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平成29年告示小学校学習指導要領の算数科「学年の目標」は,現行学習指導要領と比較して,どのように整理されたのでしょうか。
平成20年告示の現行学習指導要領では,四領域に対応した四つの学年目標を示しています。
平成29年告示の新学習指導要領では,育成を目指す資質・能力の三つの柱に沿って三つの学年目標を示しています。

中央教育審議会は,「生きる力」をより具体化するため,育成を目指す資質・能力を三つの柱に整理し,各教科等の目標や内容についてもこの三つの柱に基づいて再整理するよう提言しました。
これを受け,新学習指導要領では,資質・能力の三つの柱「知識及び技能」「思考力,判断力,表現力等」「学びに向かう力,人間性等」に基づいて教科等の目標や学年の目標等が再整理されました。

1 資質・能力の三つの柱に沿って示す学年目標

本稿では,改訂された平成29年告示小学校学習指導要領(以下,新指導要領)の算数科「学年の目標」について,平成20年告示小学校学習指導要領(以下,現行指導要領)と比較して,その改訂の具体を述べます。

(1)学年目標の示し方の具体例

例えば,現行指導要領では,第4学年の学年目標は次の通りです。

(1) 除法についての理解を深め,適切に用いることができるようにする。また,小数及び分数の意味や表し方についての理解を深め,小数及び分数についての加法及び減法の意味を理解し,それらの計算の仕方を考え,用いることができるようにする。さらに,概数について理解し,目的に応じて用いることができるようにする。

「A数と計算」

(2) 面積の単位と測定について理解し,図形の面積を求めることができるようにするとともに,角の大きさの単位と測定について理解できるようにする。

「B量と測定」

(3) 図形を構成要素及びそれらの位置関係に着目して考察し,平行四辺形やひし形などの平面図形及び直方体などの立体図形について理解できるようにする。

「C図形」

(4) 数量やその関係を言葉,数,式,図,表,グラフなどに表したり調べたりすることができるようにする。

「D数量関係」

※1 小学校学習指導要領(平成20年)算数科第4学年の目標

新指導要領では,第4学年の学年目標は次の通りです。

(1) 小数及び分数の意味と表し方,四則の関係,平面図形と立体図形,面積,角の大きさ,折れ線グラフなどについて理解するとともに,
整数,小数及び分数の計算をしたり,図形を構成したり,図形の面積や角の大きさを求めたり,表やグラフに表したりすることなどについての技能を身に付けるようにする。

「知識及び技能」

(2) 数とその表現や数量の関係に着目し,目的に合った表現方法を用いて計算の仕方などを考察する力,
図形を構成する要素及びそれらの位置関係に着目し,図形の性質や図形の計量について考察する力,
伴って変わる二つの数量やそれらの関係に着目し,変化や対応の特徴を見いだして,二つの数量の関係を表や式を用いて考察する力,
目的に応じてデータを収集し,データの特徴や傾向に着目して表やグラフに的確に表現し,それらを用いて問題解決したり, 解決の過程や結果を多面的に捉え考察したりする力などを養う。

「思考力,判断力,表現力等」

(3) 数学的に表現・処理したことを振り返り,多面的に捉え検討してよりよいものを求めて粘り強く考える態度,数学のよさに気付き学習したことを生活や学習に活用しようとする態度を養う。

「学びに向かう力,人間性等」

※2 小学校学習指導要領(平成29年)算数科 学年の目標第4学年

(2)示し方の違い

現行指導要領では,

  1. 「A数と計算」
  2. 「B量と測定」
  3. 「C図形」
  4. 「D数量関係」

という内容の領域があります。
このことから,それら四つの領域に対応した四つの学年目標を示しています。

これに対し,新指導要領では,

  1. 「知識及び技能」
  2. 「思考力,判断力,表現力等」
  3. 「学びに向かう力,人間性等」

という育成を目指す資質・能力の三つの柱に沿ってそれぞれを(1),(2),(3)と示しています。
また,(1),(2)については,各学年で指導すべき主な内容に対応させています。

