goal-es-doutoku
平成29年告示の小学校学習指導要領「特別の教科 道徳」の目標は,どのようなものでしょうか。
学校における道徳教育は,
教育基本法及び学校教育法に定められた教育の根本精神に基づき,自己の生き方を考え,主体的な判断の下に行動し,自立した人間として他者と共によりよく生きるための基盤となる道徳性を養うことを目標とします。

小学校道徳科の目標は,
よりよく生きるための基盤となる道徳性を養うため,
道徳的諸価値についての理解を基に,自己を見つめ,物事を多面的・多角的に考え,自己の生き方についての考えを深める学習を通して,
道徳的な判断力,心情,実践意欲と態度を育てることです。

学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育の中で,道徳科は,
各活動における道徳教育の要として,それらを補ったり,深めたり,相互の関連を考えて発展させたり統合させたりする役割を果たします。

道徳科の授業では,多様な価値観の,時に対立がある場合を含めて,自立した個人として,また,国家・社会の形成者としてよりよく生きるために道徳的価値に向き合いいかに生きるべきかを自ら考え続ける姿勢こそが求めるものです。

道徳性とは,人間としてよりよく生きようとする人格的特性です。道徳教育は道徳性を構成する諸様相である道徳的判断力道徳的心情道徳的実践意欲と態度を養うことを求めています。

掲載の趣旨

平成29年告示の学習指導要領では,資質・能力や内容などの全体像を分かりやすく見渡せるよう,枠組みが大きく見直され「学びの地図」として整理されました。
その趣旨に添い,本稿では,解説本文を次のように編集しています。
・ 目標解説の内容が捉えやすいように原文を装飾
・ 他教科等・他学校種の目標や解説が比較しやすように編集
具体的には,本文は原文通りで,次のように編集しています。
・ 各教科等の目標の解説を共通した章立てで構成
・ 学校種間の対応する内容についてリンクで移動 など
掲載の趣旨の詳細は,下のボタンより参照できます。

「掲載の趣旨」の詳細

なお,本稿は,「文部科学省ウェブサイト利用規約」(2018年3月1日に利用)に基づいて,原本を加工し作成しています。
小学校・中学校各教科等の目標の解説 「小・中学校「教科等の目標解説を縦横に読む」シリーズ」は,下のボタンより閲覧できます。

小・中学校各教科等の目標解説






小学校 道徳教育の目標

1 道徳教育と道徳科

「第1章 総則」の「第1 小学校教育の基本と教育課程の役割」の2の(2) 2段目
学校における道徳教育は,特別の教科である道徳(以下「道徳科」という。)を要として学校の教育活動全体を通じて行うものであり,道徳科はもとより,各教科,外国語活動,総合的な学習の時間及び特別活動のそれぞれの特質に応じて,児童の発達の段階を考慮して,適切な指導を行うこと。

(1)道徳教育の目標

学校における道徳教育は,
自己の生き方を考え,主体的な判断の下に行動し,自立した一人の人間として他者と共によりよく生きるための基盤となる道徳性を養う
ことを目標とする教育活動であり,社会の変化に対応しその形成者として生きていくことができる人間を育成する上で重要な役割をもっている。

中学校道徳「道徳教育の目標」

(2)道徳科の役割

道徳教育は,学校や児童の実態などを踏まえ設定した目標を達成するために,
道徳科はもとより,各教科,外国語活動,総合的な学習の時間及び特別活動のそれぞれの特質に応じて行うことを基本として,あらゆる教育活動を通じて,適切に行われなくてはならない

その中で,道徳科は,
各活動における道徳教育の要として,それらを補ったり,深めたり,相互の関連を考えて発展させたり統合させたりする役割を果たす。いわば,扇の要のように道徳教育の要所を押さえて中心で留めるような役割をもつと言える。
したがって,
・ 各教育活動での道徳教育がその特質に応じて意図的,計画的に推進され,相互に関連が図られるとともに,
・ 道徳科において,各教育活動における道徳教育で養われた道徳性が調和的に生かされ道徳科としての特質が押さえられた学習が計画的,発展的に行われること
によって,児童の道徳性は一層豊かに養われていく
※ 小学校で要の比喩有り。他は小学校と中学校で共通。

中学校道徳「道徳教育の役割」

(3)発達段階を踏まえた指導

また,学校における道徳教育は,児童の発達の段階を踏まえて行われなければならない

その際,多くの児童がその発達の段階に達するとされる年齢は目安として考えられるものであるが,児童一人一人は違う個性をもった個人であるため,それぞれ能力・適性,興味・関心,性格等の特性等は異なっていることにも意を用いる必要がある。

発達の段階を踏まえると,幼児期の指導から小学校,中学校へと,各学校段階における幼児,児童,生徒が見せる成長発達の様子やそれぞれの段階の実態等を考慮して指導を進めることとなる。

その際,例えば,小学校の時期においては,6学年間の発達の段階を考慮するとともに,幼児期の発達の段階を踏まえ,中学校の発達の段階への成長の見通しをもって小学校の時期にふさわしい指導の目標を明確にし,指導内容や指導方法を生かして,計画的に進めることになる。
しかし,この捉え方だけでは十分とは言えない。

道徳科においては,発達の段階を前提としつつも,指導内容や指導方法について考える上では,個々人としての特性等から捉えられる個人差に配慮することも重要となる。
児童の実態を把握し,指導内容,指導方法を決定してこそ,適切に指導を行うことが可能となる。

※ 小学校で幼・小・中,中学校で小・中・高の発達段階を踏まえる

【参考】各教科等における道徳教育(小学校学習指導要領解説総則編より抜粋)(略)内容は資料へ

中学校道徳「発達段階を踏まえた指導」

2 道徳科の目標

(1)目標

「第3章 特別の教科 道徳」の「第1 目標」

第1章総則の第1の2の(2)に示す道徳教育の目標に基づき,よりよく生きるための基盤となる道徳性を養うため,道徳的諸価値についての理解を基に,自己を見つめ,物事を多面的・多角的に考え,自己の生き方についての考えを深める学習を通して,道徳的な判断力,心情,実践意欲と態度を育てる。

