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近年の自動車の品質や耐久性は、一昔前と比べると格段に向上しました。それを説明するには、どのような情報をどう示すとよいのでしょうか。
説明の一つとして、乗用車の平均車齢や平均使用年数の経年変化、中古車の登録台数における年式毎の割合を示す方法が考えられます。

・乗用車の平均車齢は、4年から8年におよそ2倍に、廃車までの使用年数は、8年から12年半におよそ1.5倍に伸びました。
・中古車市場では、情報サイトの掲載台数の3分の1は、10年以上前の中古車です。高年式の中古車が多数売買され、商品としての品質を長期間保持しています。中古車は、総登録台数の40%を占め、ニーズは安定して高い状況です。

このように、自動車の品質や耐久性は格段に向上し、ユーザーの選択肢は広がっています。







1 耐久性の向上の示し方

(1)最近の自動車は高品質を実感

最近の自動車は、新車に限らず中古車についても高品質です。

中古車販売店をまわると、10年落ちの中古車が普通に展示されています。それらの塗装や外見に大きなダメージは見られません。
加えて、20年、30年前のランドクルーザーが、200万円、300万円で売られています。普通車なら新車が買える値段です。それらの外見の状態は、見る限り良好です。

身の回りを自動車を見渡すと、自動車の品質や耐久性は飛躍的に向上したと実感します。
その実感を見える化してみたくなりました。
説明するには、どのような情報を示すと良いのでしょう。数値やグラフなどを使うと、どんな説明になるのでしょうか。

(2)直接の説明が困難なときは、間接の説明

品質や耐久性が向上したことを示すには、まず、「自動車の品質や耐久性」と直接的に正対した事象を分析して説明すべきでしょう。

具体的には、エンジンやシャーシ、ボディ鋼板や塗装などの品質や耐久性を数値化して示すことです。そのためには、数値化できる科学的な基準を設定し、それに基づいて、試験を実施し、数値で変化を示すことです。
例えば、塗膜について、日本工業規格JIS「自動車部品の金属素地上に、主として防食及び装飾の目的で塗装する部品の塗膜の共通的な事項」D0202「自動車部品の塗膜通則」に基づいて、塗膜の品質特性項目を塗膜品質の試験対象とし、その結果を時系列で蓄積し、変化を示すことです。

しかしながら、そのようなデータを一般ユーザーが手にすることは困難です。

このように、ある事象を直接的に示すことが困難なときは、示したい事象と相関関係にあるデータなどを間接的に示すことで説明します。

具体的には、自動車の品質や耐久性の向上と正の相関が見られる何かの事象です。

例えば、乗用車の平均使用年数の推移です。
平均使用年数は、人間に例えるなら平均寿命に当たります。
平均使用年数が伸びれば、品質や耐久性が向上した」と考えてよいでしょう。

以下、いくつかの情報を示して、近年の自動車の品質や耐久性の向上を説明していきます。

2 安定した中古車へのニーズ

(1)新車販売台数と中古車登録台数の推移

まずは、新車や中古車の販売台数の増減です。よいものは売れるということです。買ってすぐに壊れるなら高額な費用を支払わないでしょう。
しかし、話はそう単純でないのが現実ですが、まずは調べてみます。
newcar-oldcar※日本自動車販売協会連合会「新車販売台数、中古車登録車合計」[OMLINE]http://www.jada.or.jp/contents/data/used/index01.html(2018.10.29参照)のデータをグラフ化

上のグラフは、2014年から2018年の5年間の新車販売台数、中古車登録台数の推移を表します。ともに当該年度の4月から3月までの台数です。また、新車販売台数は、登録車と軽自動車の合計です。

(2)マクロ的、ミクロ的考察

まず、巨視的マクロ的に考察します。

初めに目を引くのは、中古車登録台数に変化ないが、新車販売台数はV字型。目に見える減少の後、増加に転じています。
このことから、新車販売台数は外的要因の影響を受けやすく、中古車登録台数は影響を受けにくいと予想されます。
外的要因としては、景気や政治的緊張、メーカーのリコールや不祥事、原油価格の変動などが考えられます。

次に、微視的ミクロ的に考察します。

新車販売台数は、2014年が569万台から2016年が494万台へと75万台減少。その後、増加に転じ2018年では26万台増の520万台に回復しています。
一方、中古車は、2014年394万台から2015年367万台へと27万台減少。その後4年間微増し、2018年は16万台増の383万台になっています。

新車販売台数の変化を割合で見ると、2016年は2014年から13%減少して87%。2108年は2014年の91%まで回復しています。
一方、中古車登録台数は、2015年は2014年から7%減少し93%。2108年は2014年の97%まで回復しています。

75万台減少という実数では、減少の度合いの強さが一見して分かりにくいです。しかし、13%減少という割合で表すと、2年間の新車販売台数の落ち込みの激しさを実感できます。

