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学習指導要領の「見方・考え方を働かせる」とは,どういうことなのでしょうか。
例えば,小学校「社会的な見方・考え方」の視点では,以下の3視点があります。

  • 位置や空間的な広がり
  • 時期や時間の経過
  • 事象や人々の相互関係

社会科での思考力判断力を発揮する姿は,社会的事象を,その3視点に着目して捉え,比較・分類したり総合したり,地域の人々や国民の生活と関連付けたりするところにあらわれます。

「見方・考え方」は,深い学びの中核です。審議会資料*1等は目標の具体化の手順の参考です。

指導内容を確かにつかむためには,教科間,校種間のつながりや広がりを見渡すことが大切です。

それにより,当該教科等の「見方・考え方」の特質が鮮明になります。







1 「見方・考え方」を働かせたイメージづくり

新しい学習指導要領では,各教科等の役割が鮮明になりました。

その理由の一つが,深い学びの鍵と呼ばれる「見方・考え方」が,各教科等の特質に応じた物事を捉える視点や考え方として明示されたからです。

新学習指導要領において深い学びの鍵と呼ばれる「見方・考え方」は,これまでの学習指導要領でも用いられてきました。しかし,それは一部の教科等であったり,用いられたとしても,その意味を明確に示す教科等は多くありませんでした。

学習指導要領が再構成された今回の改訂では,各教科等の目標や内容を資質・能力の三つの柱に基づいて再整理したり,「見方・考え方」を改めて明示したりなど,資質・能力が一貫してとらえやすくなりました。そのことにより,各教科等の役割が鮮明になりました。

「深い学び」の中核が見方・考え方です。

「見方・考え方」を働かせた学びを実現する授業が実践できれば,おのずと主体的・対話的で深い学びになります。

ところで,プロ野球チームの監督や音楽家などの専門家は,野球選手を見たり音楽を聴いたりする視点をもって考えています。

深い思考のためには見方が必要であり,見方は考え方を働かせることで初めて意味あるものとなります。

新学習指導要領では,「見方・考え方」など授業でねらう資質・能力を明らかにした実践が求められています。

そこで,本稿では,「『見方・考え方』を働かせる」とは具体的にはどのようなイメージなのかを考えます。

2 小学校社会科の見方・考え方

「見方・考え方」は,各教科等の特質に応じた物事を捉える視点や考え方であり,教科等の特質が出るものです。

そこで,公表された教科等の資料*1の中で,具体的に述べている社会科を例に考えます。

本資料は,よくまとめられており,整理の仕方や内容が大変参考になります。

資料では,小学校,中学校,高等学校の系統を整理しています。

ここでは,小学校の例を考えます。

なお,資料では「考えられる」視点「例」とされていることから,資料は今後改善され得る試案と考えられます。しかしながら,表記の便宜上,以下では「考えられる視点例」を単に「視点」と表記します。

なお,先の資料*1を見る際の留意点として,下記の三点が示されています。

  1.  「社会的な見方・考え方」は,小・中・高等学校の各「見方・考え方」を総称する呼称である。
  2.  「社会的な見方・考え方」は,社会的事象等の意味や意義,特色や相互の関連等を考察したり,社会に見られる課題を把握してその解決に向けて構想したりする際の「視点や方法」であり,小,中,高等学校と校種が上がるにつれて視点の質やそれを生かした問いの質が高まるものである。
  3.  「社会的な見方・考え方」は便宜上「思考力,判断力」の欄に示しているが,深い学びを実現するための思考力や判断力の育成や生きて働く知識の習得に不可欠であること,主体的に学習に取り組む態度や学習を通して涵養される自覚や愛情などにも作用することなどを踏まえると,資質・能力全体の中核 であることに留意する必要がある。また,教科,科目,分野については,便宜上並列して表している。

※1出典 文部科学省中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」(第2部)(国語,社会,地理歴史,公民)P141「『社会的な見方・考え方』を働かせたイメージの例」平成28年8月26日[ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2016/09/09/1377021_1_3.pdf参照2017/05/10)

(1)小学校「社会的な見方・考え方」の視点

小学校社会科では,次の三点が視点です。

  • 位置や空間的な広がりの視点
    • 地理的位置,分布,地形,環境,気候,範囲, 地域,構成,自然条件,社会的条件,土地利用 など
  • 時期や時間の経過の視点
    • 時代,起源,由来,背景,変化,発展,継承, 維持,向上,計画,持続可能性 など
  • 事象や人々の相互関係の視点
    • 工夫,努力,願い,業績,働き,つながり, 関わり,仕組み,協力,連携,対策・事業,役割, 影響,多様性と共生(共に生きる) など

