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レシートを電子化する社会実験が始まります。そこにはどんなよさがあるのでしょうか。
電子レシートをスマホで管理し,データを役に立てる時代がやって来ます。

経済産業省が実店舗で電子レシートアプリを活用するデータポータビリティの社会実験を始めました。消費者が個人データを価値ある資産として自己管理する今後の国内標準につなぐためです。

購入情報を企業は活用し個人は価値を意識しない現状があります。年代や学校段階に応じて情報や仕組を主体的に活用する力の啓発が必要です。

本稿では,情報や仕組を主体的に活用する大切さについて考えます。

1 購入情報が資産価値を生む

経済産業省のホームページに,「電子レシートが資産価値を持つ時代へ」と題して次のようなトピックが掲載されました。

内容は,個人データを自己管理できるデータポータビリティが,個人に具体的にどのようなメリットがあるのか社会実験をするというものです。

2 データポータビリティの社会実験

実際の店舗で電子レシートのアプリを来店客に配って手元で操作してもらいます。

参加ユーザーには,様々な企業からオファーが来ます。

その日に買った生鮮食料品のリストを,電子レシートアプリで提供すると,素敵なレシピを勧められたり,アンケート回答でポイントがもらえたりします。

この仕組には不安があるかもしれません。

しかし,今回の実験のポイントは,自分の情報は,自分で管理した方が安心できることに気づいてもらうことです。

抵抗感をなくすため,アプリは,名前や年齢などの提供範囲を簡単に設定できたり,特典不要のときは情報を提供しない設定もできたりします。

アプリの使い勝手や,特典に応じてどこまでデータ提供に納得してもらえるか,などを細かく分析し改善します。

消費者が自分の個人データを,価値のある資産として,自分で管理しやすくなる今後の国内標準につなげたいとのことです。

経済産業省【60秒解説】「電子レシートが資産価値を持つ時代へ」2017年2月16日 [ONLINE]http://www.meti.go.jp/main/60sec/2017/20170216001.html(要約)(参照2017年4月27日)

3 購入情報を企業は活用し個人はその価値に気付いていない

私たちは,日常の生活でスーパーやコンビニなどで買い物をします。

ある客は,レシートを受け取らないかもしれません。

ある客は,レシートを受け取り,購入商品や金額等を確かめるかもしれません。

レシートはその後,おおむね処分されます。そこで終わりです。

一方,店舗側では,購入情報の活用を進めています。

例えば,50代男性,パン2個240円,牛乳パック500ml100円,4月27日木曜日7:15,晴れ,気温25度など,レジに入力して購入情報を店舗経営に活用しています。

人工知能も導入されています。

コンピューターが,例えば「パンを買う人は,牛乳も買う」と,パンと牛乳の関連の強さを見つけます。

気温が上がると牛乳が売れるなど,気温と売上量に正の相関があるかもしれません。

分析結果を基に,商品配置を工夫し買いやすくしたり,気温に応じて仕入れ数を調整したりするなど,実際の経営改善に情報を生かしています。

インターネット通販では,購入履歴を活用しています。

購入履歴から,購入の傾向を推測します。

購入者におすすめの商品を電子メールで案内したり,「よく一緒に購入されている商品」をサイトで表示したりなどのサービスを提供しています。

筆者は,先日某サイトからある商品を購入しました。

数日後に,同じ商品を含めた関連商品のおすすめメールが届きました。

メール冒頭には,「購入有り難うございました」との言葉。

まだ,購入商品は届いていません。店舗側は商品を受領したと考えているのではと,不安になりました。

そこで,店舗に商品が未到着である旨を電子メールで連絡すると,

「インターネット運営サイト側のサービスで,自動的に電子メールが届く仕組です。」とのことでした。

店舗側の発信と思った電子メールは,実は運営サイト側の発信でした。

筆者には,発信元が峻別できていなかったのです。

仕組や働きを知らないとうまく活用できない。

また,運営サイトは,購入情報をリアルタイムで活用している。

このことを実感しました。

このように,個人の購入情報の使われ方・使い方には,漠然とした不安感はありましたが,強い関心を向けることがありませんでした。

これは,筆者一人ではないと考えます。

4 情報や仕組を主体的に活用する力を育成する

個人の購入情報は個人のものである。

そして,それを積極的,主体的に活用することで,資産価値を生むという視点に気付かされました。

個人の情報はこれだけではありません。

起床時刻や物を使う時間等の生活行動に関わる時間・時刻,

症状の進み具合と医療機関への受診行動などです。

データの集約技術が進めば,多種多様な情報が活用できるようになると考えられます。

「自分の情報を主体的に活用する」視点がもてれば,日常の小さな生活場面の改善に生かされることが期待できます。

朝ご飯の準備で,いつも同じ物を遠いところから運んでいる。

これを近くに置く。

そうすれば,ほんの数秒ですが効率化できます。

このような主体的な情報活用の考え方は,教育によって培われるものです。

年代や学校段階に応じて,情報や仕組を主体的に活用する力について啓発していくことが必要と考えます。

このことは,情報教育やプログラミング教育の背景の一つといえるでしょう。


1 経済産業省が実店舗で電子レシートアプリを活用するデータポータビリティの社会実験を始めました。

2 消費者が個人データを価値ある資産として自己管理する今後の国内標準につなぐためです。

3 購入情報を企業は活用し個人は価値を意識しない現状があります。

4 「自分の情報を主体的に活用する」視点は日々の生活改善の視点でもあります。

5 年代や学校段階に応じて情報や仕組を主体的に活用する力の啓発が必要と考えます。