※ 小学校では「物事を多面的・多角的に考え,自己の生き方についての考え」,中学校では「物事を広い視野から多面的・多角的に考え,人間としての生き方についての考え」となる
※ 平成20年小学校学習指導要領「道徳」目標
「道徳教育の目標は,第1章総則の第1の2に示すところにより,学校の教育活動全体を通じて,道徳的な心情,判断力,実践意欲と態度などの道徳性を養うこととする。
道徳の時間においては,以上の道徳教育の目標に基づき,各教科,外国語活動,総合的な学習の時間及び特別活動における道徳教育と密接な関連を図りながら,計画的,発展的な指導によってこれを補充,深化,統合し,道徳的価値の自覚及び自己の生き方についての考えを深め,道徳的実践力を育成するものとする。」
※ 平成10年小学校学習指導要領「道徳」目標
「道徳教育の目標は,第1章総則の第1の2に示すところにより,学校の教育活動全体を通じて,道徳的な心情,判断力,実践意欲と態度などの道徳性を養うこととする。
道徳の時間においては,以上の道徳教育の目標に基づき,各教科,特別活動及び総合的な学習の時間における道徳教育と密接な関連を図りながら,計画的,発展的な指導によってこれを補充,深化,統合し,道徳的価値の自覚を深め,道徳的実践力を育成するものとする。」
※ 平成元年小学校学習指導要領「道徳」目標
「道徳教育の目標は,教育基本法及び学校教育法に定められた教育の根本精神に基づき,人間尊重の精神と生命に対する畏(い)敬の念を家庭,学校,その他社会における具体的な生活の中に生かし,個性豊かな文化の創造と民主的な社会及び国家の発展に努め,進んで平和的な国際社会に貢献できる主体性のある日本人を育成するため,その基盤としての道徳性を養うこととする。
道徳の時間においては,以上の目標に基づき,各教科及び特別活動における道徳教育と密接な関連を図りながら,計画的,発展的な指導によってこれを補充,深化,統合し,児童の道徳的心情を豊かにし,道徳的判断力を高め,道徳的実践意欲と態度の向上を図ることを通して,道徳的実践力を育成するものとする。」

道徳科が目指すものは,学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育の目標と同様によりよく生きるための基盤となる道徳性を養うことである。

その中で,道徳科が学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育の要としての役割を果たすことができるよう,計画的,発展的な指導を行うことが重要である。

特に,各教科,外国語活動,総合的な学習の時間及び特別活動における道徳教育としては取り扱う機会が十分でない道徳的価値に関わる指導を補うことや,児童や学校の実態等を踏まえて指導をより一層深めること,相互の関連を捉え直したり発展させたりすることに留意して指導することが求められる。

道徳科は,このように道徳科以外における道徳教育と密接な関連を図りながら,計画的,発展的な指導によってこれを補ったり,深めたり,相互の関連を考えて発展させ,統合させたりすることで,道徳的諸価値についての理解を基に,自己を見つめ,物事を多面的・多角的に考え,自己の生き方についての考えを深める学習を通して,道徳性を養うことが目標として挙げられている。

また,各教科,外国語活動,総合的な学習の時間及び特別活動では,それぞれの目標に基づいて教育活動が行われる。
これら各教科等で行われる道徳教育は,それぞれの特質に応じた計画によってなされるものであり,道徳的諸価値の全体にわたって行われるものではない。
このことに留意し,道徳教育の要である道徳科の目標と特質を捉えることが大切である。

なお,道徳科の授業では,特定の価値観を児童に押し付けたり,主体性をもたずに言われるままに行動するよう指導したりすることは,道徳教育の目指す方向の対極にあるものと言わなければならない。
多様な価値観の,時に対立がある場合を含めて,自立した個人として,また,国家・社会の形成者としてよりよく生きるために道徳的価値に向き合い,いかに生きるべきかを自ら考え続ける姿勢こそ道徳教育が求めるものである。

中学校道徳「道徳科の目標」

(2)道徳教育の目標に基づいて行う

道徳教育は学校の教育活動全体を通じて行う教育活動であり,その目標は学習指導要領第1章総則の第1の2の(2)に以下のように示している。

道徳教育の目標

道徳教育は,教育基本法及び学校教育法に定められた教育の根本精神に基づき,自己の生き方を考え,主体的な判断の下に行動し,自立した人間として他者と共によりよく生きるための基盤となる道徳性を養うことを目標とする」

※ 小学校「自己の生き方を考え」 → 中学校「人間としての生き方を考え」

道徳科も学校の教育活動であり,道徳科を要とした道徳教育が目指すものは,特に教育基本法に示された
「人格の完成を目指し,平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成」(第1条)
であり,
1. 「幅広い知識と教養を身に付け,真理を求める態度を養い,豊かな情操と道徳心を培うとともに,健やかな身体を養う」(第2条第1号)こと,
2. 「個人の価値を尊重して,その能力を伸ばし,創造性を培い,自主及び自律の精神を養うとともに,職業及び生活との関連を重視し,勤労を重んずる態度を養う」(同条第2号)こと,
3. 「正義と責任,男女の平等,自他の敬愛と協力を重んずるとともに,公共の精神に基づき,主体的に社会の形成に参画し,その発展に寄与する態度を養う」(同条第3号)こと,
4. 「生命を尊び,自然を大切にし,環境の保全に寄与する態度を養う」(同条第4号)こと,
5. 「伝統と文化を尊重し,それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに,他国を尊重し,国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う」(同条第5号)こと
につながるものでなければならない。

