4領域構成の中学校数学科とつながる5領域構成の算数科
算数科の内容は,どのような領域で構成されるのでしょうか。
平成29年改訂小学校学習指導要領における算数科の内容は,次の5領域で構成されます。
A 数と計算
B 図形
C 測定 (第1〜3学年)
C 変化と関係 (第4〜6学年)
D データの活用
○ 幼小の連携の視点,算数科と数学科の接続の視点から,算数科で育成する資質・能力の具体的内容をより明確にしています。
○ 領域は,測定のプロセスを充実する下学年「C測定」領域と計量的考察を含む図形領域の上学年「B 図形」に再編成するなど,内容の系統性や発展性の全体を,中学校数学科との接続を視野に入れ,整理しています。
○ 数学的活動は,5領域とは縦軸と横軸の関係にあり,小学校算数科の教育課程全体に構造的に位置付けられます。
○ 昭和33年から約60年間は,数と計算,量と測定,図形,数量関係の4領域構成でした。その中にあって,今回の改訂で算数科の内容が5領域で構成されたことは,重要な意味をもちます。

1 改定後の領域の構成

平成29年改訂小学校学習指導要領における算数科の内容は,以下の五つの領域で構成されます。【図2】
A 数と計算
B 図形
C 測定 (第1〜3学年)
C 変化と関係 (第4〜6学年)
D データの活用
これらの領域の区分けは,小学校における主要な学習の対象を,それぞれ次のように設定したものです。
・ 数・量・図形に関する内容とそれらの考察の方法を基本とする領域:A数と計算,B図形,C測定
・ 事象の変化や数量の関係の把握と問題解決への利用を含む領域:C変化と関係
・ 不確実な事象の考察とそこで用いられる考え方や手法などを含む領域:Dデータの活用
算数科の内容は5領域構成ですが,学年ごとに見ると4領域構成です。
「C測定」と「C変化と関係」については,上学年と下学年で分かれます。「測定」は下学年,第1学年から第3学年の領域です。「変化と関係」は上学年,第4学年から第6学年の領域です。
すなわち,第1学年から第3学年は「数と計算」「図形」「測定」「データの活用」の4領域で,第4学年から第6学年は「数と計算」「図形」「変化と関係」「データの活用」の4領域で構成されます。

【図1】改訂前(平成20年)算数科内容の領域
ryouiki1
【図2】改訂後(平成29年)算数科内容の領域
ryouiki2

2 改訂前の領域の構成

(1)小学校算数科

平成20年改訂時の領域

平成20年改訂小学校学習指導要領における算数科の内容は,次の4領域の構成です。【図1】
A 数と計算
B 量と測定
C 図形
D 数量関係
4領域の後に〔算数的活動〕の内容が示されます。
これらの領域は,算数の内容の全体を見やすくし,内容の系統性や発展性を分かりやすくするよう構成されています。
A,B,Cの3領域は,算数の学習対象である数,量,図形に対応したものです。
具体的には,
「A数と計算」は,整数,小数,分数などの数の意味や表し方,数の計算,
「B量と測定」は,身の回りのいろいろな量の単位とその測定,
「C図形」は,平面図形や立体図形の意味と性質,図形の構成の内容によって構成されます。
これらの3領域では,数,量,図形の意味を理解し,計算,測定や構成を密接に結び付けた指導が大切です。また「D数量関係」は,数量や図形についての共通の考え方や方法,変化や対応などの関数の考え,式による表現,表やグラフを指導します。

算数科領域の標題は「数と計算」と「図形」で表現形式が異なる

領域の変遷

昭和33年(1958年)から今回の改訂までの小学校学習指導要領における算数科の領域構成は,次のようです。
平成20年小学校学習指導要領第2章各教科第3節算数

学年\領域 A B C D
第1学年 数と計算 量と測定 図形 数量関係
第2学年 数と計算 量と測定 図形 数量関係
第3学年 数と計算 量と測定 図形 数量関係
第4学年 数と計算 量と測定 図形 数量関係
第5学年 数と計算 量と測定 図形 数量関係
第6学年 数と計算 量と測定 図形 数量関係

