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タオルミーナ サミット記事に見る「数」の有用性とおもしろさ

サミット開催の記事が目を引きましたが,数字に秘密がありそうです。それは何でしょうか。
使い方を工夫した数字を掲載しているからです。

イタリア・タオルミーナサミット開催記事の紙面構成は工夫され,「サミット参加国の数」,「初参加の首脳の人数」,「サミットの参加回数」,「首脳の年齢」を表す数字を示すことで,力関係などの背景を推測できるようにしています。

数が表す個数,量の大きさ,数が表す順序性など,数の表し方や使い方を工夫すると,見えないものが見えてくるようになります。
これらは,数のよさ,数を活用する面白さといえます。







1 イタリア・タオルミーナ サミット開催の記事

主要7カ国首脳会議が5月26,27日イタリア・タオルミーナで開催されます。
その開催を報じる記事が,毎日新聞朝刊に掲載されました。
平成29年5月23日の毎日新聞西部版朝刊4面には,特集として,最上段横いっぱいに7人の首脳の顔写真が並びました。
一人当たり縦115mm×横55mmの写真です。
インパクトのある紙面構成です。
各首脳の顔写真の左上には,国旗(縦15mm×横20mm)が掲げられています。

出典:毎日新聞西部版朝刊4面「G7 結束に影 首脳会議 イタリア シチリア島で26,27日」平成29年5月23日

2 数字の力で読み解く

顔写真の右下には,当該首脳のサミット参加回数です。初めての首脳には「初」,安倍首相は「6回目」です。
下部には,10mmの帯状どりで「エマニュエル・マクロン仏大統領(39)」氏名と国名,役職及び年齢が記されています。
下部は,簡素にまとめられています。国名は,「英」,「仏」,「伊」,「独」,「米」で表記されていますが,カナダは「加」でなく「カナダ」と表記です。
さらに,写真の下部には,23mmの帯取りで,メイ英首相「16年7月就任」トランプ米大統領「1月就任」など就任年月と30文字程度のプロフィールが書かれています。

そのさらに下の中央には,メインタイトルの「G7 結束に影」が強調されています。
1文字28mm角の文字サイズで,見出しを飾っています。
筆者は,紙面を見ていると,7名の首脳の力関係や影響力,サミットの会議内容のまとまり具合を,自然に予想していました。
考え始めた大きな要因の一つは,数字による情報提供,数字の力があったからです。
試しに,新聞を折り曲げて数字の情報を隠すと,この記事に対する興味は,筆者は半減しました。

数字を隠した状態の顔写真だけでは,紹介の役割だけの情報に感じられます。
しかしながら,数字の情報が添付されると,数字から読み取れる国際政治の経験,人生経験など背景を想像するようになり,筆者はサミットの行方を読み解こうと意欲がわきました。

3 数の使い方の面白さ

毎日新聞の記事は,数字の使い方が,工夫されて実におもしろいのです。

(1)サミット参加国数

まず,サミット参加国数です。

G7の「7」は,集合数です。
イギリス,フランス,イタリア,ドイツ,日本,アメリカ,カナダ
United Kingdom,France,Italy,Germany,Japan,United States,Canada
という7つの要素の個数を表す数です。
7は,1桁の数であり,指折り数えられる少ない数です。
また,可否同数が起こらない奇数です。

「7」という数から,「7」カ国の先進国トップが集まる会議であることが,数字から分かります。

(2)初参加の首脳人数

次に目立つのが,1文字10mm角で,最上位の見出し「タオルミーナ・サミットには首脳4人が初参加する」
とある副見出しです。

首脳4人が初参加の「4」も集合数です。
7つの要素のうち,4つの要素が条件「初参加」の集合の要素です。
残り3つの要素は,その補集合です。
要素の個数で比較すると,4>3
4すなわち初参加の方が大きい。過半数を占める数です。