そして,主体的な判断に基づいて道徳的実践を行い,自立した人間として他者と共によりよく生きるための基盤となる道徳性を養うこと道徳科の目標である。
このことは各教科等における道徳教育でも同様であり,道徳科がどのように道徳性を養うのかについては,以下の具体的な目標によるところである。
※ 「(2)道徳教育の目標に基づいて行う」は,小学校と中学校で共通

中学校道徳「道徳教育の目標に基づいて行う」

(3)道徳性を養うために行う道徳科における学習

① 道徳的諸価値について理解する

道徳的価値とは,
よりよく生きるために必要とされるものであり,人間としての在り方や生き方の礎となるものである。学校教育においては,これらのうち発達の段階を考慮して,児童一人一人が道徳的価値観を形成する上で必要なものを内容項目として取り上げている。

児童が今後,様々な問題場面に出会った際に,その状況に応じて自己の生き方を考え,主体的な判断に基づいて道徳的実践を行うためには,道徳的価値の意義及びその大切さの理解が必要になる
一つは,
内容項目を,人間としてよりよく生きる上で大切なことであると理解することである。
二つは,
道徳的価値は大切であってもなかなか実現することができない人間の弱さなども理解することである。
三つは,
道徳的価値を実現したり,実現できなかったりする場合の感じ方,考え方は一つではない,多様であるということを前提として理解することである。
道徳的価値人間らしさを表すものであることに気付き,価値理解と同時に人間理解他者理解を深めていくようにする。

道徳科の中で道徳的価値の理解のための指導をどのように行うのかは,授業者の意図や工夫によるが,自立した人間として他者と共によりよく生きるための基盤となる道徳性を養うには,道徳的価値について理解する学習を欠くことはできない。
また,指導の際には,特定の道徳的価値を絶対的なものとして指導したり,本来実感を伴って理解すべき道徳的価値のよさや大切さを観念的に理解させたりする学習に終始することのないように配慮することが大切である。

中学校道徳「道徳的諸価値についての理解を基にする」

② 自己を見つめる

道徳的価値の理解について,価値理解,人間理解,他者理解について前述したが,道徳的価値の理解を図るには,児童一人一人がこれらの理解を自分との関わりで捉えることが重要である。
人間としてよりよく生きる上で大切な道徳的価値を自分のこととして感じたり考えたりすることである。

自己を見つめるとは,
自分との関わり,つまりこれまでの自分の経験やそのときの感じ方,考え方と照らし合わせながら,更に考えを深めることである。

このような学習を通して,児童一人一人は,道徳的価値の理解と同時に自己理解を深めることになる。
また,児童自ら道徳性を養う中で,自らを振り返って成長を実感したり,これからの課題や目標を見付けたりすることができるようになる。

道徳科の指導においては,児童が道徳的価値を基に自己を見つめることができるような学習を通して,道徳性を養うことの意義について,児童自らが考え,理解できるようにすることが大切である。

中学校道徳「自己を見つめる」

③ 物事を多面的・多角的に考える

よりよく生きるための基盤となる道徳性を養うためには,
児童が多様な感じ方や考え方に接することが大切であり,児童が多様な価値観の存在を前提にして,他者と対話したり協働したりしながら,物事を多面的・多角的に考えることが求められる。
このように物事を多面的・多角的に考える学習を通して,児童一人一人は,価値理解と同時に人間理解や他者理解を深め,更に自分で考えを深め,判断し,表現する力などを育むのである。

道徳科においては,児童が道徳的価値の理解を基に物事を多面的・多角的に考えることができるようにすることが大切である。
道徳的価値の理解は,道徳的価値自体を観念的に理解するのではなく,道徳的価値を含んだ事象や自分自身の体験などを通して,そのよさや意義,困難さ,多様さなどを理解することが求められる。

このように,道徳的価値の理解を基に,自己を見つめ,物事を多面的・多角的に考えるという道徳的価値の自覚を深める過程で,道徳的価値を自分なりに発展させていくことへの思いや課題が培われるのである。その中で,自己や社会の未来に夢や希望がもてるようにすることが大切である。

物事を多面的・多角的に考える指導のためには,物事を一面的に捉えるのではなく,児童自らが道徳的価値の理解を基に考え,様々な視点から物事を理解し,主体的に学習に取り組むことができるようにすることが大切である。
なお,例えば,発達の段階に応じて二つの概念が互いに矛盾,対立しているという二項対立の物事を取り扱うなど,物事を多面的・多角的に考えることができるよう指導上の工夫をすることも大切である。

中学校道徳「物事を広い視野から多面的・多角的に考える」

④ 自己の生き方についての考えを深める

児童は,道徳的価値の理解を基に自己を見つめるなどの道徳的価値の自覚を深める過程で,同時に自己の生き方についての考えを深めているが,特にそのことを強く意識させることが重要である。

児童が道徳的価値の理解を基に,自己を見つめ,物事を多面的・多角的に考えることを通して形成された道徳的価値観を基盤として,自己の生き方についての考えを深めていくことができるようにすることが大切である。
その際,道徳的価値の理解を自分との関わりで深めたり,自分自身の体験やそれに伴う感じ方や考え方などを確かに想起したりすることができるようにするなど,特に自己の生き方についての考えを深めることを強く意識して指導することが重要である。

例えば,
・ 児童が道徳的価値に関わる事象を自分自身の問題として受け止められるようにする
・ また,他者の多様な感じ方や考え方に触れることで身近な集団の中で自分の特徴などを知り,伸ばしたい自己を深く見つめられるようにする
・ それとともに,これからの生き方の課題を考え,それを自己の生き方として実現していこうとする思いや願いを深めることができるようにする
ことなどが考えられる。
道徳科においては,これらのことが,児童の実態に応じて計画的になされるように様々に指導を工夫していく必要がある。
なお,このことは中学校段階において,人間としての生き方についての考えを深めることに発展していく。