平成10年小学校学習指導要領第2章各教科第3節算数

学年\領域 A B C D
第1学年 数と計算 量と測定 図形
第2学年 数と計算 量と測定 図形
第3学年 数と計算 量と測定 図形 数量関係
第4学年 数と計算 量と測定 図形 数量関係
第5学年 数と計算 量と測定 図形 数量関係
第6学年 数と計算 量と測定 図形 数量関係

平成元年小学校学習指導要領第2章各教科第3節算数

学年\領域 A B C D
第1学年 数と計算 量と測定 図形
第2学年 数と計算 量と測定 図形
第3学年 数と計算 量と測定 図形 数量関係
第4学年 数と計算 量と測定 図形 数量関係
第5学年 数と計算 量と測定 図形 数量関係
第6学年 数と計算 量と測定 図形 数量関係

昭和52年小学校学習指導要領第2章各教科第3節算数

学年\領域 A B C D
第1学年 数と計算 量と測定 図形
第2学年 数と計算 量と測定 図形
第3学年 数と計算 量と測定 図形 数量関係
第4学年 数と計算 量と測定 図形 数量関係
第5学年 数と計算 量と測定 図形 数量関係
第6学年 数と計算 量と測定 図形 数量関係

昭和43年小学校学習指導要領第2章各教科第3節算数

学年\領域 A B C D
第1学年 数と計算 量と測定 図形
第2学年 数と計算 量と測定 図形 数量関係
第3学年 数と計算 量と測定 図形 数量関係
第4学年 数と計算 量と測定 図形 数量関係
第5学年 数と計算 量と測定 図形 数量関係
第6学年 数と計算 量と測定 図形 数量関係

昭和33年小学校学習指導要領第2章各教科第3節算数

学年\領域 A B C D
第1学年 数と計算 量と測定 図形
第2学年 数と計算 量と測定 図形
第3学年 数と計算 量と測定 数量関係 図形
第4学年 数と計算 量と測定 数量関係 図形
第5学年 数と計算 量と測定 数量関係 図形
第6学年 数と計算 量と測定 数量関係 図形

出典:学習指導要領データベース作成委員会(国立教育政策研究所内)「学習指導要領データベース」平成13年3月31日[ONLINE]https://www.nier.go.jp/guideline/(cf:2018-12-22)

このように,算数科においては,過去約60年間「数と計算」「量と測定」「図形」「数量関係」の4領域構成でした。数量関係と図形で順序が前後したり,数量関係の設定学年が変更されたりすることはありましたが,領域は基本的に変わることはありませんでした。

その中で,数量関係の指導内容について,下位領域の名称を明示した時期がありました。
具体的には,昭和33年小学校学習指導要領では,第2学年数量関係は「式・公式,表・グラフ」で,第3学年以上は「割合,式・公式,表・グラフ」で構成されます。
昭和43年小学校学習指導要領では,第2学年数量関係は「式表示,統計」で,第3学年以上は「関数,式表示,統計」で構成されます。

昭和43年小学校学習指導要領 第2章 各教科 第3節 算数 第2各学年の目標および内容〔第4学年〕2内容
D 数量関係
関 数
(1) 伴って変わる二つの数量について,その関係を調べる能力をのばす。
ア 変化の様子を折れ線グラフなどに表わしたり,それから変化の特徴をよみとったりすること。
式表示
(2) 数量の関係を式で簡潔に表わしたり,それらをよんだりする能力をのばす。
ア 四則の混合した式や( )を用いた式について,計算の順序やその意味を知ること。
イ 等号を用いた式について,その両辺に同じ数を加えたり引いたりしても,その等号の表わす関係が正しいことを知ること。
(3) 公式についての考え方を理解させ,公式を用いる能力をのばす。
統 計
(4) 棒グラフや折れ線グラフを用いる能力をのばす。
(5) 集合に着目するなどして,資料を正しく分類整理する能力をのばす。
ア 二つの事がらに関して起こる場合を,図などを用いて調べること。
イ 資料の落ちや重なりについて検討すること。
出典:学習指導要領データベース作成委員会(国立教育政策研究所内)「学習指導要領データベース」平成13年3月31日[ONLINE]https://www.nier.go.jp/guideline/(cf:2018-12-22)

