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【現行学習指導要領】「見方・考え方」を働かせるとは?社会科・理科の具体例と問いの手立て

【現行学習指導要領】「見方・考え方」を働かせるとは?社会科・理科の具体例と問いの手立て
 学習指導要領が示す「見方・考え方を働かせる」とは、具体的にどのような状態を指すのだろうか。

 現行学習指導要領における「見方・考え方」を働かせる授業とは、各教科の特質に応じた視点で物事を捉え、資質・能力を育む中核的なプロセスである。指導者は、子ども自身の問いを引き出す発問の工夫、具体的な授業の姿の想定、教科の縦横の繋がりを意識した教材研究、資質・能力の三つの柱との連動を意識することが重要である。

実践における重要な手立て

「問い」を引き出す発問: 社会科や理科の視点に基づき、子どもの思考を刺激する資料提示や発問を行う。
具体的な姿の想定: 授業中に子どもが示す発言や行動を事前に予測し、ゴールを明確にする。
「縦横のつながり」の意識: 教材研究において、内容の階層的な広がりと教科の特質を俯瞰する。
資質・能力の連動: 学びを通じて、知識・技能や思考力・判断力・表現力を確実に育成する。

 現行の学習指導要領において、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた鍵として示されているのが「見方・考え方」である。
 しかし、日々の授業づくりの中で「見方・考え方を働かせるとは、具体的にどのような状態を指すのか」と頭を悩ませている実践者も少なくない。

 「見方・考え方」は、単なるお題目ではなく、子どもたちが資質・能力(「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」)をバランスよく身に付けるための中核となるものである。
 本稿では、中央教育審議会の公表資料に基づき、小学校社会科と理科の具体的な事例を交えながら、その内実と授業での引き出し方を紐解いていく。

1. 「見方・考え方」が深い学びの中核をなす理由

 現行の学習指導要領において、各教科等の役割がこれまで以上に鮮明になった理由の一つは、「見方・考え方」が明確に位置づけられたことにある。

 「見方・考え方」自体は、従来の学習指導要領でも用いられてきた表現である。しかし、これまでは一部の教科等での明示にとどまっており、それを授業にどう落とし込むかは個々の教材研究に委ねられる部分が大きかった。
 改訂を経て、全ての教科等の目標や内容が「資質・能力の三つの柱」に基づいて再整理され、「見方・考え方」が改めて明示されたことで、各教科等の特質がより鮮明に打ち出されることとなった。

 深い思考を展開するためには、物事を捉える視点(見方)が必要であり、その視点は、物事を考えるプロセス(考え方)を働かせることで初めて意味を持つ。「見方・考え方」を働かせた学びを実現する授業を実践できれば、それは自ずと「主体的・対話的で深い学び」へとつながっていくのである。

2. 小学校社会科における「見方・考え方」の具体像

 ここでは、具体例として小学校社会科における「社会的な見方・考え方」を取り上げる。この呼称は、小・中・高等学校における社会科系教科の見方・考え方を総称するものである。

(1)社会科における「3つの視点」

 小学校社会科における物事を捉える視点は、主に次の3点に集約される。

位置や空間的な広がり(地理的位置、分布、地形、環境、土地利用など)
時期や時間の経過(時代、起源、変化、発展、持続可能性など)
事象や人々の相互関係(工夫、努力、つながり、協力・連携、役割など)

Viewpoint of social view and way of thinking

(2)思考力・判断力を発揮する子どもの姿

 社会科における思考力・判断力は、社会的事象を単に暗記するのではなく、上記の3つの視点に着目して比較・分類したり総合したり、あるいは地域の人々や国民の生活と関連付けたりするプロセスにおいて発揮される。
 このプロセスを通じて、子どもたちは次の2つの力を高めていく。

考察:社会的事象の特色や相互の関連、意味を多角的に考える力
構想:社会に見られる課題について、社会への関わり方を選択・判断する力

校種が上がるにつれてこの視点や問いの質が高まっていくが、小学校段階からこれらの基盤を確実に育むことが重要である。

Examples of images that used social viewpoints and ideas

3. 子どもの「問い」を引き出す手立て(発問の例)

 子どもたちに「見方・考え方」を働かせるためには、指導者による適切な「問い」の手立て(発問)が不可欠である。審議会資料に示されている子どもたちの「問いの例」は、授業における効果的な発問を構成する上での大きな示唆となる。

