sankaku-naikaku
小学校算数科で育成する数学的な考え方の「類推的な考え方」とは、どのような考え方なのでしょうか。
既習の内容との類似性に着目して新しい事柄を見いだす考え方です。

ある事柄Aについて、その性質、法則または解決の方法を知りたい。しかし、それがわからないというとき、Aと似よりの既知の事柄A’を思い出し、(A’については性質や法則、解決の方法などP’が分かっているとする)、AについてもA’のP’と同様なことが言えるのでないかというように思考を進めていこうと努めるものである

類推的な考え方は、見通しをもったり、根拠を説明したりするときに用いられます。

特に、解決の方法と結果の見通しをもつときに、しばしば活用されます。

1 はじめに

小学校算数科で学ぶ数学的な考え方として、重要でしばしば用いられる考え方が類推的な考え方です。

類推的な考え方(簡易な説明)
既習の内容との類似性に着目して新しい事柄を見いだす」考え方

問題を解決するため、新しい方法をつくり結果を得ようとするとき、見通しをもち筋道を立てて考えることが必要になります。

見通しをもつには、帰納的な考え方や類推的な考え方を用いることがあります。

  • 見通し:「解決のための方法」についての見通しと「結果」についての見通し
  • 帰納的な考え:いくつかの具体例を調べて共通性を見付ける考え方
  • 類推的な考え:既習の内容との類似性に着目して新しい事柄を見いだす考え方

見通しをもつことは、問題の解決を適切にまた合理的に進めていく上で重要です。

問題解決の方法や結果が正しいことをきちんと示すためには、筋道を立てて考えることが求められます。

  • 筋道を立てて考える:根拠を明らかにしながら、一歩ずつ進めて考えていくこと
  • 演繹的な考え方:ある前提を基にして説明していく考え方。「筋道を立てて考える」代表的な考え方
  • 帰納的・類推的な考え方:根拠となる事柄を示すという点で、筋道を立てた考えの一つ

類推的な考え方は、問題解決の見通しをもつ場面や根拠となる事柄を示す場面で用いることが多い考え方です。

なお、学習指導要領解説*2では「類推的な考え」と表記されていますが、筆者は「類推的な考え方」と表記しています。

「考え」 は考えた内容や結論をいい、「考え方」 は考える方法や思考の順序をいいます。したがって、類推的な考え方は、考える方法であることから、「考え方」と表記します。

数学的な考え方の数学的な意味は、片桐重男著「数学的考え方の具体化と指導」*1によります。

簡便な説明では、「文部科学省小学校学習指導要領解説 算数編」*2で解説されている表記によります。

※1988年出版の前著「数学的考え方の具体化」片桐重男著は、理論的な解説が充実し、筆者が信頼を寄せる名著です。絶版だったのですが、読みやすく編集され、新版が出版されました。専門的に学びたい方には座右の書にしたい著書の一つです。

「類推的な考え方」の意味については、新版では類推の対象を「性質、法則または解決の方法」とし「解決の方法」が挿入されています。見通しをもつことに対応した挿入であり、見通しに正対した類推的な考え方の意味が明確になりました。

2 「類推的な考え方」の意味

「類推的な考え方」
ある事柄Aについて、その性質または法則を知りたい、しかしそれがわからないというとき、Aと似よりの既知の事柄A’を思い出し(A’については性質または法則P’が成り立っているとする)、そこでAについてもP’と同様な性質またはルールPが成り立つのではないか、というように思考を進めていこうとするものである

3 類推的な考え方の例

(1)四角形の内角の和を考える「方法」を類推する

三角形の3つの角の大きさの和を求める問題の解決に使った方法を思い出して,同じ方法が使えないかと考ええるのは類推的な考え方です。

まず、四角形の四つの角の大きさの和を考えるときに,類似した既習の問題の解決方法を思い起こします。

類似の解決した問題として、問題の構造が類似した「三角形の3つの角の大きさの和を求める」問題を振り返ります。

【方法の見通しをもつ:解決の方法を類推する】

【問題】「四角形の4つの角の大きさの和について調べましょう。」

類似した既習の問題を思い出す

【問題】「三角形の3つの角の大きさの和について調べましょう。」

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三角形の3つの角の大きさの和を求めるときには、合同な図形を並べる(敷き詰める)、分度器で測る、角を切り取り集めて並べる(寄せ集める)方法で調べ、360°であることを確かめています。