新車販売台数に比べ、中古車登録台数は、比較的安定し大きな落ち込みがありません。新車の「13%減少、91%まで回復」が、中古車では「7%減少、97%まで回復」と、振れ幅が小さくなっています。
新車は、2018年になっても、2014年比で91%までしか戻せていません。中古車が97%まで回復したことを考慮すると、新車が低迷する要因を探る必要があります。

注目すべき点の一つは、新車販売台数が落ち込んだ2016年は、中古車は落ち込まず、前年比1%微増していることです。これは、新車販売台数と中古車登録台数の特徴(新車販売台数は外的要因の影響を受けやすく、中古車登録台数は影響を受けにくい)を象徴的に表している事例と考えられます。

このように、中古車登録台数は、新車を含めた自動車総数の40%強を占め、ここ5年間は年間380万台前後で堅調に推移しています。
これらから、中古車のニーズは、安定して高いと言えます。

ポイント1
1. 2014年から2018年については、中古車登録台数は、新車販売台数に比べて、変化が小さい
2. 2014年から2018年については、中古車登録台数は、年間380万台前後で、堅調に推移している
3. 特に、2016年は、新車販売台数は減少したが、中古車登録台数は増加した
4. 登録総数の40%強を占める中古車のニーズは、安定して高い

3 高年式車が多数売買される中古車市場

次に、中古車の年式別の取り扱い台数を見てみましょう。
耐久性が高ければ、比較的古い年式の自動車でも売買されます。すなわち、長く乗れるということです。

中古車の年式別の取り扱い台数を調べるために、インターネット上の中古車情報サイトのデータを利用します。全国的なリアルタイムのデータを収集できるからです。

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※カーセンサー「中古車情報」[ONLINE]https://www.carsensor.net/(2018.10.29 9:00,9:30参照)のデータをグラフ化
「カーセンサー」は、掲載台数421,336台(10月28日9:00現在)という大きな中古車情報サイトの一つです。

上のグラフは、サイトで取り扱っている中古車の経年数(年式)を5年毎にまとめて台数を示したものです。棒グラフは台数の実数、円グラフは割合です。

「年式上限:平成20年の中古車」(下限なし〜H20(2008)年式)いわゆる10年落ち以前の台数を調べると、134,591台(10月28日9:00現在。グラフは9:30のデータ)です。
これはなんと掲載台数(総数)の32%です。
情報サイトに掲載されている中古車の3分の1は、10年落ち以前の中古車ということです。

また、「年式上限:平成10年の中古車」いわゆる20年落ち以前の台数を調べると、15,955台です。
掲載台数の約4%です。さすがに多いとは言えませんが、それでも約16,000台は大きな数です。

さらに、「年式上限:平成元年の中古車」(サイトの選択肢はここまで)29年落ち以前の台数を調べると、4,229台です。掲載台数の1%です。
これは、仮に中古車センターに中古車が100台あれば、およそ30年以上前の中古車が、1台は販売されるという割合です。あくまで割合の話です。

余談ですが、最も古い中古車を検索すると、ビュイック クーペ4人乗り クラシックカー(ブルー)年式1926年、車両本体価格1,100万円でした。今から92年前の車です。

このように、高年式の中古車が多数売買されることから、自動車が商品としての品質を長期間保持できていると考えられます。品質が向上し総合的な耐久性が向上したと考えられます。

ポイント2
1. 中古車の掲載台数の3分の1は、10年以上前の中古車である
2. 高年式の中古車が多数売買されることから、自動車が商品としての品質を長期間保持できていると考えられる

4 保有台数が増加する自動車

また、自動車の廃車台数や保有台数の増減で、耐久性の向上を説明できそうです。
そこで、それらの経年変化を調べてみます。
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※ 経済産業省「自動車の廃棄台数・新規登録台数・保有台数の推移(出典:日本自動車工業会)」[ONLINE]http://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/data/statistics/graph_31.html(参照2018.10.25)
上記グラフは、平成2年から平成14年までの国内における自動車の廃車台数、新規登録台数、保有台数の推移です。
データの推移を見ると、保有台数は単調増加、新規登録台数は減少傾向です。廃車台数は大きく変化していません。
保有台数が増加しているので、それに伴って廃車台数は増加しそうです。ですが、廃車台数に大きな変化はありません。

「保有台数は増加し、廃車台数は変化なし」このことは、自動車が長持ちするようになった、自動車の品質と耐久性の向上により、ユーザーが長く使用するようになったことを表すものと言えそうです。

そこで、わが国の自動車の平均車齢および平均使用年数を見てみましょう。

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※ 自動車検査登録情報協会「平成26年版 わが国の自動車保有動向 平均車齢の推移」[ONLINE]https://www.airia.or.jp/publish/file/e49tph00000004pr-att/e49tph00000004py.pdf(参照2018.10.29)
上のグラフは、軽自動車を除く平均車齢の推移を表します。
平均車齢とは、「国内でナンバープレートを付けている自動車が新規(新車)登録されてからの平均経過年数」です。「人間の平均年齢」に当たります。