中学校道徳「人間としての生き方についての考えを深める」

参考「人間としての在り方生き方」について

※ 小学校では「(3)道徳性を養うために行う道徳科における学習 ①道徳的諸価値について理解する ②自己を見つめる ③物事を多面的・多角的に考える ④自己の生き方についての考えを深める」で構成する内容は,中学校では「(3)道徳的諸価値についての理解を基にする (4)自己を見つめ,物事を広い視野から多面的・多角的に考え,人間としての生き方についての考えを深める ①自己を見つめる ②物事を広い視野から多面的・多角的に考える ③人間としての生き方についての考えを深める」で構成する。
小学校では「学習過程の4つの鍵となる活動」の列挙により確かな学習を重視し,中学校では「道徳的価値の自覚」と「人間としての生き方についての自覚」の並列により個の学びの深化を重視した構成と考えられる。

(4)道徳的な判断力,心情,実践意欲と態度を育てる

道徳性とは

道徳性とは,人間としてよりよく生きようとする人格的特性

であり,道徳教育は道徳性を構成する諸様相である道徳的判断力,道徳的心情,道徳的実践意欲と態度を養うことを求めている。
道徳性の諸様相については,様々な考え方があるが,学校教育において道徳教育を行うに当たっては,次のように捉えるようにする。

道徳的判断力とは

道徳的判断力は,それぞれの場面において善悪を判断する能力である。

つまり,人間として生きるために道徳的価値が大切なことを理解し,様々な状況下において人間としてどのように対処することが望まれるかを判断する力である。的確な道徳的判断力をもつことによって,それぞれの場面において機に応じた道徳的行為が可能になる。

道徳的心情とは

道徳的心情は,道徳的価値の大切さを感じ取り,善を行うことを喜び,悪を憎む感情のことである。

人間としてのよりよい生き方や善を志向する感情であるとも言える。それは,道徳的行為への動機として強く作用するものである。

道徳的実践意欲と態度とは

道徳的実践意欲態度は,道徳的判断力や道徳的心情によって価値があるとされた行動をとろうとする傾向性を意味する。
・ 道徳的実践意欲は,道徳的判断力や道徳的心情を基盤とし道徳的価値を実現しようとする意志の働きであり,
・ 道徳的態度は,それらに裏付けられた具体的な道徳的行為への身構えと言うことができる。

これらの道徳性の諸様相には,特に序列や段階があるということではない。
一人一人の児童が道徳的価値を自覚し,自己の生き方についての考えを深め,日常生活や今後出会うであろう様々な場面,状況において,道徳的価値を実現するための適切な行為を主体的に選択し,実践することができるような内面的資質を意味している。

道徳性を養うことを目的とする道徳科においては,その目標を十分に理解して,教師の一方的な押し付けや単なる生活経験の話合いなどに終始することのないように特に留意し,それにふさわしい指導の計画や方法を講じ,指導の効果を高める工夫をすることが大切である。

道徳性は,徐々に,しかも着実に養われることによって,潜在的,持続的な作用を行為や人格に及ぼすものであるだけに,長期的展望と綿密な計画に基づいた丹念な指導がなされ,道徳的実践につなげていくことができるようにすることが求められる。

中学校道徳「道徳的な判断力,心情,実践意欲と態度を育てる」



出典:文部科学省「小学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編  第2章 道徳教育の目標 第1節 道徳教育と道徳科,第2節 道徳科の目標 」平成29年6月[ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2017/11/29/1387017_12_3.pdf(参照2018/03/17)を加工して作成
平成29年7月版[ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/09/03/1387017_12_4.pdf(cf:2018-12-13) 確認済み

資料

第1章総 則 第1 小学校教育の基本と教育課程の役割

2 学校の教育活動を進めるに当たっては,各学校において,第3の1に示す主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を通して,創意工夫を生かした特色ある教育活動を展開する中で,次の(1)から(3)までに掲げる事項の実現を図り,児童に生きる力を育むことを目指すものとする。

(2) 道徳教育や体験活動,多様な表現や鑑賞の活動等を通して,豊かな心や創造性の涵養を目指した教育の充実に努めること。

学校における道徳教育は,特別の教科である道徳(以下「道徳科」という。)を要として学校の教育活動全体を通じて行うものであり,道徳科はもとより,各教科,外国語活動,総合的な学習の時間及び特別活動のそれぞれの特質に応じて,児童の発達の段階を考慮して,適切な指導を行うこと。

道徳教育は,教育基本法及び学校教育法に定められた教育の根本精神に基づき,自己の生き方を考え,主体的な判断の下に行動し,自立した人間として他者と共によりよく生きるための基盤となる道徳性を養うことを目標とすること。

道徳教育を進めるに当たっては,人間尊重の精神と生命に対する畏敬の念を家庭,学校,その他社会における具体的な生活の中に生かし,豊かな心をもち,伝統と文化を尊重し,それらを育んできた我が国と郷土を愛し,個性豊かな文化の創造を図るとともに,平和で民主的な国家及び社会の形成者として,公共の精神を尊び,社会及び国家の発展に努め,他国を尊重し,国際社会の平和と発展や環境の保全に貢献し未来を拓く主体性のある日本人の育成に資することとなるよう特に留意すること。

※出典:「小学校学習指導要領」平成29年3月 文部科学省http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2017/05/12/1384661_4_2.pdf(参照 2018.3.18)

各教科等における道徳教育

【参考】各教科等における道徳教育(小学校学習指導要領解説総則編より抜粋)
第6節 道徳教育推進上の配慮事項
1 道徳教育の指導体制と全体計画
(4) 各教科等における道徳教育
各教科等における道徳教育については,第2章各教科,第4章外国語活動,第5章総合的な学習の時間及び第6章特別活動における「第3 指導計画の作成と内容の取扱い」に,第3章特別の教科道徳の第2に示す内容についてそれぞれの特質に応じて適切に指導することが示されているが,具体的には,次のような配慮をすることが求められる。

