A判とB判の図形としての無理数の関係
コピー用紙などのA判とB判規格の紙は,図形としてどのような関係にあるのでしょうか。
A判・B判規格の紙は,どれも短辺と長辺の長さの比が \(1:\sqrt{2}\) の相似な長方形です。
また,AB判で同一番号であれば,B判の面積はA判の面積の 1.5 倍です。A0判の面積は \(1m^2\),B0判の面積は \(1.5m^2\) とし,2等分と相似の原則に基づいて,各判各辺の長さが決まっています。
A0判,B0判の紙を2等分するとそれぞれA1判,B1判ができます。さらに2等分を続けると,A2,B2,…ができます。それらは全て相似形です。
AB同一番号のA判の短辺と長辺,B判の短辺と長辺の比は,\(1:\sqrt{2}:\sqrt{\dfrac{3}{2}}:\sqrt{3}\) です。
短辺と長辺の比が \(1:\sqrt{2}\) であることを,紙を二度折って確かめることができます。
A4判紙の対角線とB4判紙の長辺が \(\sqrt{3}\) であることを,紙を折って回転させたり,重ねて回転させたりして確かめることができます。
※1929年(昭和4年)に,JIS(日本工業規格)の前身JESによって制定。2019年(令和元年)日本産業規格(JIS,英語名称は継続)







1 辺の比は \(1:\sqrt{2}\)

コピー用紙などA判とB判と呼ばれる紙のサイズには,決まりがあります。A判B判紙の2等分を繰り返しそれらが互いに相似となるように,紙のサイズが決まっています。
具体的には,A判,B判規格の紙は,どれも形が同じです。長方形の短辺と長辺の長さの比が \(1:\sqrt{2}\) の相似形です。
また,B判の面積はA判の面積の 1.5 倍です。A判についてはA0判の面積を \(1m^2\),B判についてはB0判の面積を \(1.5m^2\) とし,2等分と相似の原則に基づいて,各判各辺の長さを決めています。

上記の詳しい内容は,別稿「A判・B判紙の長辺と短辺の比は 1:√2*1を参照ください。

なお,この「判」の呼称に関連して「シリーズ,列」という呼称があります。本稿では,引用部分以外は,便宜的にA4判,A判などと一律に「判」を使用することとします。

本稿では,A判とB判の図形としての関係を数学的な見方・考え方で考えていきます。
$$f(A)=B$$

2 A判とB判の辺の比の関係

はじめに紙サイズを決める際の前提条件を確かめます。
まず,\(f(A)=f(B)\) という関係についてです。
A判の短辺\(a_x\)と長辺\(a_y\),B判の短辺\(b_x\)と長辺\(b_y\)の比は,常に一定です。これは,「2等分と相似の原則」*1によります。
\[a_x:a_y=b_x:b_y=1:\sqrt{2}\tag{1}\]
次に,\(S_B(c)=\dfrac{3}{2}S_A(c)\) という関係についてです。
A0判の面積 \(S_{A0}\),B0判の面積 \(S_{B0}\) については,
$$\begin{equation}\begin{split}S_{A0}&=1m^2\\S_{B0}&=1.5m^2=\dfrac{3}{2}m^2\end{split}\end{equation}$$
一般に,同一番号のA判の面積\(S_A\),B判の面積\(S_B\)の比は次のようです。
\[S_A:S_B=1:\dfrac{3}{2}(=2:3)\tag{2}\]
さらに,A判とB判の辺の比の関係についてです。
(1),(2)より,同一番号のA判の短辺\(a_x\)と長辺\(a_y\),B判の短辺\(b_x\)と長辺\(b_y\)の比は,次のようになります。
$$a_x:a_y:b_x:b_y=1:\sqrt{2}:\sqrt{\dfrac{3}{2}}:\sqrt{3}\tag{3}$$
このようになる理由は,相似な2つの図形では相似比が \(a:b\) ならば面積の比は \(a^2:b^2\) という性質をもつからです。逆に,面積比から見れば辺の比は平方根の比になります。
$$\begin{equation}\begin{split}S_A:S_B=1:\dfrac{3}{2}\longrightarrow a_x:b_x&=\sqrt{1}:\sqrt{\dfrac{3}{2}}\\&=1:\sqrt{\dfrac{3}{2}}\end{split}\end{equation}$$
A判の短辺と長辺を \(a_x=1,b_x=\sqrt{\dfrac{3}{2}}\) とすると,
$$\begin{equation}\begin{split}a_y&=\sqrt{2}a_x\\&=\sqrt{2}\\b_y&=\sqrt{2}b_x\\&=\sqrt{2}\sqrt{\dfrac{3}{2}}\\&=\sqrt{3}\end{split}\end{equation}$$
これらから,(3)\(a_x:a_y:b_x:b_y=1:\sqrt{2}:\sqrt{\dfrac{3}{2}}:\sqrt{3}\) といえます。
(3)の辺の比を使って面積の関係を調べると,以下のように,\(S_B=\dfrac{3}{2}S_A\) になります。
$$\begin{equation}\begin{split}S_A&=a_x\times a_y\\&=a_x\times\sqrt{2}a_x\\&=\sqrt{2}a_x^2\\S_B&=b_x\times b_y\\&=\sqrt{\dfrac{3}{2}}a_x\times\sqrt{3}a_x\\&=\dfrac{3}{2}\sqrt{2}a_x^2\\&=\dfrac{3}{2}S_A\end{split}\end{equation}$$
このように,A判の面積 \(S_A\) とB判の面積 \(S_B\) との関係は,(3)から,\(S_B\) は \(S_A\) の \(1.5\) 倍になっていることが確かめられます。