上記の昭和43年では,関数の内容は「数量関係」の下位領域の指導内容という取り扱いです。
当然,現在でも,関数の考えの指導内容は明示され,指導は行われています。しかしながら,昭和43年のように「D数量関係 (関数)」などと下位領域の名称を明示していません。いずれにしても「関数」は「数量関係」領域に位置付けられてきました。
これらを踏まえると,平成29年改訂小学校学習指導要領における算数科の内容が,一部名称を変更した5領域で構成されたことは,重要な意味をもちます。資質・能力や枠組み改善の観点,連携・接続の視点等の改定の趣旨を十分理解する必要があります。
その上で,該当領域や算数科にとどまらず,中学校数学の趣旨や指導方法・内容,そして幼稚園の指導内容等,できれば高等学校の数学を見渡して,該当の指導内容の位置を確かめる必要があります。

(2)中学校数学科

平成20年改訂時の領域

平成20年改訂中学校学習指導要領における数学科の内容は,次の4領域の構成です。
A 数と式
B 図形
C 関数
D 資料の活用
数量や図形は学習対象として明確であることから,普遍的かつ基礎的な内容の領域として「A数と式」及び「B図形」の2領域があります。
これまで「C数量関係」は,数学的な見方や考え方と数学を活用する能力の伸長を図る領域でした。今回の改訂で,不確定な事象を対象とする新たな領域として「D資料の活用」を設けたことに伴い, 関数にかかわる内容は,趣旨を継承し「C関数」領域として独立しました。
「D資料の活用」は,確率に関する内容に,資料の特徴や傾向を数学的に考察し把握することや,母集団の特徴を標本調査により推測することを加え,それらを利用して日常生活や社会で起こる事象を取り上げて考えたり判断したりする活動を中心に構成しています。
このように見ると,4領域の相互の関係は次のように説明できます。
考察の対象が,確定した事象の「A数と式」,「B図形」及び「C関数」,不確定な事象の「D資料の活用」の領域に分けられます。
さらに,考察の方法が,静的な「A数と式」と「B図形」,動的な「C関数」の領域に分けられます。
「C関数」の領域ではぐくまれた関数的な見方や考え方は「A数と式」や「B図形」の領域の内容の理解を深化させてくれるし,また,「C関数」の領域の内容を理解するためには「A数と式」や「B図形」の領域の内容の理解が不可欠です。
次の表は,小学校算数科第6学年の領域と主な内容と中学校数学科の領域を並べたものです。

小学校算数科の領域と主な内容 中学校数学科の領域
A 数と計算 ・数の概念 A 数と式
・整数,小数,分数の計算
B 量と測定 ・重さ,速さなど生活に必要な量と測定
・長さ,面積,体積など図形の計量 B 図形
C 図形 ・図形の性質
D 数量関係 ・□,△,a,x などを用いた式 A 数と式
・伴って変わる数量の関係 C 関数
・比例,反比例
・場合の数 D 資料の活用
・資料の整理

中学校数学科「A数と式」の領域には,小学校算数科「A数と計算」と「B量と測定」の一部及び「D数量関係」の領域の一部が対応します。
中学校数学科「B図形」の領域には,小学校算数科「B量と測定」の一部と「C図形」の領域が対応します。
小学校算数科では図形を測定することと図形の性質を調べることは二つの領域に分かれていますが,中学校数学科の「B図形」の領域ではそれらが図形を調べる二つの代表的な視点として位置付けられます。
中学校数学科の「C関数」と「D資料の活用」の領域には,小学校算数科の「D数量関係」の領域の一部が対応します。

領域の変遷

昭和33年(1958年)から今回の改訂までの中学校学習指導要領における数学科の領域構成は,次のようです。
平成20年中学校学習指導要領第2章各教科第3節数学

学年\領域 A B C D
第1学年 数と式 図形 関数 資料の活用
第2学年 数と式 図形 関数 資料の活用
第3学年 数と式 図形 関数 資料の活用

平成10年中学校学習指導要領第2章各教科第3節数学

学年\領域 A B C
第1学年 数と式 図形 数量関係
第2学年 数と式 図形 数量関係
第3学年 数と式 図形 数量関係

平成元年中学校学習指導要領第2章各教科第3節数学

学年\領域 A B C
第1学年 数と式 図形 数量関係
第2学年 数と式 図形 数量関係
第3学年 数と式 図形 数量関係

昭和52年中学校学習指導要領第2章各教科第3節数学

学年\領域 A B C D
第1学年 数と式 関数 図形
第2学年 数と式 関数 図形 確率・統計
第3学年 数と式 関数 図形 確率・統計

昭和44年中学校学習指導要領第2章各教科第3節数学

学年\領域 A B C D E
第1学年 数・式 関数 図形 確率・統計 集合・論理
第2学年 数・式 関数 図形 確率・統計 集合・論理
第3学年 数・式 関数 図形 確率・統計 集合・論理