なお,新指導要領では,各学年で指導する内容は,

  1. 「A数と計算」,
  2. 「B図形」,
  3. 「C測定」(下学年),
  4. 「C 変化と関係」(上学年)及び
  5. 「Dデータの活用」

の五つの領域及び〔数学的活動〕 です。

2 答申を踏まえた目標の整理

(1)三つの柱に基づく再整理

平成26年11月,文部科学大臣から新しい時代にふさわしい学習指導要領等の在り方について中央教育審議会に諮問され,中央 教育審議会は,平成28年12月21日に「幼 稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び 必要な方策等について(答申)」(以下「中央教育審議会答申」という。)を示しました。

答申の中で,

「生きる力」をより具体化し,教育課程全体を通して育成を目指す資質・能力を,

  • ア「何を理解しているか,何ができるか(生きて働く「知識・技能」の習得)」,
  • イ「理解していること・できることをどう使うか(未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」の育成)」,
  • ウ「どのように社会・世界と関わり,よりよい人生を送るか(学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性等」の涵養)」

の三つの柱に整理するとともに,各教科等の目標や内容についても,この三つの柱に基づく再整理を図るよう提言しました。

以上を受けて,新指導要領では,資質・能力の三つの柱に基づいて教科等の目標や学年の目標等を再整理しました。

(2)学年の目標の設定についての考え方

算数科の目標は,極めて一般的かつ包括的であり,小学校修了時において 身に付ける資質・能力を示したものです。

数学的な見方・考え方を働かせ,数学的活動を通して,数学的に考える資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

(1) 数量や図形などについての基礎的・基本的な概念や性質などを理解するとともに,日常の事象を数理的に処理する技能を身に付けるようにする。

(2) 日常の事象を数理的に捉え見通しをもち筋道を立てて考察する力,基礎的・基本的な数量や図形の性質などを見いだし統合的・発展的に考察する力,数学的な表現を用いて事象を簡潔・明瞭・的確に表したり目的に応じて柔軟に表したりする力を養う。

(3) 数学的活動の楽しさや数学のよさに気付き,学習を振り返ってよりよく問題解決しようとする態度,算数で学んだことを生活や学習に活用しようとする態度を養う。

※ 小学校学習指導要領(平成29年)算数科の目標

この目標を実際に達成するには,さらに具体的な目標が必要です。
これを

  • 算数の内容の系統性と児童の発達の段階に応じて
  • それぞれの学年で身に付けるべき資質・能力について

学年ごとに明らかにしたものが各学年の目標です。

したがって,「『算数科の目標』を具体化したものが『学年の目標』であり,学年の目標を実現するために『内容』がある」※2といえます。

3 見方・考え方が明確にされた学年の目標

「学年の目標」で特に目立つ改訂内容の一つが,見方・考え方の明示です。

例えば,上記の第4学年「学年の目標」(2)「思考力,判断力,表現力等」の例では,

領域 数学的な見方 数学的な考え方
A
数と計算
数とその表現や数量の関係に着目し 目的に合った表現方法を用いて計算の仕方などを考察する
B
図 形
図形を構成する要素及びそれらの位置関係に着目し 図形の性質や図形の計量について考察する
C
変化と関係
伴って変わる二つの数量やそれらの関係に着目し 変化や対応の特徴を見いだして,二つの数量の関係を表や式を用いて考察する
D
データの活用
目的に応じてデータを収集し,データの特徴や傾向に着目して (表やグラフに的確に表現し,)それらを用いて問題解決したり,解決の過程や結果を多面的に捉え考察したりする

などを養うと示しています。
「見方・考え方」や「学び方」は明確に分けることができないところもありますが,「着目し」などの言葉が,読み手の意識に強く残ります。

このような「数学的な見方・考え方」は,算数の学習において,どのような視点で物事を捉え,どのような考え方で思考をしていくのかという,物事の特徴や本質を捉える視点や,思考の進め方や方向性を意味します。

「数学的な見方・考え方」が,学年の目標に具体的に明示されたことで,指導すべき資質・能力を意識した指導法の改善が望まれます。

算数の学習において,「数学的な見方・考え方」を働かせながら,知識及び技能を習得したり,習得した知識及び技能を活用して課題を探究したりすることにより,生きて働く知識の習得が図られ,技能の習熟にもつながります。
また,日常の事象の課題を解決するための思考力,判断力,表現力等が育成されます。
そして,数学的に考える資質・能力が育成されることで,「数学的な見方・考え方」も更に成長していくと考えられます。