今年のサミットでは,初参加4カ国は大きな勢力です。
この初参加の4カ国が,
「一年目なので様子を見る」として,既存の首脳のリーダーシップに沿うか,
「初参加でしがらみがないから,言いたいことを言う」として,各国の立場の主張でまとまりにくくなるか,
などを考えさせる数です。
一般には,経験ある首脳のリーダーシップが発揮しやすい状況と考えられます。

(3)サミット参加回数

その次に目立つ数が,サミットへの首脳の参加回数です。

【グラフ1】タオルミーナサミット首脳の年齢と参加回数 数値は,毎日新聞西部版朝刊4面平成29年5月23日「G7 結束に影」より。グラフは,筆者作成。

参加回数は,順序数です。
第一位が,12回目のメルケル独首相です。
第二位が,6回目の我が国の安倍首相です。
第三位は,2回目のトルドー加首相です。
あと4人の首脳は初回で同じです。
【グラフ1】は,参加回数が多いと円が大きくなります。縦軸は,年齢が高いと位置が上がります。横軸は参加国名に対応しているだけで,数値に意味はありません。

メルケル首相が,ダントツで目を引きます。
安倍首相もかなりの経験値です。
この参加回数から力関係を推測すると,影響力の大きさは,メルケル首相と安倍首相が軸になりそうだと想像できます。
これらは,数字の上での話です。今般の世界情勢や首脳の政治力などには言及していません。

(4)首脳の年齢

次に目を引くのが,首脳の年齢です。
就任年月の情報も掲載されていますが,参加回数と数字の意味としては同じなのでそれは省きます。

平均年齢:57歳,標準偏差:10.1
年齢については,ジェンティローニ伊首相,メルケル独首相,安倍晋三首相が62歳で同じです。
メイ首相は,62歳の近傍-2歳の60歳。
トランプ大統領が最高齢です。
それでも62歳から,離れているのは8歳です。
これら5人の首脳は,おおよそ同年代に近いとみられます。
特異に若い年代として,マクロン仏大統領とトルドー加首相がいます。
この二人を外した平均年齢:63歳,標準偏差:3.6

年齢から見ても,日,独が中心に見えます。
伊,英,そして米が加わり,この年代が中心になりそうです。
前回サミットでは,トルドー加首相一人が若いという構図でしたが,マクロン仏大統領が加わり,若い世代が一つの勢力を作る可能性があります。

4 GDPの数字を加えて再度分析

【グラフ2】は,サミット参加国の首脳の年齢と参加回数に,GDP(2017年IMF推定値)の数値を加えたものです。

【グラフ2】タオルミーナサミット参加国首脳年齢・参加回数・GDP GDP数値の出典:International Monetary Fund, World Economic Outlook Database, October 2016 [ONLINE]http://www.imf.org/external/ns/cs.aspx?id=28(cf.2017/5/24)

円の大きさは,GDPの大きさを表します。円が大きいほど,GDPが大きくなります。
縦軸は,参加回数の多さを表します。上に位置するほど,参加回数が多くなります。
横軸は,年齢の高さを表します。右に位置するほど,年齢が高くなります。
アメリカのGDPは,G7GDP総合計に対する割合が53%。
続いて,日14%,独10%,英7%,仏7%,伊5%,加4%

GDPの数値を入れたこのグラフを見ると,アメリカのGDPの大きさが際立っています。かなり差はありますが,続いて大きいのは日本です。
トランプアメリカ大統領の経済面での影響力は,かなり大きいことが見えてきます。
日本とドイツは,それなりの影響力を発揮しそうです。

5 まとめ

数の使い方として,「サミット参加国の数」,「初参加の首脳の人数」,「サミットへの参加回数」,「首脳の年齢」を表す数字を示すことで,力関係などの背景を推測できるようになります。
数が表す個数,量の大きさ,数が表す順序性など,数の表し方や使い方を工夫すると,見えないものが見えてくるようになります。
これらは,数のよさ,数を活用する面白さといえます。
毎日新聞西部版の記事の表現方法はとても参考になります。

maru320i:
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