昭和33年中学校学習指導要領第2章各教科第3節数学

学年\領域 A B C D E
第1学年 数量関係 計量 図形
第2学年 数量関係 計量 図形
第3学年 数量関係 計量 図形

出典:学習指導要領データベース作成委員会(国立教育政策研究所内)「学習指導要領データベース」平成13年3月31日[ONLINE]https://www.nier.go.jp/guideline/(cf:2018-12-22)

このように,中学校数学科では,数学教育に対する時代の要請等を直接受け止めた領域構成となっています。小学校算数科に比べて,領域の名称や数が学習指導要領の改定の度に見直され,変化しています。
このような数学科の領域構成の変化の中にあっても小学校算数科の領域構成が基本的に変化しなかった中で,今回の改訂で算数科の領域構成が見直されたことは,算数教育の中で重要な変化といえます。

3 平成29年改訂の領域構成の意図

(1)算数科の5領域構成の意図

平成29年改訂小学校学習指導要領における算数科の5領域(数と計算,図形,測定,変化と関係,データの活用)は,次により構成されました。
・ 算数科で育成する「知識及び技能」,「思考力,判断力,表現力等」をより明確にし,それらを育成する学習過程を計画できるようにする
・ 内容の系統性や発展性の全体を,中学校数学科との接続を視野に入れ,整理する
今回の改訂では,主として数・量・図形に関する内容とそれらを考察する方法観点から整理されてきた従来の内容領域の構成を踏襲しています。
さらに,児童の発達の段階を考慮に入れて,それぞれの内容の指導を通じて育成を目指す資質・能力を明らかにし,内容領域を設定しています。

特に,以下の事項を中心として,内容領域を再編成しています。(※詳細は資料参照
1. 「A数と計算」の充実:「式の表現や読み」のA領域への位置付け
2. 量を測定するプロセスの充実(下学年)と図形の計量的考察の充実(上学年)
3. 変化や関係を把握する力の育成の重点化と統計教育の充実:数量関係領域の充実
このことにより,児童が数学的活動を通して考察を深める内容が,それぞれの領域にまとめられることになり,教師にとって算数科の学習とその指導の趣旨が分かりやすいようにしています。

また,児童の発達の段階を踏まえ,幼小の連携の視点,算数科と数学科の接続の視点から,第1学年、第2学年と第3学年、第4学年と第5学年、第6学年の四つの段階で育成を目指す資質・能力と,働かせる数学的な見方・考え方を明らかにしています。
例えば,以下は,この考え方によるものです。
・ 従来の「量と測定」領域の内容を見直し,下学年に「測定」領域を設定
・ 従来の「数量関係」領域における関数の考えの育成について新規に「変化と関係」領域を上学年に設定