Viewpoint of social view and way of thinking

※ 審議まとめ第2部P141資料*2を基に筆者が図化

(2)見方・考え方の働かせ方の概略

これら3視点「位置や空間的な広がり」「時期や時間の経過」「事象や人々の相互関係」を働かせた概略は次のようです。

Examples of images that used social viewpoints and ideas

※ 審議まとめ第2部P141資料*2を基に筆者が図化

社会科での思考力判断力を発揮する姿は,

社会的事象を,

  • 位置や空間的な広がり
  • 時期や時間の経過
  • 事象や人々の相互関係

着目して捉え比較・分類したり総合したり,地域の人々や国民の生活と関連付けたりするところにあらわれます。

そのことを通して,考察したり,構想したりします。

  • 考察 社会的事象の特色や相互の関連,意味を多角的に考察する力
  • 構想 社会に見られる課題について,社会への関わり方を選択・判断する力

(3)視点を働かせるための問い

上記のような視点を働かせる授業とするためには,教師の手立てが必要です。

資料では,「視点を生かした,考察や構想に向かう『問い』の例」が示されています。

これは,子どもの問いですが,このような問いがもてるようにするための発問を考える示唆となります。

主体的・共同的で深い学びの実現のための鍵としたいところです。

実践する教科等や授業場面を具体的にイメージしながら,読みたいところです。

① 視点を生かした,考察や構想に向かう「問い」

1 考察 社会的事象の特色や相互の関連,意味を多角的に考察する力

位置や空間的な広がりの視点

「どのように,広がっているのだろう」
「なぜ,この場所に集まっているのだろう」
地域ごとの気候は,どのような自然条件によって異なるのだろう」

時期や時間の経過の視点

いつ,どんな理由で,始まったのだろう」
「どのように,変わってきたのだろう」
「なぜ,変わらずに続いているのだろう」

事象や人々の相互関係の視点

「どのような,工夫や努力があるのだろう」
「どのような,つながりがあるのだろう」
「なぜ,○○と○○の協力が必要なのだろう」

2 構想 社会に見られる課題について,社会への関わり方を選択・判断する力

どのように続けていくことがよいのだろう
共に生きていく上で何が大切なのだろう

このような問いをもち主体的・対話的で深く学び合うことによって,変容が期待される子ども像「考察,構想した結果,獲得する知識の例」は次のとおりです。

② 考察,構想した結果,獲得する知識の例…期待される子ども像

1 考察 社会的事象の特色や相互の関連,意味を多角的に考察する力

位置や空間的な広がりの視点

いくつかの組立工場を中心に部品工場が集まり,工業が盛んな地域を形成している
駅の周囲は交通の結節点なので人が多いため商業施設が集まっている
国土の地理的位置や地形,台風などの自然条件によって気候は異なる

時期や時間の経過の視点

祭りは地域の豊作や人々のまとまりへの願いから始まった
農作業は機械化により生産効率を向上させてきた
伝統芸能は技や道具が継承されるとともに,多くの人々に受け入れられて今に至っている

事象や人々の相互関係の視点

地域の安全は,関係機関の未然防止と緊急対処によって守られている
食料生産は私たちの食生活を支える役割を果たしている
政治には国民生活の安定と向上を図る働きがある

2 構想 社会に見られる課題について,社会への関わり方を選択・判断する力

伝統と文化は受け継ぐだけでなく時代に合わせ発展させていく必要がある
世界の人々と共に生きるには,文化や考え方の違いを認め合い,課題を解決しな がら理解し合っていくことが大切である






3 「見方・考え方を働かせる」ことの具体化

(1)目標の具体化,実践化の手順

新学習指導要領では,このような児童の意識の流れが生まれる授業を構想し実践することを求めています。

この「見方・考え方」は,主体的・対話的で深い学びを実現する中核となります。

特に,深い学びを教室の授業で実現するためには,各教科等,そして,その時間での具体的な見方・考え方を子どもの姿として明らかにして実践に臨む必要があります。

「見方・考え方」は,各教科等に特質に応じたものがあります。

全教科等で必要とする詳細な同一資料がどのように公表されるかは未知数です。

したがって,それぞれの実践者が主体的に本資料を具体的実践化の手順の参考にするなどしたいところです。

  1. 教科等,単元,本時の「見方・考え方」とは何か,
  2. その「見方・考え方」を働かせるとは,どんな授業イメージか,子どもの姿か,
  3. 結果として,獲得する知識・技能は何か,
  4. 深い思考を生む学習過程は,学習活動は,どう構成すればよいか,
  5. 子どもが,見方・考え方の視点から問いがもてるようにする手立ては何か,など