ア 国語科
国語で正確に理解したり適切に表現したりする資質・能力を育成する上で,日常生活における人との関わりの中で伝え合う力を高めることは,学校の教育活動全体で道徳教育を進めていくための基盤となるものである。また,思考力や想像力を養うこと及び言語感覚を豊かにすることは,道徳的心情や道徳的判断力を養う基本になる。さらに,我が国の言語文化に関わり,国語を尊重してその能力の向上を図る態度を養うことは,伝統と文化を尊重し,それらを育んできた我が国と郷土を愛することなどにつながるものである。
教材選定の観点として,第2章第1節国語の第3の3(2)に,道徳性の育成に資する項目を国語科の特質に応じて示している。

イ 社会科
地域や我が国の歴史や伝統と文化を通して社会生活について理解することや,多角的な思考や理解を通して,地域社会に対する誇りと愛情,我が国の国土と歴史に対する愛情を涵かん養することは,伝統と文化を尊重し,それらを育んできた我が国と郷土を愛することなどにつながるものである。また,国際社会に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者としての自覚をもち,自他の人格を尊重し,社会的義務や責任を重んじ,公正に判断しようとする態度や能力などの公民としての資質・能力の基礎を養うことは,主として集団や社会との関わりに関する内容などと密接に関係するものである。

ウ 算数科
算数科の目標にある「日常の事象を数理的に捉え見通しをもち筋道を立てて考察する力」を育てることは,道徳的な判断力の育成にも資するものである。また,「算数で学んだことを生活や学習に活用しようとする態度」を育てることは,工夫して生活や学習をしようとする態度を育てることにも資するものである。

エ 理科
栽培や飼育などの体験活動を通して自然を愛する心情を育てることは,生命を尊重し,自然環境の保全に寄与する態度の育成につながるものである。また,見通しをもって観察,実験を行うことや,問題解決の力を育てることは,道徳的判断力や真理を大切にしようとする態度の育成にも資するものである。

オ 生活科
自分自身,身近な人々,社会及び自然と直接関わる活動や体験を通して,自然に親しみ,生命を大切にするなど自然との関わりに関心をもつこと,自分のよさや可能性に気付くなど自分自身について考えさせること,生活上のきまり,言葉遣い,振る舞いなど生活上必要な習慣を身に付け,自立し生活を豊かにしていくための資質・能力を育成することなど,いずれも道徳教育と密接な関わりをもつものである。

カ 音楽科
音楽科の「第1 目標」(3)に,「音楽活動の楽しさを体験することを通して,音楽を愛好する心情と音楽に対する感性を育むともに,音楽に親しむ態度を養い,豊かな情操を培う。」と示している。音楽を愛好する心情や音楽に対する感性は,美しいものや崇高なものを尊重する心につながるものであり,また,音楽科の学習指導を通して培われる豊かな情操は,道徳性の基盤を養うものである。
音楽科で取り扱う共通教材は,我が国の伝統や文化,自然や四季の美しさや,夢や希望をもって生きることの大切さなどを含んでおり,道徳的心情の育成に資するものである。

キ 図画工作科
図画工作科においては,目標の「学びに向かう力,人間性等」において「つくりだす喜びを味わうとともに,感性を育み,楽しく豊かな生活を創造しようとする態度を養い,豊かな情操を培う」と示している。
つくりだす喜びを味わうようにすることは,美しいものや崇高なものを尊重する心につながるものである。また,造形的な創造による豊かな情操は,道徳性の基盤を養うものである。

ク 家庭科
日常生活に必要な基礎的な知識や技能を身に付け,生活をよりよくしようと工夫する資質・能力を育てることは,生活習慣の大切さを知り,自分の生活を見直すことにつながるものである。また,家庭生活を大切にする心情を育むことは,家族を敬愛し,楽しい家庭をつくり,家族の役に立つことをしようとすることにつながるものである。

ケ 体育科
自己の課題の解決に向けて運動したり,集団で楽しくゲームを行ったりすることを通して,最後まで粘り強く取り組む,気持ちのよい挨拶をする,仲間と協力する,勝敗を受け入れる,フェアなプレイを大切にする,仲間の考えや取組を理解するなどの態度が養われる。
健康・安全についての理解は,生活習慣の大切さを知り,自己の生活を見直すことにつながるものである。

コ 外国語科
外国語科においては,第1の目標(3)として「外国語の背景にある文化に対する理解を深め,他者に配慮しながら,主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を養う」と示している。「外国語の背景にある文化に対する理解を深め」ることは,世界の中の日本人としての自覚をもち,国際的視野に立って,世界の平和と人類の幸福に貢献することにつながるものである。また,「他者に配慮」することは,外国語の学習を通して,他者を配慮し受け入れる寛容の精神や平和・国際貢献などの精神を獲得し,多面的思考ができるような人材を育てることにつながる。

サ 外国語活動
外国語活動においては,第1の目標(3)として「外国語を通して,言語やその背景にある文化に対する理解を深め,相手に配慮しながら,主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を養う」と示している。「外国語を通して,言語やその背景にある文化に対する理解を深め」ることは,世界の中の日本人としての自覚をもち,国際的視野に立って,世界の平和と人類の幸福に貢献することにつながるものである。また,「相手に配慮」することは,外国語の学習を通して,相手に配慮し受け入れる寛容の精神や平和・国際貢献などの精神を獲得し,多面的思考ができるような人材を育てることにつながる。

