プログラミング教育の目的は,何でしょうか。
それは,多様な場面で生きて働く「プログラミング的思考」などを育むことです。

プログラムが,作れるようになることが目的ではありません。

平成32年度(2020年度)から,「プログラミング教育」が学校教育に導入されます。


本稿では,プログラミング教育の目的と生まれる社会的背景を考えます。






1 プログラミング教育の目的

プログラミング教育とは

子供たちに,コンピュータに意図した処理を行うよう指示することができるということを体験させながら,将来どのような職業に就くとしても,時代を超えて普遍的に求められる力としての「プログラミング的思考」などを育成するもの

プログラミング的思考とは

自分が意図する一連の活動を実現するために,どのような動きの組合せが必要であり,一つ一つの動きに対応した記号を,どのように組み合わせたらいいのか,記号の組合せをどのように改善していけば,より意図した活動に近づくのか,といったことを論理的に考えていく力

小学校段階における論理的思考力や創造性,問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)」平成28年6月16日, [online]http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/122/attach/1372525.htm(参照2017-3-1)

2 次期学習指導要領最終案の告示

平成29年3月,次期学習指導要領パブリック・コメントの結果が公表されました。

「聖徳太子(厩戸王うまやどのおう)」が「 聖徳太子」に統一されたことが話題となるなど,次期学習指導要領の具体が固まってきました。

今後,学校では,2020年4月からスタートする次期学習指導要領の準備が本番となる時期に入ります。

すでに学校では研修が進められ,先行実施の内容にも取り組まれています。

全面実施に向けて,その趣旨や内容・指導方法等の理解など準備は着々と進んでいます。

さて,新しく求められる教育内容の一つとして,「プログラミング教育」があります。

平成32年度(2020年度)から,プログラミング教育が小学校教育に導入されることとなります。

プログラミング教育というネーミングから中身を想像すると,「小学校でコンピュータのプログラムを作る」「プログラムを作れるようにする」と見えそうです。

しかし,プログラミング教育の趣旨やねらいは,子どもの資質・能力や態度など,本質的な資質・能力の育成にあります。

どんな子どもの育成を目指しているのでしょうか。

3 目的は「プログラミング的思考」などを育むこと

(1)プログラミング教育の目的と危惧

平成28年6月16日に公表された,「小学校段階における論理的思考力や創造性,問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議」による「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)」では,プログラミング教育についての考え方を,次のように述べています。

プログラミング教育とは,子供たちに,コンピュータに意図した処理を行うよう指示することができるということを体験させながら,将来どのような職業に就くとしても,時代を超えて普遍的に求められる力としての「プログラミング的思考」などを育成するものです。

プログラミング教育は,コーディングを覚えることが目的ではありません。

しかしながら,小学校段階でのプログラミング教育に対して,誤解が広がりつつあると指摘しています。

コーディングを覚えることが,プログラミング教育の目的であるとの誤解です。

コーディングとは,プログラミング言語を用いた記述方法のことです。

  • 「小さいうちにコーディングを覚えさせないと子供が将来苦労するのではないか」といった保護者の心理からの過熱ぶり
  • 「コーディングは時代によって変わるから,プログラミング教育に時間をかけることは全くの無駄ではないか」といった反応

これらは,コーディングを覚えることがプログラミング教育の目的との誤解に基づくものと考えられます。

コーディングを覚えるのがねらいなら,先の二点の主張は理解できますが,本来の目的はそうではありません。

プログラミング教育の目的は,「プログラミング的思考」の考え方や態度などを育むことにあります。

それでは,なぜプログラミング教育が必要となったのか,その背景の具体例を考えます。

(2)社会の基盤のコンピューターや情報を活用する力の必要性

コンピュータは,社会の基盤です。テレビ,洗濯機,冷蔵庫等の生活家電にはコンピュータが内蔵されています。

炊飯器でおいしいご飯が炊けたり,洗濯機で洗濯物がきれいに洗えたりするのは,コンピュータが適切な制御をしているからです。

デジタルデバイドと言う言葉もあります。インターネットを活用できるなど情報活用能力の有無が経済的な格差を生んでいます。

一方で,人工知能の研究が盛んに進められています。

自動車ばかりでなく,身近なコンビニのレジにも組み込まれています。

レジのデータから,「パンを買う人は,牛乳も買うことが多い」と情報を分析し,販売のコーナーを近接させるなど情報を活用しているそうです。

このような現代,「自分の子どもがコンピュータに疎いのはマイナスだ」「コーディングを覚えないと心配だ」と保護者が考えたくなるのも理解できます。

プログラミング・コーディングの世界は,ドッグイヤーと言われ,急速に変化しています。

学校教育に,コーディングを覚えることを目的とした学習を導入すれば,教育のエネルギーは相当に費やされるでしょう。

現在,コンピューターや情報の活用については,有意義に学校教育で進められています。

コンピューターを必要に応じて活用したり,情報を適切効果的に活用したりする力は,児童にとってこれからの社会を生きていくために必要な力なのです。

4 「プログラミング的思考」の具体をとらえる

先に述べたように,プログラミング教育の目的は,プログラミング的思考などを育むことです。

しかも,コンピュータに意図した処理を行うよう指示することができるということを体験させることを通してです。

ところで,「ITmedia ビジネスONLiNE」 が次のように伝えています。

国土交通省は4月14日,日産自動車の「プロパイロット」を使用中の車がブレーキをかけなかった結果,前の車に追突する事故が起きていたことを明らかにした。「現在実用化されている『自動運転』機能は完全な自動運転ではない」として強く注意を呼び掛け,日本自動車工業会など業界団体に対し販売時の説明を徹底するよう求めた。

ITmedia ビジネスONLiNE 「日産「プロパイロット」使用中に事故 国交省,注意呼び掛け」2017年04月14日[ONLINE]http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1704/14/news117.html(参照2017年04月14日)

原因は,現時点では不明ですが,可能性としては以下が考えられます。

  • センサーが感知しなかった
  • 感知の電気信号が遮断された
  • センサーの信号を判断するプログラムのバグ(ミス)があった
  • プログラムの指示の電気信号が遮断された
  • ブレーキが機械的に作動しなかったなど

自動ブレーキ実現のためには,素人が考えてもいくつものハードルがあります。

コンピュータは,意図した処理を行うよう指示できるが,100%確実に動くと考えるのは過信です。

例えば,このようなコンピュータの働きの陰の面にも触れるような学習などにより,コンピュータやその働きに対する態度の育成が必要です。

そこで,本サイトでは,その具体を明らかにし,学校教育のプログラミング教育の目指すところを探るとともに,家庭で取り組めることを見出していくようにしていきたいと思います。






1 平成32年度(2020年度)から,プログラミング教育が小学校教育に導入されます。

2 プログラミング教育とは,「プログラミング的思考」などを育むことが目的です。

3 コンピューターやプログラミングは社会の基盤であり,それらを活用する資質・能力の育成が必要です。

4 今後,「プログラミング的思考」の具体をとらえていく必要があります。

小学校段階における論理的思考力や創造性,問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)」平成28年6月16日, [online]http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/122/attach/1372525.htm(参照2017-3-1)