【考察】と【構想】に向かう問いと獲得する知識

問いの例問いの例獲得する知識例…期待される子ども像
【考察】
位置や空間的な広がり
「どのように広がっているのだろう」いくつかの組立工場を中心に部品工場が集まり,工業が盛んな地域を形成している
「なぜ、この場所に集まっているのだろう」駅の周囲は交通の結節点なので人が多いため商業施設が集まっている
【考察】
時期や時間の経過
「いつ、どんな理由で始まったのだろう」祭りは地域の豊作や人々のまとまりへの願いから始まった
「どのように変わってきたのだろう」農作業は機械化により生産効率を向上させてきた
【考察】
事象や人々の相互関係
「どのような工夫や努力があるのだろう」地域の安全は,関係機関の未然防止と緊急対処によって守られている
「なぜ、〇〇と〇〇の協力が必要なのだろう」食料生産は私たちの食生活を支える役割を果たしている
【構想】「どのように続けていくことがよいのだろう」伝統と文化は受け継ぐだけでなく時代に合わせ発展させていく必要がある
「共に生きていく上で、何が大切なのだろう」世界の人々と共に生きるには,文化や考え方の違いを認め合い,課題を解決しな がら理解し合っていくことが大切である

指導者はこれらの問いを意識し、子ども自らがこうした疑問を持てるような学習環境や資料提示を工夫することが求められる。

4. 他教科との比較から見渡す「教材分析」の重要性

 「見方・考え方」は各教科等の特質に応じたものであるため、他教科と比較することでその輪郭がより鮮明になる。
 例として理科の「見方」を見てみよう。理科では、領域ごとに以下のような特徴的な視点が整理されている。
エネルギー:量的・関係的な視点
粒子:質的・実体的な視点
生命:多様性と共通性の視点
地球:時間的・空間的な視点

 社会科が「空間・時間・相互関係」という3つの視点を軸にするのに対し、理科では「自然の事物・現象」を対象に、領域ごとの科学的な視点が提示されていることがわかる。

 このように教科間や領域間、さらには小学校から中学校へとつながる校種間の「縦横のつながり」を見渡すことは、指導内容を確実に捉えるための教材分析において極めて有効である。「全領域に共通する視点は何か」「この教科だからこそ育める視点は何か」を意識することで、授業のねらいはより強固なものとなる。

 学習指導要領は、学校教育の全体像を見渡すための「学びの地図」である。指導者はこの趣旨を踏まえ、単元や時間の枠にとどまらず、全体を「見渡す」教材研究をより一層大切にする必要がある。

5. 【授業づくりのチェックリスト】実践化への5つの手順

「見方・考え方」を働かせた授業を具体化する際は、以下の5つの手順に沿って組み立てを進めると効果的である。

  1. 【視点の明確化】:本時(または単元)において、働かせたい「見方・考え方」は何か。
  2. 【子どもの姿の想定】:授業の中で「見方・考え方」を働かせた子どもは、具体的にどのような発言や行動を見せるか。
  3. 【知識の定着】:その結果として、最終的に子どもたちに獲得させたい知識・技能は何か。
  4. 【学習過程の構築】:深い思考を生むための学習過程や、対話的な学習活動をどのように構成するか。
  5. 【手立ての発案】:子ども自身が「見方・考え方」の視点から自発的に問いを持てるよう、どのような発問や資料を用意するか。

これらのステップを踏むことで、「見方・考え方」を軸とした、ブレのない確実な授業実践を展開することが可能となる。

まとめ

・ 新学習指導要領において明示された「見方・考え方」は、主体的・対話的で深い学びを実現するための中核である。
・ 小学校社会科における「社会的な見方・考え方」の視点例には、「位置や空間的な広がり」「時期や時間の経過」「事象や人々の相互関係」の3つがある。
・ 社会科において思考力・判断力を発揮する子どもの姿は、社会的事象をこれら3つの視点に着目して捉え、比較・分類・総合したり、地域の人々や国民の生活と関連付けたりするプロセスの中に表れる。
・ 各資料を参考にしながら、「見方・考え方」の領域間、教科間、校種間における縦横のつながりを見渡し比較することが重要である。それにより、自らの教科等における視点を再吟味し、より深い教材研究を行うことが可能となる。

※1文部科学省中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」(第2部)(国語,社会,地理歴史,公民)P141「『社会的な見方・考え方』を働かせたイメージの例」平成28年8月26日[ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2016/09/09/1377021_1_3.pdf参照2017/05/10)

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