小学校算数科で育成する数学的な考え方の「帰納的な考え方」とは、どのような考え方なのでしょうか。
いくつかの具体的な例に共通する一般的な事柄を見いだす考え方です。

  1. いくつかのデータを集めようと努める。
  2. それらのデータの間に共通にみられるルールや性質を見出そうと努める。
  3. 見いだしたルールや性質が、そのデータを含む集合(変数の変域全体)で成り立つであろうと推測する。
  4. この推測した一般性が真であることをより確かにするために、新しいデータで確かめてみる。

ルールや性質の推測は、推測を調べたり、推測しながら調べたりするなど、順がかわることもあります。

1 はじめに

小学校算数科で学ぶ数学的な考え方として重要なものの一つが帰納的な考え方です。

帰納的な考え方(簡易な説明)
いくつかの具体的な例に共通する一般的な事柄を見いだす」考え方

帰納的な考え方は、問題解決の見通しをもつ場面や根拠となる事柄を示す場面で用いることが多い考え方です。

なお、学習指導要領解説*2では「帰納的な考え」ですが、筆者は「帰納的な考え方」としています。

「考え」 は考えた内容や結論をいい、「考え方」 は考える方法や思考の順序をいいます。したがって、帰納的な考え方は、考える方法であることから、「考え方」と表記します。

数学的な考え方の数学的な意味は、片桐重男著「数学的考え方の具体化と指導」*1によります。

簡便な説明では、「文部科学省小学校学習指導要領解説 算数編」*2で解説のある場合はその表記によります。

※1988年出版の前著「数学的考え方の具体化」片桐重男著は、理論的な解説が充実し、筆者が信頼を寄せる名著です。絶版だったのですが、読みやすく編集され、新版が出版されました。専門的に学びたい方には座右の書にしたい著書の一つです。「帰納的な考え方」の意味については、新版では「努める」が挿入されています。「考え『方』」の意味合いが明確にされ、筆者は大いに賛同します。

2 「帰納的な考え方」の意味

  1. いくつかのデータを集めようと努める。
  2. それらのデータの間に共通にみられるルールや性質を見出そうと努める。
  3. 見いだしたルールや性質が、そのデータを含む集合(変数の変域全体)で成り立つであろうと推測する。
  4. この推測した一般性が真であることをより確かにするために、新しいデータで確かめてみる。

3 帰納的な考え方の例

(1)3の段の乗法九九を構成する場面

  1. 【集める】いくつかの例を集めます

    3×1=3
    3×2=3+3=6
    3×3=3+3+3=9
    3×4=3+3+3+3=12

  2. 【見つける】それらの例の間に共通にみられるきまりや性質を見つけます

    3×1=3
    3×=(3)+3=6      かける数が1ふえて2になると、答えは3ふえて 6になる
    3×=(3+3)+3=9    かける数が1ふえて3になると、答えは3ふえて 9になる
    3×=(3+3+3)+3=12 かける数が1ふえて4になると、答えは3ふえて12になる
    かける数が1ふえる答えは3ずつふえること」を見つける

  3. 【推測する】そのきまりや性質が、その例を含む集まり全体で成り立つだろうと推測します

    かける数が1ふえる答えは3ずつふえること」が、3×5、3×6などでも成り立つだろう

  4. 【確かめる】いつでも成り立つと推測したことを、より確かにするために、新しい例で確かめます

    「かける数が1ふえると答えは3ずつふえること」を使って答えを求める

    3×5=12+3=15、3×5=3+3+3+3+3=15 となり正しい。
    3×6=15+3=18、3×6=3+3+3+3+3+3=18 となり正しい。
    3×7=18+3=21、3×7=3+3+3+3+3+3+3=21 となり正しい。
    3×8=21+3=24、3×8=3+3+3+3+3+3+3+3=24 となり正しい。
    3×9=24+3=27、3×9=3+3+3+3+3+3+3+3+3=27 となり正しい。
    決まりを使って求めた答えは、正しいことが確かめられました。

    これで3のだんの九九が完成しました。

◯ 続くかける数にも決まりが使えないか考える(類推的な考え方)