シ 総合的な学習の時間
総合的な学習の時間においては,目標を「探究的な見方・考え方を働かせ,横断的・総合的な学習を行うことを通して,よりよく課題を解決し,自己の生き方を考えていくための資質・能力を次のとおり育成する」とし,育成を目指す資質・能力の三つの柱を示している。
総合的な学習の時間の内容は,各学校で定めるものであるが,目標を実現するにふさわしい探究課題については,例えば,国際理解,情報,環境,福祉・健康などの現代的な諸課題に対応する横断的・総合的な課題,地域の人々の暮らし,伝統と文化など地域や学校の特色に応じた課題,児童の興味・関心に基づく課題などを踏まえて設定することが考えられる。児童が,横断的・総合的な学習を探究的な見方・考え方を働かせて行うことを通して,このような現代社会の課題などに取り組み,これらの学習が自己の生き方を考えることにつながっていくことになる。
また,探究課題の解決を通して育成を目指す資質・能力については,主体的に判断して学習活動を進めたり,粘り強く考え解決しようとしたり,自己の目標を実現しようとしたり,他者と協調して生活しようとしたりする資質・能力を育てることも重要であり,このような資質・能力の育成は道徳教育につながるものである。

ス 特別活動
特別活動における学級や学校生活における集団活動や体験的な活動は,日常生活における道徳的な実践の指導を行う重要な機会と場であり,道徳教育において果たす役割は大きい。特別活動の目標には,「集団活動に自主的,実践的に取り組み」「互いのよさや可能性を発揮」「集団や自己の生活上の課題を解決」など,道徳教育でもねらいとする内容が含まれている。また,目指す資質・能力には,「多様な他者との協働」「人間関係」「自己の生き方」「自己実現」など,道徳教育がねらいとする内容と共通している面が多く含まれており,道徳教育において果たすべき役割は極めて大きい。
具体的には,例えば,多様な他者の意見を尊重しようとする態度,自己の役割や責任を果たして生活しようとする態度,よりよい人間関係を形成しようとする態度,みんなのために進んで働こうとする態度,自分たちできまりや約束をつくって守ろうとする態度,目標をもって諸問題を解決しようとする態度,自己のよさや可能性を大切にして集団活動を行おうとする態度などは,集団活動を通して身に付けたい道徳性である。
特に,学級活動については,道徳教育の各学年段階における配慮事項を踏まえて,学級活動における各学年段階の指導における配慮事項を示している。また,学級活動の「(1)学級や学校における生活づくりへの参画」は,学級や学校の生活上の諸課題を見いだし,これを自主的に取り上げ,協力して解決していく自発的,自治的な活動である。このような児童による自発的,自治的な活動によって,望ましい人間関係の形成やよりよい生活づくりに参画する態度などに関わる道徳性を身に付けることができる。学級活動の「(2)日常の生活や学習への適応と自己の成長及び健康安全」では,基本的な生活習慣の形成やよりよい人間関係の形成,心身ともに健康で安全な生活態度の形成,食育の観点を踏まえた学校給食と望ましい食習慣の形成を示している。また学級活動の「(3)一人一人のキャリア形成と自己実現」では,現在や将来に希望や目標をもって生きる意欲や態度の形成,社会参画意識の醸成や働くことの意義の理解,主体的な学習態度の形成と学校図書館等の活用を示している。これらについて,自らの生活を振り返り,自己の目標を定め,粘り強く取り組み,よりよい生活態度を身に付けようとすることは,道徳性を養うことと密接に関わるものである。
児童会活動においては,異年齢の児童が学校におけるよりよい生活を築くために,諸問題を見いだし,これを自主的に取り上げ,協力して解決していく自発的,自治的な活動を通して,異年齢によるよりよい人間関係の形成やよりよい学校生活づくりに参画する態度などに関わる道徳性を養うことができる。
クラブ活動においては,異年齢によるよりよい人間関係の形成や個性の伸長,よりよいクラブ活動づくりに参画する態度などに関わる道徳性を養うことができる。
学校行事においては,特に,自然の中での集団宿泊活動やボランティア精神を養う活動,幼児,高齢者や障害のある人々などとの触れ合いや文化や芸術に親しむ体験を通して,よりよい人間関係の形成,自律的態度,心身の健康,協力,責任,公徳心,勤労,社会奉仕などに関わる道徳性を養うことができる。

文部科学省「小学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編  第2章 道徳教育の目標 第1節 道徳教育と道徳科,第2節 道徳科の目標 」平成29年7月[ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/09/03/1387017_12_4.pdf(cf:2018-12-13)

教育基本法

教育基本法(昭和二十二年法律第二十五号)の全部を改正する。

目次

前文
第一章 教育の目的及び理念(第一条―第四条)
第二章 教育の実施に関する基本(第五条―第十五条)
第三章 教育行政(第十六条・第十七条)
第四章 法令の制定(第十八条)
附則

我々日本国民は,たゆまぬ努力によって築いてきた民主的で文化的な国家を更に発展させるとともに,世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願うものである。
我々は,この理想を実現するため,個人の尊厳を重んじ,真理と正義を希求し,公共の精神を尊び,豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに,伝統を継承し,新しい文化の創造を目指す教育を推進する。
ここに,我々は,日本国憲法の精神にのっとり,我が国の未来を切り拓く教育の基本を確立し,その振興を図るため,この法律を制定する。

第一章 教育の目的及び理念

(教育の目的)

第一条 教育は,人格の完成を目指し,平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。

(教育の目標)

第二条 教育は,その目的を実現するため,学問の自由を尊重しつつ,次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一 幅広い知識と教養を身に付け,真理を求める態度を養い,豊かな情操と道徳心を培うとともに,健やかな身体を養うこと。
二 個人の価値を尊重して,その能力を伸ばし,創造性を培い,自主及び自律の精神を養うとともに,職業及び生活との関連を重視し,勤労を重んずる態度を養うこと。
三 正義と責任,男女の平等,自他の敬愛と協力を重んずるとともに,公共の精神に基づき,主体的に社会の形成に参画し,その発展に寄与する態度を養うこと。
四 生命を尊び,自然を大切にし,環境の保全に寄与する態度を養うこと。
五 伝統と文化を尊重し,それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに,他国を尊重し,国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。