4 小学校算数科学年の目標の一覧表※2

第1学年 第2学年 第3学年 第4学年 第5学年 第6学年
知識及び技能 (1) 数の概念とその表し方及び計算の意味を理解し,量,図形及び数量の関係についての理解の基礎となる経験を重ね,数量や図形についての感覚 を豊かにするとともに, (1) 数の概念についての理解を深め,計算の意味と性質,基本的な図形の概念,量の概念,簡単な表とグラフなどについて理解し,数量や図形についての感覚を豊かにするとともに, (1) 数の表し方,整数の計算の意味と性質,小数及び分数の意味と表し方,基本的な図形の概念,量の概念,棒グラフなどについて理解し,数量や図形についての感覚を豊かにするととも に, (1) 小数及び分数の意味と表し方,四則の関係,平面図形と立体図形,面積,角の大きさ,折れ線グラフなどについて理解するとともに, (1) 整数の性質,分数の意味,小数と分数の計算の意味,面積の公式,図形の意味と性質,図形の体積,速さ,割合,帯グラフなどについて理解するとともに, (1) 分数の計算の意味,文字を用いた式,図形の意味,図形の体積,比例,度数分布を表す表などについて理解するとともに,
加法及び減法の計算をしたり,形を構成したり,身の回りにある量の大きさを比べたり,簡単な絵や図などに表したりすることなどについての技能を身に付けるようにする。  加法,減法及び乗法の計算をしたり,図形を構成したり,長さやかさなどを測定したり,表やグラフに表したりすることなどについての技能を身に付けるようにする。  整数などの計算をしたり,図形を構成したり,長さや重さなどを測定したり,表やグラフに表したりすることなどについての技能を身に付けるようにする。  整数,小数及び分数の計算をしたり,図形を構成したり,図形の面積や角の大きさを求めたり,表やグラフに表したりすることなどについての技能を身に付けるようにする。  小数や分数の計算をしたり,図形の性質を調べたり,図形の面積や体積を求めたり,表やグラフに表したりすることなどについての技能を身に付けるようにする。 分数の計算をしたり,図形を構成したり,図形の面積や体積を求めたり,表やグラフに表したりすることなどについての技能を身に付けるようにする。
思考力,判断力,表現力等 (2) ものの数に着目し,具体物や図などを用いて数の数え方や計算の仕方を考える力, (2) 数とその表現や数量の関係に着目し,必要に応じて具体物や図などを用いて数の表し方や計算の仕方などを考察する力, (2) 数とその表現や数量の関係に着目し,必要に応じて具体物や図などを用いて数の表し方や計算の仕方などを考察する力, (2) 数とその表現や数量の関係に着目し,目的に合った表現方法を用いて計算の仕方などを考察する力,

 

 

(2) 数とその表現や計算の意味に着目し,目的に合った表現方法を用いて数の性質や計算の仕方などを考察する力,

 

 

(2) 数とその表現や計算の意味に着目し,発展的に考察して問題を見いだすとともに,目的に応じて多様な表現方法を用いながら数の表し方や計算の仕方などを考察する力,

 

 