昭和54年1979年は、乗用車の平均車齢が4.18年、貨物車が4.24年、乗合車が5.34年でした。
平成26年2014年には、乗用車の平均車齢が8.13年94%増、貨物車が10.93年158%増、乗合車が11.56年116%増となります。35年間で車齢は倍増以上です。

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※ 自動車検査登録情報協会「平成26年版 わが国の自動車保有動向 平均使用年数の推移」[ONLINE]https://www.airia.or.jp/publish/file/e49tph00000004pr-att/e49tph00000004py.pdf(参照2018.10.29)
上のグラフは、軽自動車を除く平均使用年数の推移を表します。
平均使用年数とは、「国内で新規(新車)登録されてから抹消登録するまでの平均年数」です。「人間の平均寿命」に当たります。

昭和54年1979年は、乗用車の平均使用年数が7.86年、貨物車が7.39年、乗合車が9.95年(1981年)でした。
平成26年2014年には、乗用車の平均使用年数が12.64年61%増、貨物車が13.31年80%増、乗合車が17.63年77%増となります。自動車の使用年数は、楽に10年を超えるようになりました。

簡単に整理すると、乗用車の平均車齢は4年から8年におよそ2倍になり、廃車までの使用年数は8年から12年半におよそ1.5倍に伸びています。また、現在走っている乗用車は、平均8年経過しており、平均12年半で廃車されます。

このように、平均車齢が2倍、平均使用年数が1.5倍という伸びにより、自動車の品質や耐久性は飛躍的に向上したと言えます。これは驚異的な技術革新だと筆者は考えます。これにより、ユーザーは自動車に安心して楽しく長く乗れるようになりました。

ポイント3
1. 自動車の保有台数は単調増加し、廃車台数に大きな変化はない。新規登録台数は減少する傾向にある
2. 乗用車の平均車齢は4年から8年におよそ2倍になり、廃車までの使用年数は8年から12年半におよそ1.5倍に伸びている
3. 現在走っている乗用車は、平均8年経過しており、平均12年半で廃車される






5 まとめ

近年の自動車の品質や耐久性は、一昔前と比べると格段に向上しました。その説明の仕方の一つとして、乗用車の平均車齢や平均使用年数の経年変化、中古車の登録台数における年式毎の割合を示すことで説明できます。

  • 乗用車の平均車齢は2倍に、廃車までの使用年数は1.5倍に伸びました。
  • 中古車市場では、情報サイトの掲載台数の3分の1は、10年以上前の中古車です。高年式の中古車が多数売買され、商品としての品質を長期間保持しています。中古車は、総登録台数の40%を占め、ニーズは安定して高い状況です。

このように、自動車の品質や耐久性は、格段に向上し、ユーザーの選択肢は広がっています。

数値化して説明する前は、「最近の自動車は、新車に限らず中古車についても高品質です。」と実感していました。それは、なんとなく感じているだけでした。
それが、「平均車齢が2倍、平均使用年数が1.5倍という伸び」という事実を数値で確かめると、日本のメーカーの技術力、日本人の底力をまざまざと感じます。機械ものの寿命を2倍に伸ばすのは大変なことです。このことは、35年間に様々人々が関わり成し遂げた偉業というべきでしょう。

このように感じたのは、実感を見える化したからです。数値化して説明することは大切なことです。

一方で、見える化や情報公開は諸刃の剣です。悪い結果が出れば意気消沈し、良い結果が出れば強烈なインセンティブが働きます。
これまでの日本人は、見える化から見えてきた悪い結果をも受けれ入れて、課題を見出し克服することで、日本の社会を発展させてきました。

奇しくも池井戸潤氏の小説「下町ロケット」シリーズの第3弾「下町ロケット ゴースト」が放映されています。毎回楽しみに視聴しています。番組を通して、日本の各地で活躍する一人一人の技術者とそれを支える人々に心の底で拍手を送っています。

まとめ

  1. 2014年から2018年については、中古車登録台数は、新車販売台数に比べて、変化が小さく、年間380万台前後で、堅調に推移している
  2. 中古車は、総登録台数の40%を占め、ニーズは安定して高い
  3. 掲載台数の3分の1は、10年以上前の中古車である。高年式の中古車が多数売買され、商品としての品質を長期間保持している
  4. 自動車の保有台数は単調増加。廃車台数に変化はないが、新規登録台数は減少傾向だ
  5. 乗用車の平均車齢は4年から8年におよそ2倍。廃車までの使用年数は8年から12年半におよそ1.5倍に伸びた
  6. 現在走っている乗用車は、平均8年経過し、平均12年半で廃車される