を受賞しました。

「フェアプレー」というのが,日本人らしくてよい。品性を感じさせます。

最先端のナノテクノロジーで,カーレースをする。子どもなら目を輝かせ大きな夢がもてるニュースです。大人も心躍るニュースです。

これがミクロの壁ナノカー… 分子レース,日本は棄権

ナノサイズ(ナノは10億分の1)の分子の「車」を走らせて速さを競う世界初の「ナノカーレース」がフランスで28,29の両日開かれた。日本代表の物質・材料研究機構(茨城県つくば市)のチームは途中棄権したが,復旧への努力が認められ「フェアプレー賞」を受賞した。

仏国立科学研究センターが主催。日米欧の6チームが参加し,パソコン画面を見ながら「車」に針で電気刺激を与えて動かし,金の表面に設けられた100ナノメートル(1万分の1ミリ)のコースを36時間以内に完走できるか競った。

日本チームは,計88個の原子からなる「車」(長さ2・1ナノメートル,幅0・93ナノメートル)を作製して出場。開始10分で1ナノメートル進んだが,パソコンの不具合で針が制御できなくなり,「車」が破損。復旧を試みるもかなわず,棄権した。優勝は,完走した米ライス大とオーストリア・グラーツ大の合同チームと,スイス・バーゼル大チーム。【大場あい】

毎日新聞2017年5月1日 東京朝刊「これがミクロの壁ナノカー… 分子レース,日本は棄権」, [online] https://mainichi.jp/articles/20170501/ddm/041/040/145000c(参照2017-5-1)

2 PC制御のナノカー:プログラミング的思考の発揮場面

パソコンで制御するナノカーとなれば,これはまさにプログラミング的思考を発揮する場面です。

日本チームの健闘をたたえながらも,プログラミング的思考を発揮する具体の場面を探ってみることとしました。

ナノカーレースとはどんなものなのでしょうか。

マテリアルズ・エデュース・センターによれば,レースのルールは以下のようです。

なお,要約等をしています。正確な情報は最下部当該ウェブサイトを参照下さい。

3 最先端の科学者のみが挑戦できるカーレース

グランプリのルール一般規則

ナノカーは,同じ結晶質の金表面の小さな部分に準備された滑走路(コース)を自由に使えます。

滑走路の表面は,10 -8 Paまたは10 -10 mbarの10 -10 Torr(UHV)である超高真空中の5 Kelvin = -268°C(LT)の最低温度に維持されます。

このPaやmbar,Torrは圧力の単位です。

上記の数値は,ナノカーの走るコースが真空ということを示します。

私たちが生活する通常の大気圧が,1,013ヘクトパスカルで103レベルの桁数です。

コースの圧力が10-10というのですから,一般人にとっては,空気は全くない,圧力は全くない空間というイメージでしょう。

また,温度は,5ケルビンです。

摂氏℃に換算すると,コースの温度は,-268.15℃ です。

日本の最低気温は,-41.0℃。

1902年1月25日に,北海道上川地方旭川で記録(気象庁)されました。

0ケルビンは,エネルギーが最低で,原子の振動が完全に止るという最低の温度です。

このルールの圧力と温度から,ナノカーが頑張って走るコースは,圧力が全くなく,極めて低い温度で行われるカーレースです。

また,コースは,金,ゴールドで作られています。

人間の生活環境からすると極めて特異な環境のコースで,目に見えないナノカーの競争です。

まさに,最先端の科学者のみが挑戦できる唯一のカーレースです。

F1やGT500レースのように,空気抵抗を減らしたりダウンフォースを調整したりする車体の工夫とは無縁の世界です。

日本のナノカーには,温度も低く息もできなくて苦しいが,金メダル目指して頑張ってほしいところです。

4 最先端の分子原子の知恵と技術を駆使したナノカーレース

(1)コースのきまり

レース時間は,コースを作る時間も含めて2日。

コースは,低温走査型トンネリング顕微鏡(LT-UHV-STM)で作り,レースの開始前に独立したトラック監督官によって認められます。

競技者ごとに,1つの滑走路が金の金属原子を使ってつくられます。

ナノカーは,開始線から到着線まで,これらの広告原子の周りを循環します。開始線と到着線の各線は,2つの金の広告原子で区切られ,その間隔は4ナノメートル未満です。コースには,最低5本の金の広告原子ラインを作る必要があります。