新学習指導要領「見方・考え方」を働かせ「主体的・対話的で深い学び」を実現する授業,

具体的実践への具体化の流れを,ぜひ先の資料*1から参考にしたいところです。

(2)領域や校種間(縦横)の関係についての教材分析

理科の資料では,「表2 理科の各領域における特徴的な見方の整理例*3を示しています。

「見方」の学校段階の違い,内容の階層性の広がりを具体的に表にまとめています。

理科の「見方」として,

  • エネルギーは,「量的・関係的」な視点で,
  • 粒子は,「質的・実体的」な視点で,
  • 生命は,「多様性と共通性」の視点で,
  • 地球は,「時間的・空間的」な視点で

捉えることを示しています。

これらについて,学校段階で,例えばエネルギーでは

  1. 小学校は 「見える(可視)レベル」,
  2. 中学校 は「見える(可視)~見えない(不可視)レベル」,
  3. 高等学校は 「見える(可視)~見えない(不可視)レベル」などと,

階層性の広がりを,各領域ごとに説明しています。

社会科と理科の見方を比較すると,

  • 社会科では,
    • 「位置や空間的な広がり」「時期や時間の経過」「事象や人々の相互関係」の3視点
  • 理科では,
    • エネルギー:「量的・関係的」,粒子:「質的・実体的」,生命:「多様性と共通性」,地球:「時間的・空間的」な視点

このように,各教科の特質に応じた「見方」があります。

他教科等との比較から,

例えば,全領域に共通する視点は何か,

特定の領域の内容に依存する視点は何かなど,

当該教科等の「見方・考え方」の視点を再吟味することが大切です。

「表2 理科の各領域における特徴的な見方の整理例」の表は,領域や校種間の横や縦のつながりを見渡すことができ,「見方」のまとめ方の参考にできます。また,「社会科,地理歴史科,公民科における「社会的な見方・考え方」のイメージ(中教審答申別添3-4)」*4の図は,「見方・考え方」のまとめ方の参考にできます。

指導内容の確かにつかむためには,実践者自身が,単元の系統はもちろんですが,領域間,教科間,校種間のつながりや広がりを見渡すことが大切です。

新学習指導要領は,「学びの地図」となるよう枠組みが大きく見直されました

資質・能力や内容などの全体像を分かりやすく見渡せるようにするためです。

それにより,教科等や学校段階を越えて教育関係者間が共有できるようにすることが改定の目的の一つです。

実践者は,この趣旨を踏まえ,「見渡す」教材研究をより一層大切にする必要があります。

*1 文部科学省中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」平成28年8月26日[ONLINE]http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/gaiyou/1377051.htm(参照2017/05/10)

*2 文部科学省中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」(第2部)(国語,社会,地理歴史,公民)P141「『社会的な見方・考え方』を働かせたイメージの例」平成28年8月26日[ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2016/09/09/1377021_1_3.pdf参照2017/05/10)

*3 文部科学省中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」(第2部)(算数,数学,理科,高等学校の数学・理科にわたる探究科目,生活,音楽,芸術(音楽))P175「表2 理科の各領域における特徴的な見方の整理例」平成28年8月26日[ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2016/09/09/1377021_1_4.pdf参照2017/05/10)

*4 文部科学省中央教育審議会「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)別添資料3-4」「社会科,地理歴史科,公民科における「社会的な見方・考え方」のイメージ」平成28年12月21日[ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2016/12/27/1380902_2.pdf(参照2018/04/03)

学習指導要領は構造化され「見方・考え方」が改めて明示されました。

小学校「社会的な見方・考え方」の視点例として,3視点「位置や空間的な広がり」「時期や時間の経過」「事象や人々の相互関係」があります。

社会科での思考力判断力を発揮する姿は,社会的事象を,3視点に着目して捉え,比較・分類したり総合したり,地域の人々や国民の生活と関連付けたりするところにあらわれます。

「見方・考え方」は,主体的・対話的で深い学びを実現する中核となります。

資料*1~*3等を参考に,「見方・考え方」の領域や教科間,校種間等の横や縦のつながりを見渡し比較することが大切です。

例えば,全領域に共通する視点や特定領域の内容に依存する視点は何かなど,当該教科等の「見方・考え方」の視点を再吟味する観点が得られることがあります。