(2)中学校数学科の4領域構成の意図

平成29年改訂中学校数学科の領域構成は,従前の「資料の活用」の領域の名称を「データの活用」に改めたこと以外は,平成20年改訂中学校数学科の領域構成と同様です。なお,数学的活動は,四つの領域と並列に示し構造的に明記されています。
平成29年改訂中学校数学科の内容は,次の4領域と数学的活動で示しています。
A 数と式
B 図形
C 関数
D データの活用
数量や図形は学習対象として明確であることから,普遍的かつ基礎的な内容の領域として「A数と式」及び「B図形」を2領域があります。
「C関数」及び「Dデータの活用」は,数学を活用する力の伸長を目指す領域です。数学的な見方・考え方を十分に働かせた数学的活動を充実し,いろいろな関係や特徴を積極的に考察の対象とすることが必要です。
このように見ると,4領域の相互の関係は次のように説明できます。
考察の対象が,確定した事象の「A数と式」,「B図形」及び「C関数」,不確定な事象の「Dデータの活用」の領域に分けられます。
さらに,考察の方法が,静的な「A数と式」と「B図形」,動的な「C関数」の領域に分けられます。
「C関数」の領域の学習において働かせた数学的な見方・考え方は「A数と式」や「B図形」の領域の内容の理解を深化させてくれます。また,「C関数」の領域の内容を理解するためには「A数と式」や「B図形」の領域の内容の理解が不可欠です。
なお,今回の改訂では,従前の「資料の活用」の領域の名称を「データの活用」に改められました。これは,平成 21 年 3 月改訂の高等学校学習指導要領数学Ⅰにおいて,生活の中で活用することや統計学とのつながりを重視し,一般的に用いられる「データ」という用語を用いたことや,小・中・高等学校の学習のつながりを考慮したためです。
また,今回の改訂では,幼児期に育まれた数量・図形への関心・感覚等の基礎の 上に,小・中・高等学校教育を通じて育成を目指す資質・能力を明確化することを 意識し,引き続き小学校と中学校との関連や連携について配慮しています。

(3)算数科と数学科の接続の視点

次の表は,小学校算数科第6学年の領域と主な内容と中学校数学科の領域を並べたものです。

小学校算数科第6学年の領域と主な内容 中学校数学科の領域
A 数と計算 ・数の概念
・整数,小数,分数の計算
・□や△,a,x などを用いた式
A 数と式
B 図形 ・図形の性質
・図形の計量(面積・体積)
B 図形
C 変化と関係 ・伴って変わる数量の関係
・比例・反比例
C 関数
D データの活用 ・代表値,ドットプロット
・場合の数
D データの活用

中学校数学科の「A数と式」,「B図形」,「C関数」及び「Dデータの活用」の各領域は,小学校算数科第6学年の「A数と計算」,「B図形」,「C変化と関係」及び「Dデータの活用」の各領域と対応します。
このように,第6学年(上学年)の領域は,算数科と数学科の接続の視点から構成されています。
育成を目指す資質・能力を明らかにして内容領域を設定したことは,以下の「資料」から具体的に理解できます。

4 数学的活動と5領域の関係

小学校算数科における数学的活動は,「A数と計算」,「B図形」,「C測定」,「C変化と関係」及び「Dデータの活用」の五つの領域に並列に示しているが,五つの領域とは縦軸と横軸の関係にあり,算数科の教育課程全体に構造的に位置付けられます。
つまり, 数学的活動を五つの領域の指導内容からいったん切り離した上で,
事象を数理的に捉え,算数の問題を見いだし,問題を自立的,協働的に解決する過程を遂行する
という観点から三つもしくは四つの活動に集約して,五つの領域を包括し,算数科の内容に位置付けています。
これらの数学的活動は,五つの領域の内容やそれらを相互に関連付けた内容の学習を通して実現されるものであり,数学的活動を五つの領域の内容と別に指導することを意味するものではありません。

数学的活動一覧

数量や図形を見いだし,進んで関わる活動 日常の事象から見いだした問題を解決する活動 算数の学習場面から見いだした問題を解決する活動 数学的に表現し伝え合う活動
第1学年 身の回りの事象を観察したり,具体物を操作したりして,数量や形を見いだす活動 日常生活の問題を具体物などを用いて解決したり結果を確かめたりする活動 算数の問題を具体物など用いて解決したり結果を確かめたりする活動 問題解決の過程や結果を,具体物や図などを用いて表現する活動
第2学年 身の回りの事象を観察したり,具体物を操作したりして,数量や図形に進んで関わる活動 日常の事象から見いだした算数の問題を,具体物,図,数,式など用いて解決し,結果を確かめる活動 算数の学習場面から見いだした算数の問題を,具体物,図,数,式など用いて解決し,結果を確かめる活動 問題解決の過程や結果を,具体物,図,数,式などを用いて表現し伝え合う活動
第3学年 同上 同上 同上 同上
第4学年 該当なし 日常の事象から算数の問題を見いだして解決し,結果を確かめたり,日常生活等に生かしたりする活動 算数の学習場面から算数の問題を見いだして解決し,結果を確かめたり,発展的に考察したりする活動 問題解決の過程や結果を,図や式などを用いて数学的に表現し伝え合う活動
第5学年 該当なし 同上 同上 同上
第6学年 該当なし 日常の事象を数理的に捉え問題を見いだして解決し,解決過程を振り返り,結果や方法を改善したり,日常生活等に生かしたりする活動 算数の学習場面から算数の問題を見いだして解決し,解決過程を振り返り統合的・発展的に考察する活動 問題解決の過程や結果を,目的に応じて図や式などを用いて数学的に表現し伝え合う活動