分かりやすいイメージで考えると,

普通乗用車が4メートルの幅のスタートラインから100メートルのコースを走る。

コースの間には,パイロンが5個並んでいる。

それ避けながらをジグザグ走行。

4メートル幅のゴールラインを通過してフィニッシュ。

というレースのようです。

ただし,ドライバーは乗れません。ナノカーの操縦は,コンピュータと機械を使って針で刺激を与えて動かします。

(2)車体のきまり

必須ではありませんが,ナノカーの構造にもルールがあります。

部品は原子100個まで。ナノカーには,4輪,シャーシ,モーターを装備するそうです。

いくつかの原子を接着して,ナノカーを創ります。

まるで,粘土を丸めて投げつけて車体をつくる粘土工作のようです。

分子モデルを拝見するとそう思えますが,どうやって形が作れるのか興味深いところです。

おそらく筆者には想像もつかない高度な知識と技能,気力,体力を必要とするのでしょう。

日本チームは,

88個の原子を使い

長さ2・1ナノメートル,幅0・93ナノメートル

のナノカーを作ったそうです。

結果は先の記事の通りです。

5 創造,協働,探求,挑戦,主体的・対話的深い学びの最先端

このナノカーレースに参加した日本チームのチームリーダー中西和嘉氏が,レースについてコメントしていました。

そのコメントの冒頭には,各国のチームが,創造性を発揮し工夫を凝らしたナノカーを持ち寄り,悪戦苦闘した様子が語られていました。

シンプルで確実に走る車,

4つの分子で設計したが,分子が1つ足りなかった車,

持ち上げが困難で,タイヤが外れた大きな車,

美しい4輪だが,スピンして動けなかった車。

日本は「しなやかに形を変えるというもので,レース会場の金表面に乗せた時には折りたたまれた状態で,走るために平たく引き延ばしてから使う」(中西氏)車です。

日本車はコースには広げられたが,コンピュータの故障で,1ナノメートルの移動という記録で終えたそうです。

「ナノカーレースは,ナノカーを早く走らせることがレースを勝つためのルールではありますが,それ以外にも様々な研究上の意義があります。

わざわざ操作が難しい分子の車を選び,その車の性能や制御法を確かめるチームがいくつもありました。」(中西氏)

このニュースから,具体的なプログラミング的思考の場面を見出すことができませんでした。

しかし,レース中は6チームの研究者が一堂に会して,人も車も影響を与えながら,トラブル時には助け合いながらレースを競ったそうです。

その姿には,読む人に感銘を与えます。

ナノカーの創造,問題解決の協働・探求,新たな試みへの挑戦。

新学習指導要領のキーワードである「主体的・対話的深い学び」が,最先端で高度に実践される一つの姿と考えます。

中西和嘉NIMS-MANA「ナノカーレース日本チーム チームリーダー中西和嘉のコメント」, [online] http://www.nims.go.jp/mana/moleculecarrace/index_jp.html(参照2017-5-1)

1 世界初のナノカーレースで,日本チームがフェアプレー賞を受賞。

2 超高真空中超低温のコースで行われる最先端の科学者のみが挑戦できるカーレースです。

3 レースには,先端の分子原子の知恵と技術が駆使されます。

4 ナノカーレースへ挑戦する姿は,創造,協働,探求の姿であり「主体的・対話的深い学び」の先が見えるようです。

CEMES – CNRS 構造物(UPR 8011)のマテリアルズ・エデュース・センター「分子自動車の初めてのレース – トゥールーズ(フランス),2017年4月28-29日ナノカーレースグランプリのルール」, [online] http://www.cemes.fr/Molecule-car-Race?lang=en(参照2017-5-1)