この子どもの気付きを、「九九を広げる」学習に生かすようにします。

3×10
3×11
3×12 も同じようにできるのでは。

◯ 他のだんにも決まりが使えないか考える(類推的な考え方)

この子どもの気付きを、既習の九九の構成の仕方を統合的にとらえられるようにしたり、続く九九の構成に生かすことができるようにしたりします。

2のだんは、「かける数が1ふえる答えは2ずつふえる」のでは(ふえた(既習))
4のだんは、「かける数が1ふえる答えは4ずつふえる」のでは

(2)乗法九九の表を調べる場面

【問題】「九九の答えがどのように並んでいるか、調べましょう」
【集める・見つける】

3nodankuku

C:「3のだんでは、かける数が1ふえる答えはだけふえます。
C:「4のだんでは、かける数が1ふえると、答えは4ふえると思います。」

T:「ほかのだんも調べてみましょう。」
【集める・見つける】

C:「3のだんでは、かける数が1ふえる答えはだけふえていました。

kuku4

C:「調べると、4のだんでは、かける数が1ふえる答えはだけふえます。

【推測する】

C:「かけ算では、かける数が1ふえる答えはかけられる数だけふえるのではないかな。」
C:「7のだんなら、7だけふえるはずです。」
【確かめる】
C:「7のだんでも、かける数が1ふえると答えは7だけふえるか確かめてみよう。」

kuku7

C:「7のだんでも、かける数が1ふえる答えはだけふえます。

【まとめ】「かけ算では、かける数が1ふえる答えはかけられる数だけふえる

(3)四角形の内角の和を求める場面

【問題】「四角形の4つの角の大きさの和について調べましょう。」

【集める】いくつかの例「四角形の4つの角の和」を集めます

sikakukei1

(ア)133°+65°+68°+94°=360°
(イ)93°+83°+82°+102°=360°

【見つける】それらの例の間に共通にみられるきまりや性質を見つけます

(ア)133°+65°+68°+94°=360°
(イ)93°+83°+82°+102°=360°
アとイの四角形の4つの角の大きさの和は、どちらも360°になっています。

【推測する】そのきまりや性質が、その例を含む集まり全体で成り立つだろうと推測します

「四角形の4つの角の大きさの和はどちらも360°になっているのではないか。」

◯ ウとエも360°ではないか。

◯ 360°なら、四角形の4つの角を切り取って1つの点に集めたら、一周の360°になるのではないか。

【確かめる】いつでも成り立つと推測したことを、より確かにするために、新しい例で確かめます

sikakukei2

(ウ)93°+83°+82°+102°=360°
(エ)93°+83°+82°+102°=360°
四角形(オ)の4つの角を切り取って1つの点に集めたら、敷き詰められて一周の360°になりました。

【注意】「四角形の4つの角の大きさの和は360°」であることをはっきりと説明するためには、四角形を三角形に分け三角形の内角の和が180°であることを根拠とし説明するなど、演繹的に説明する必要があります。
小学校算数科で育成する数学的な考え方の「帰納的な考え方」は、いくつかの具体的な例に共通する一般的な事柄を見いだす考え方です。詳しくは、次のような思考の流れをする考え方です。

  1. いくつかのデータを集めようと努める。
  2. それらのデータの間に共通にみられるルールや性質を見出そうと努める。
  3. 見いだしたルールや性質が、そのデータを含む集合(変数の変域全体)で成り立つであろうと推測する。
  4. この推測した一般性が真であることをより確かにするために、新しいデータで確かめてみる。

ルールや性質の推測は、推測を調べたり、推測しながら調べたりするなど、必ずしも順序性があるわけではありません。



*1 引用文献 片桐重男 数学的な考え方とその指導第1巻「数学的な考え方の具現化と指導」明治図書2004年

*2 参考文献
文部科学省小学校学習指導要領解説算数(1)第1章~第2章(平成20年6月)[ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2009/06/16/1234931_004_1.pdf(参照2017/05/16)
文部科学省小学校学習指導要領解説算数(2)第3章~第4章(平成20年6月)[ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2009/06/16/1234931_004_2.pdf(参照2017/05/16)
*3 啓林館 わくわく算数2下平成27年度版
*4 参考文献 片桐重男 数学的な考え方・態度とその指導1「数学的な考え方の具現化」明治図書1988年