ものの形に着目して特徴を捉えたり,具体的な操作を通して形の構成について考えたりする力, 平面図形の特徴を図形を構成する要素に着目して捉えたり,身の回りの事象を図形の性質から考察したりする力, 平面図形の特徴を図形を構成する要素に着目して捉えたり,身の回りの事象を図形の性質から考察したりする力, 図形を構成する要素及びそれらの位置関係に着目し,図形の性質や図形の計量について考察する力, 図形を構成する要素や図形間の関係などに着目し,図形の性質や図形の計量について考察する力, 図形を構成する要素や図形間の関係などに着目し,図形の性質や図形の計量について考察する力,
 身の回りにあるものの特徴を量に着目して捉え,量の大きさの比べ方を考える力,  身の回りにあるものの特徴を量に着目して捉え,量の単位を用いて的確に表現する力, 身の回りにあるものの特徴を量に着目して捉え,量の単位を用いて的確に表現する力, 伴って変わる二つの数量やそれらの関係に着目し,変化や対応の特徴を見いだして,二つの数量の関係を表や式を用いて考察する力, 伴って変わる二つの数量やそれらの関係に着目し,変化や対応の特徴を見いだして,二つの数量の関係を表や式を用いて考察する力, 伴って変わる二つの数量やそれらの関係に着目し,変化や対応の特徴を見いだして,二つの数量の関係を表や式,グラフを用いて考察する力,
データの個数に着目して身の回りの事象の特徴を捉える力などを養う。  身の回りの事象をデータの特徴に着目して捉え,簡潔に表現したり考察したりする力などを養う。 身の回りの事象をデータの特徴に着目して捉え,簡潔に表現したり適切に判断したりする力などを養う。  目的に応じてデータを収集し,データの特徴や傾向に着目して表やグラフに的確に表現し,それらを用いて問題解決したり,解決の過程や結果を多面的に捉え考察したりする力などを養う。  目的に応じてデータを収集し,データの特徴や傾向に着目して表やグラフに的確に表現し,それらを用いて問題解決したり,解決の過程や結果を多面的に捉え考察したりする力などを養う。 身の回りの事象から設定した問題について,目的に応じてデータを収集し,データの特徴や傾向に着目して適切な手法を選択して分析を行い,それらを用いて問題解決したり,解決の過程や結果を批判的に考察したりする力などを養う。
学びに向かう力,人間性等 (3) 数量や図形に親しみ,算数で学んだことのよさや楽しさを感じながら学ぶ態度を養う。 (3) 数量や図形に進んで関わり,数学的に表現・処理したことを振り返り,数理的な処理のよさに気付き生活や学習に活用しようとする態度を養う。 (3) 数量や図形に進んで関わり,数学的に表現・処理したことを振り返り,数理的な処理のよさに気付き生活や学習に活用しようとする態度を養う。 (3) 数学的に表現・処理したことを振り返り,多面的に捉え検討してよりよいものを求めて粘り強く考える態度,数学のよさに気付き学習したことを生活や学習に活用しようとする態度を養う。 (3) 数学的に表現・処理したことを振り返り,多面的に捉え検討してよりよいものを求めて粘り強く考える態度,数学のよさに気付き学習したことを生活や学習に活用しようとする態度を養う。 (3) 数学的に表現・処理したことを振り返り,多面的に捉え検討してよりよいものを求めて粘り強く考える態度,数学のよさに気付き学習したことを生活や学習に活用しようとする態度を養う。

  • 小学校学習指導要領(H29)の算数科「学年の目標」は,再整理されました。
    現行学習指導要領では,四領域に対応した四つの学年目標を示していましたが,新学習指導要領では,育成を目指す資質・能力の三つの柱に沿って三つの学年目標を示しています。
  • 改訂の背景は,中央教育審議会が,「生きる力」をより具体化するため,育成を目指す資質・能力を三つの柱に整理し,各教科等の目標や内容についてもこの三つの柱に基づいて再整理するよう提言したことです。
    これを受け,学習指導要領では,資質・能力の三つの柱「知識及び技能」「思考力,判断力,表現力等」「学びに向かう力,人間性等」に基づいて教科等の目標や学年の目標等が再整理されました。
  • 「学年の目標」で特に目立つ改訂内容の一つが,見方・考え方の明示です。
    「数学的な見方・考え方」を働かせながら,知識及び技能を習得したり,習得した知識及び技能を活用して課題を探究したりする学習が求められます。


※1 文部科学省「小学校学習指導要領解説算数編」平成20年6月[ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2009/06/16/1234931_004_1.pdf(参照2018/03/22)

※2 文部科学省「小学校学習指導要領解説算数編」平成29年6月[ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2017/07/25/1387017_4_1_1.pdf(参照2018/03/22)

「文部科学省ウェブサイト利用規約」(文部科学省) (http://www.mext.go.jp/b_menu/1351168.htm)(2018年3月22日に利用)に基づいて,小学校学習指導要領解説を加工・作成しています。