四角形の4つの角の大きさを調べる問題に、三角形の調べ方を当てはめて解決方法を考えると次のようになります。

  1. 合同な四角形を(横に並べて)敷き詰めてできる形の様子を調べる。
  2. 分度器で4つの角の大きさを測ってそれらの和を求める。
  3. 四角形の4つの角を切り取りって寄せ集める。

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(2)四角形の内角の和の「結果(360°)」を類推する

長方形や正方形の四つの角の大きさの和が360°であるから一般の四角形も360°であろうと考えるのは類推的な考え方です。

【結果の見通しをもつ:結果を類推する】

【問題】「四角形の4つの角の大きさの和について調べましょう。」

類似した既習の図形を思い出す

「四角形の仲間の長方形と正方形の4つの角の大きさの和について調べましょう。」

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(3)3のだんの九九から類推して、4のだんの九九を構成する

帰納的な考え方で、3のだんの九九を構成した後、続いて4のだんを構成します。
3のだんを構成するときに見出した「3のだんの九九のきまり:かける数が1ふえると答えは3ずつふえる」を基にして、4のだんの九九の構成の方法と結果を考えます。これは、類推的な考え方です。

【問題】3のだんの九九をつくる

共通するきまりや性質を見つける

3×1=3
3×=(3)+3=6

「かける数が1ふえると答えは3ずつふえること」が、3×5、3×6などでも成り立つだろう

きまりを使って答えを求める

3×5=12+3=15、3×5=3+3+3+3+3=15 となり正しい。
3×6=15+3=18、3×6=3+3+3+3+3+3=18 となり正しい。

3のだんは、「かける数が1ふえる答えは3ずつふえる」ことが分かった。


4のだんも、似た決まりがあるのではないか。

4のだんは、「かける数が1ふえる答えは4ずつふえる」のではないか。

類似した3のだんの九九の構成の方法を基にして4のだんの九九を考える。

【問題】「4のだんの九九をつくりましょう」

3のだんと同じように、共通するきまりや性質を見つけます

4×1=3
4×=(4)+4=8      かける数が1ふえて2になると、答えは4ふえて 8になる
4×=(4+4)+4=12   かける数が1ふえて3になると、答えは4ふえて12になる

きまりは「かける数が1ふえる答えは4ずつふえること」になりそう。3のだんと似ている

もう一つ調べよう。

4×=(4+4+4)+4=16 かける数が1ふえて4になると、答えは4ふえて16になる
3のだんと同じ方法でできそうだ。

 

小学校算数科で育成する数学的な考え方の「類推的な考え方」は、既習の内容との類似性に着目して新しい事柄を見いだす考え方です。

ある事柄Aについて、その性質、法則または解決の方法を知りたい。しかし、それがわからないというとき、Aと似よりの既知の事柄A’を思い出し、(A’については性質や法則、解決の方法などP’が分かっているとする)、AについてもA’のP’と同様なことが言えるのでないかというように思考を進めていこうと努めるものです。

類推的な考え方は、見通しをもったり、根拠を説明したりするときに用いられます。

特に、解決の方法と結果の見通しをもつときに、しばしば活用されます。



*1 引用文献 片桐重男 数学的な考え方とその指導第1巻「数学的な考え方の具現化と指導」明治図書2004年

*2 参考文献
文部科学省小学校学習指導要領解説算数(1)第1章~第2章(平成20年6月)[ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2009/06/16/1234931_004_1.pdf(参照2017/05/16)
文部科学省小学校学習指導要領解説算数(2)第3章~第4章(平成20年6月)[ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2009/06/16/1234931_004_2.pdf(参照2017/05/16)
*3 啓林館 わくわく算数2下平成27年度版
*4 参考文献 片桐重男 数学的な考え方・態度とその指導1「数学的な考え方の具現化」明治図書1988年