資料

第2節 算数科の内容 1 内容構成の考え方(2) 内容領域の構成~五つの領域について~小学校学習指導要領解説 算数編 平成29年6月 文部科学省

①「A数と計算」の充実:「式の表現や読み」のA領域への位置付け

「A数と計算」領域は,整数,小数,分数などの数の概念の形成や,数の表し方や計算の習得などの内容によって構成されている。数に関わる学習では,基礎的な計算の習得を大切にしながら,数の概念とその表記に着目し,算数の学習対象や日常生活の事象を数学的に表現して,数学的な見方・考え方を働かせることが大切である。

計算する際に用いられる加法及び減法,乗法及び除法などの式は,日常生活の場面を算数の舞台に載せる役割を果たしている。文章題は式に表すことができれば,あとは計算で答えを求めることができる。計算の学習は,算数の学習として閉じるのではなく,日常場面で生きて働くことが必要である。そのためには,日常の場面を式に表したり,式を読んだりする内容が欠かせない。

そこで,従来は「数量関係」において,第1学年から第6学年まで位置付けられていた式の表現と読みに関する内容を,「数と計算」の考察に必要な式として捉え直し,「A数と計算」領域に位置付け直すことにした。これにより,事象を考察する際の式の役割が一層理解しやすくなり,日常生活の場面や算数の学習の場面で,式に表現したり読んだりして問題解決することができるようになる。このことによって数学的活動の充実が一層図られることとなる。

②量を測定するプロセスの充実(下学年)と図形の計量的考察の充実(上学年)

従来の「B量と測定」領域は,身の回りにあるいろいろな量の単位と測定などの内容によって構成されている。また,「C図形」の領域は,基本的な平面図形や立体図形の概念とその性質,図形の構成などの内容によって構成されている。
この「量と測定」領域では,
・ 第一に,直接比較から間接比較,任意単位による測定,普遍単位による測定という一連のプロセスを大切にし,そこで働かせる数学的な見方・考え方が育成される内容と,
・ 面積や体積のように,図形を構成する要素に着目し,図形の性質を基に,量を計算によって求める内容や,
・ 二つの数量の関係に着目し,数量の間の比例関係を基に,量を計算で求める単位量当たりの大きさや速さの内容
があった。
下学年において量を捉えるために単位を設定して測定すること,面積や体積を公式によって求めること,単位量当たりの大きさや速さを公式によって求めることについて,実際に児童が考察する仕方は,それぞれ異なるものである。
そこで,育成を目指す資質・能力を明確にし,児童が学習する際の考察する仕方が異なる内容をそれぞれに合う領域に移行させることで,領域ごとに指導内容の配置の趣旨がより分かりやすくなるようにした。

ア 測定のプロセスを充実する下学年「C測定(下学年)」領域と計量的考察を含む図形領域の上学年「B 図形」に再編成

まず,従前の「B量と測定」の内容を,
・ 測定のプロセスを充実する下学年での「C測定(下学年)」領域と,
・ 計量的考察を含む図形領域としての上学年の「B 図形」に
再編成した。再編成に当たっては,
第一に,
新規に「C測定(下学年)」 領域を設定することとした。
これは,ものの属性に着目し,単位を設定して量を数値化して捉える過程を重視し,それぞれの量について,そこでの測定のプロセスに焦点を当てて学ぶことにしているからである。
また,第二に,
基本的な平面図形の面積や立体図形の体積などの学習を,図形の特徴を計量的に捉えて考察するという視点から位置付け直し,上学年における「図形」領域の内容に移行した。
例えば,三角形の面積は,平行四辺形を対角線で二つに分けることで説明でき,その際に,底辺や高さを基に計算によって求めることができる。つまり,計量をする際は,図形の性質や図形を構成する要素などに着目している。
そこで,図形を構成する要素に着目して,図形の性質を考察する領域としての「図形」領域の位置付けを明確にした。新しい「図形」の領域を「図形を構成する要素に着目して,図形の性質を考察したり,それを活用したりする資質・能力を育む」領域と して,領域の趣旨を分かりやすいものとした。