(生涯学習の理念)

第三条 国民一人一人が,自己の人格を磨き,豊かな人生を送ることができるよう,その生涯にわたって,あらゆる機会に,あらゆる場所において学習することができ,その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。

(教育の機会均等)

第四条 すべて国民は,ひとしく,その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず,人種,信条,性別,社会的身分,経済的地位又は門地によって,教育上差別されない。
2 国及び地方公共団体は,障害のある者が,その障害の状態に応じ,十分な教育を受けられるよう,教育上必要な支援を講じなければならない。
3 国及び地方公共団体は,能力があるにもかかわらず,経済的理由によって修学が困難な者に対して,奨学の措置を講じなければならない。


※出典:教育基本法(前文,第一条―第四条)http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/06042712/003.htm(参照 2018.3.18)

参考「人間としての在り方生き方」について

学習指導要領上の記述 趣旨(学習指導要領解説より)
高等学校 人間としての在り方生き方についての考えを深める 生きる主体としての自己を確立し,自らの人生観・世界観ないし価値観を形成し,主体性をもって生きたいという意欲を高める
(高等学校学習指導要領解説 総則編p18)
中学校 人間としての生き方についての考えを深める 人生の意味をどこに求め,いかによりよく生きるかという人間としての生き方を主体的に模索する
・人間についての深い理解を鏡として行為の主体としての自己を深く見つめる
(中学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編p16-17)
小学校 自己の生き方についての考えを深める ・道徳的価値に関わる事象を自分自身の問題として受け止められるようにする
・他者との関わりや身近な集団の中で自分の特徴などを知り,伸ばしたい自己について深く見つめる
これからの生き方の課題を考え,それを自己の生き方として表現していこうとする思いや願いを深める
(小学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編p18)

※出典:中央教育審議会「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)別添資料(3/3)別添16-3参考「人間としての在り方生き方」について」平成28年12月21日[ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2017/01/20/1380902_3_3_1.pdf(参照2018/04/07)

道徳性を養う学習と,道徳教育で育成を目指す資質・能力の整理

道徳教育で育成する資質・能力としての道徳性と,道徳教育・道徳科の学習の過程との関係をイメージしたもの。
道徳教育,道徳科の意義,特質から,これらの要素を分節して評価を行うことはなじまない。
道徳的諸価値の理解
自分自身に固有の

選択基準・判断基準の形成
生徒一人一人の
人間としての在り方生き方
ついての考え(思考)
人間としてよりよく生きようとする
道徳性
高等学校 道徳的諸価値の理解に基づき,自分自身に固有の選択基準・判断基準を形成すること
など
物事を広い視野から多面的・多角的に考え,自分自身の人間としての在り方生き方についての考えを深めること
など
○人間としての在り方生き方を考え,主体的な判断の下に行動し,自立した人間として他者とともによりよく生きるための基盤となる 道徳性
・道徳的価値が大切なことなどを理解し,様々な状況下において人間としてどのように対処することが望まれるか判断する能力(道徳的判断力)
・人間としてのよりよい生き方や善を指向する感情(道徳的心情)
・道徳的価値を実現しようとする意志の働き,行為への身構え(道徳的実践意欲と態度) など
小学校

中学校
道徳的諸価値の意義及びその大 切さなどを理解すること
・人間としてよりよく生きる上で,道徳的価値は大切なことであるということの理解
・道徳的価値は大切であっても,なかなか実現することができないことの理解
・道徳的価値を実現したり,実現できなかったりする場合の感じ方,考え方は多様であるということを前提とした理解
など
自己を見つめ,物事を多面的・多角的に考え,自己の(人間としての)生き方についての考えを 深めること
(中学校)
・人生の意味をどこに求め,いかによりよく生きるかという人間としての生き方を主体的に模索する
・人間についての深い理解を鏡として行為の主体としての自己を深く見つめる
(小学校)
・道徳的価値に関わる事象を自分自身の問題として受け止める
・他者の多様な考え方や感じ方に触れることで,自分の特徴などを知り,伸ばしたい自己を深く見つめる
・生き方の課題を考え,それを自己(人間として)の生き方として実現しようとする思いや願いを深める など
自己の(人間としての)生き方を考え,主体的な判断の下に行動し,自立した人間として他者とともによりよく生きるための基盤となる道徳性
・道徳的価値が大切なことなどを理解し,様々な状況下において人間としてどのように対処することが望まれるか判断する能力(道徳的判断力)
・人間としてのよりよい生き方や善を指向する感情(道徳的心情)
・道徳的価値を実現しようとする意志の働き,行為への身構え(道徳的実践意欲と態度) など
道徳性を養うための学習を支える要素 道徳教育・道徳科で育てる資質・能力

※出典:中央教育審議会「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)別添資料(3/3)別添16-3道徳性を養う学習と,道徳教育で育成を目指す資質・能力の整理」平成28年12月21日[ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2017/01/20/1380902_3_3_1.pdf(参照2018/04/07)

道徳教育の充実

・ 平成27年3月27日付け26文科初1339号「学校教育法施行規則の一部を改正する省令の制定,小学校学習指導要領の一部を改正する告示,中学校学習指導要領の一部を改正する告示及び特別支援学校小学部・中学部学習指導要領の一部を改正する告示の公示並びに移行措置等について(通知)」により既にお伝えしたとおりであり,小学校で平成30年4月1日から,中学校で平成31年4月1日から施行される内容等に変更はないこと。
平成27年の一部改正の内容は,道徳の時間を教育課程上,特別の教科である道徳(以下「道徳科」という。)として新たに位置付け,発達の段階に応じ,答えが一つではない課題を一人一人の児童生徒が道徳的な問題と捉え向き合う「考える道徳」,「議論する道徳」へと転換を図るものであること。