3 紙を操作して確かめよう

(1)\(\sqrt{2}\) を確かめる

短辺と長辺の比が \(1:\sqrt{2}\) であることを,実際に紙を折って確かめることができます。
頂点Bを中心に頂点Cを折り返して,\(AB\)上に点Eをとります。
\(\triangle BCF\equiv \triangle FEB\) から,□ABEFは正方形です。このとき,正方形の対角線\(BF\)は,三平方の定理より \(\sqrt{2}\) です。\(AB=\sqrt{2}\)であるので,対角線\(BF\)は\(AB\)と一致するはずです。
そのことを紙を折って確かめてみましょう。
長さの確認まず,頂点Bを中心に頂点Cを折り返して,\(AB\)上に点C’を置き,\(AB\)と\(BC’\)を重ねます。折り目\(BF\)とCDの交点を点Fとします。
次に,頂点Bを中心に頂点Fを折り返して,\(AB\)上に点F’を置き,\(AB\)と\(AF’\)を重ねます。
すると,\(AB\)と\(BF’\),点Aと点F’が重なるはずです。正確に折れれば,ほぼ重なります。
重ならない場合は,A判とB判規格の紙ではないことになります。

(2)\(\sqrt{3}\) を確かめる

① 対角線と長辺は \(\sqrt{3}\)

A判の紙の短辺を 1 とすると,長辺は \(\sqrt{2}\) です。対角線の長さはどうなるでしょうか。
△ABCは直角三角形なので,三平方の定理を使って求めます。
$$\begin{equation}\begin{split}AB^2+BC^2&=CA^2\\1^2+\sqrt{2}&=CA^2\\CA^2&=3\\CA&=\sqrt{3}\end{split}\end{equation}$$
したがって,A判の紙の短辺を 1 とすると,対角線は \(\sqrt{3}\) です。\(\sqrt{3}\) といえば,B判の長辺の長さの比です。
同一番号のA判の短辺\(a_x\)と長辺\(a_y\),B判の短辺\(b_x\)と長辺\(b_y\)の比は,次のようでした。
$$a_x:a_y:b_x:b_y=1:\sqrt{2}:\sqrt{\dfrac{3}{2}}:\sqrt{3}\tag{3}$$
このことから,同一番号のA判の紙を対角線で折ってできる直線を,同一番号のB判の長辺に重ねると,長さが一致するはずです。

② 折って回転させる

対角線の長さA4判の対角線ACとB4判の長辺EFの比が \(AC=EF=\sqrt{3}\) であることを,実際に紙を折って確かめることができます。
まず,A4判を対角線ACで折って,頂点CをC’の位置へ移動させます。
次に,頂点CをB4判の頂点Fに合わせます。頂点Cを中心に右回りにACを回転させます。
A4判の対角線ACをB4判の長辺EFに合わせると,A4判の頂点AがB4判の頂点Eに一致し,\(AC=EF\),長さが同じになります。
実際に,A4判を対角線で折って,B4判の長編に重ねると,長さがほぼ一致します。

③ 重ねて回転させる

対角線を回転A4判紙の対角線BDとB4判紙の長辺EFの比が \(BD=EF=\sqrt{3}\) であることを,重ねて回転させて確かめることができます。
まず,B4判の頂点FとA4判の頂点Bを合わせて,A4判をB4判の上に左図のように重ねます。
次に,頂点Bを中心に,左回りにABを回転させます。すると,A4判の対角線BDとB4判の長辺EFが一致します。
このことは、頂点Eが,中心B,半径BDの円の円周上にあることを意味します。
このことから,\(BD=EF=\sqrt{3}\) といえます。

4 まとめ

A判・B判規格の紙は,A0判の面積は \(1m^2\),B0判の面積は \(1.5m^2\) とし,2等分と相似の原則に基づいて,各判各辺の長さが決まっています。
A判とB判の関係は,以下のようです。
A判の短辺\(a_x\)と長辺\(a_y\),B判の短辺\(b_x\)と長辺\(b_y\)の比は,常に一定です。これは,「2等分と相似の原則」*1によります。
\[a_x:a_y=b_x:b_y=1:\sqrt{2}\tag{1}\]
同一番号のA判の面積\(S_A\),B判の面積\(S_B\)の比は次のようです。
\[S_A:S_B=1:\dfrac{3}{2}(=2:3)\tag{2}\]
同一番号のA判の短辺\(a_x\)と長辺\(a_y\),B判の短辺\(b_x\)と長辺\(b_y\)の比は,次のようになります。
$$a_x:a_y:b_x:b_y=1:\sqrt{2}:\sqrt{\dfrac{3}{2}}:\sqrt{3}\tag{3}$$
・ 短辺と長辺の比が \(1:\sqrt{2}\) であることを,実際に紙を折って確かめることができます。
・ A4判紙の対角線とB4判紙の長辺が \(\sqrt{3}\) であることを,実際に紙を折って確かめることができます。また,重ねて回転させて確かめることもできます。