イ 測定値の平均と資料の平均の違いの理解を深めるため「データの活用」領域に移動

次に,単位量当たりの大きさや速さについては,二つの数量の関係を考察することを重視する観点から,「変化と関係」領域で扱うこととした。このことによ り,育成を目指す資質・能力に対応する内容をまとめて示すことにした。
また,第5学年の「測定値の平均」は,「データの活用」領域に移動した。「データの活用」領域では,従来から第6学年で「資料の平均」を学習している。
・ 測定値の平均は,一つのものを繰り返し測定し,それらの値を平均することで真の値に近づくことが前提の平均である。この前提には,測定したデータの分布は正規分布になるということがある。
・ 一方,「資料の平均」はデータの数値を平均するのみで,前提として分布が正規分布であるかどうかを仮定せず統計的な問題解決に用いられる
これらの違いの理解を深めるために同一の領域で示すことにした。

③変化や関係を把握する力の育成の重点化と統計教育の充実:数量関係領域の充実

従前の「数量関係」は,主として,関数の考え,式の表現と読み,及び資料の整理と読みの三つの下位領域からなるものであったが,今回の改訂により,従前の「数量関係」の内容を新たに設けた「変化と関係」と「データの活用」に移行した。これにより,数量の変化や関係に着目した考察を重視するとともに統計教育の基礎を充実することにした。

ア 「変化と関係」を上学年に新設

「変化と関係」の領域の新設については,算数科で育成を目指す資質・能力の重要な事項に,事象の変化や関係を捉えて問題解決に生かそうとすることがあり,これが従前から「関数の考え」として重視されてきたことを踏まえている。今回の改訂では,事象の変化や関係を捉える力の育成を一層重視し,二つの数量の関係を考察したり,変化と対応から事象を考察したりする数学的活動を一層充実するために,従来の「数量関係」領域の考え方を生かすものとして,上学年に設けた。この領域の内容は,中学校数学の「関数」領域につながるものであり,小学校と中学校の学習の円滑な接続をも意図している。

イ 下学年は「関数の考え」の素地指導、「データの活用」新設

なお,「変化と関係」領域を上学年に位置付けたのは,従来の「数量関係」の領域における「関数の考え」が育成される内容が,伴って変わる二つの数量の関係(第4学年),簡単な比例(第5学年),比例と反比例(第6学年)など,上学年に位置付けられていたことを踏まえたものである。しかしながら,下学年においても,数や図形の等の考察において,数の関係を考察したり,変化の規則に注目したりする場面が多いことに注意が必要であり,そのような場面は「関数の考え」の素地指導をする重要な機会である。
さらに,第1章で述べた統計的な内容の充実を踏まえ,
・ 身の回りの事象をデータから捉え,問題解決に生かす力,
・ データを多面的に把握し,事象を批判的に考察する力
の育成を目指すとともに,小学校と中学校間との統計教育の円滑な接続のため,従前の「数量関係」領域の資料の整理と読みの内容を中心に,統計に関わる領域「データの活用」を新たに設けた
「データの活用」という名称を用いたことについては,平成21年の3月改訂の高等学校学習指導要領数学Ⅰにおいて,生活の中で活用することや統計学とのつながりを重視し,一般的に使われている 「データ」という用語を用いたことや,小・中・高等学校の学習のつながりを考慮したものである。
指導に当たっては,上述の各領域の特徴を踏まえ,教科内容の系統を見通した 上で,育成を目指す資質・能力の発達の系統を意識するとともに,各領域に含まれる内容相互の関連にも十分配慮して取り扱う必要がある。


※ 上記の本文は原文通りですが,小見出しや色文字,箇条書きなど加工しています。

文部科学省「小学校学習指導要領解説算数編」平成29年6月[ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2017/07/25/1387017_4_1_1.pdf(参照2018/03/28)
「文部科学省ウェブサイト利用規約」(文部科学省) (http://www.mext.go.jp/b_menu/1351168.htm)(2018年3月28日に利用)に基づいて,小学校学習指導要領解説算数編を加工・作成しています。