・ 道徳科の内容項目について,いじめ問題への対応の充実や発達の段階をより一層踏まえた体系的なものに見直すとともに,問題解決的な学習や体験的な学習などを取り入れ,指導方法の工夫を行うことについて示したこと。

・ 道徳科における学習状況及び道徳性に係る成長の様子を継続的に把握し,指導の改善に生かすこと。ただし,数値による評価は行わないこと。
具体的には,平成28年7月29日付け28文科初第604号「学習指導要領の一部改正に伴う小学校,中学校及び特別支援学校小学部・中学部における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)」(以下「道徳科の学習評価及び指導要録の改善通知」という。)においてお知らせしたとおり,他の児童生徒との比較ではなく,児童生徒がいかに成長したかを積極的に受け止めて認め,励ます個人内評価として記述により行うこと。

※出典:文部科学省「学校教育法施行規則の一部を改正する省令の制定並びに幼稚園教育要領の全部を改正する告示,小学校学習指導要領の全部を改正する告示及び中学校学習指導要領の全部を改正する告示等の公示について(通知)」平成29年3月31日[ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2017/05/12/1384661_1_1.pdf(参照2018/04/09)

道徳科の学習評価に関する考え方

1 道徳科の学習評価に関する基本的な考え方について

道徳科の評価を行うに当たっては,小・中学校学習指導要領等第3章の児童生徒の「学習状況や道徳性に係る成長の様子を継続的に把握し,指導に生かすよう努める必要がある。ただし,数値などによる評価は行わないものとする」との規定の趣旨や,「道徳に係る教育課程の改善等について(答申)」(平成26年10月21日中央教育審議会)の「道徳性の評価の基盤には,教員と児童生徒との人格的な触れ合いによる共感的な理解が存在することが重要」であり,道徳性の評価は「児童生徒が自らの成長を実感し,更に意欲的に取り組もうとするきっかけとなるような評価を目指すべき」との評価に当たっての考え方等を十分に踏まえる必要がある。

具体的には以下の点に留意し,学習活動における児童生徒の「学習状況や道徳性に係る成長の様子」を,観点別評価ではなく個人内評価として丁寧に見取り,記述で表現することが適切である。

(1)児童生徒の人格そのものに働きかけ,道徳性を養うことを目標とする道徳科の評価としては,育むべき資質・能力を観点別に分節し,学習状況を分析的に捉えることは妥当ではないこと。

(2)このため,道徳科については,「道徳的諸価値についての理解を基に,自己を見つめ,物事を(広い視野から)多面的・多角的に考え,自己(人間として)の生き方についての考えを深める」という学習活動における児童生徒の具体的な取組状況を,一定のまとまりの中で,児童生徒が学習の見通しをもって振り返る場面を適切に設定しつつ見取ることが求められること。

(3)他の児童生徒との比較による評価ではなく,児童生徒がいかに成長したかを積極的に受け止めて認め,励ます個人内評価として記述式で行うこと。

(4)個々の内容項目ごとではなく,大くくりなまとまりを踏まえた評価とすること。

(5)その際,特に道徳教育の質的転換を図るという今回の道徳の特別教科化の趣旨を踏まえれば,特に,学習活動において児童生徒がより多面的・多角的な見方へと発展しているか,道徳的価値の理解を自分自身との関わりの中で深めているかといった点を重視することが求められること。

2 多様な指導方法の確立や評価の工夫・改善について
別添の専門家会議の報告を踏まえ,多様な指導方法の確立や評価の工夫・改善に向けて積極的に取り組むことが求められること。

3 小学校,中学校及び特別支援学校小学部・中学部の指導要録について
道徳科については,児童生徒の学習状況や道徳性に係る成長の様子について,特に顕著と認められる具体的な状況等について記述による評価を行うこと。

4 入学者選抜における取扱について
道徳科における学習状況や道徳性に係る成長の様子の把握については,
・児童生徒の人格そのものに働きかけ,道徳性を養うという道徳科の目標に照らし,その児童生徒がいかに成長したかを積極的に受け止め,励ます観点から行うものであり,個人内評価であるとの趣旨がより強く要請されること。
・児童生徒自身が,入学者選抜や調査書などを気にすることなく,真正面から自分のこととして道徳的価値に多面的・多角的に向き合うことこそ道徳教育の質的転換の目的であることから,「各教科の評定」や「出欠の記録」,「行動の記録」,「総合所見及び指導上参考となる諸事項」などとは基本的な性格が異なるものであり,調査書に記載せず,入学者選抜の合否判定に活用することのないようにすること。

5 発達障害等のある児童生徒への必要な配慮について
(1)道徳科の指導に当たっては,児童生徒の障害による学習上の困難さ,集中することや継続的に行動をコントロールすることの困難さ,他人との社会的関係を形成することの困難さなどの状況ごとに,指導上の必要な配慮を行うこと。こうした配慮を継続的に行うことができるよう,個別の指導計画等に指導上の必要な配慮を記載することが考えられること。
(2)評価を行うに当たっても,困難さの状況ごとの配慮が必要であり,前述のような配慮を伴った指導を行った結果として,相手の意見を取り入れつつ自分の考えを深めているかなど,児童生徒が多角的・多面的な見方へ発展させていたり道徳的価値を自分のこととして捉えていたりしているかを丁寧に見取る必要があること。

6 その他
本通知に記載するところのほか,児童生徒の評価等の在り方については,引き続き,平成22年5月11日付け22文科初第1号「小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)」によるところとする。


※出典:文部科学省「学習指導要領の一部改正に伴う小学校,中学校及び特別支援学校小学部・中学部における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)」平成28年7月29日[ONLINE]http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/1376204.htm(参照2018/04/09)