- 平成29年告示の中学校学習指導要領社会科の目標は,どのようなものでしょうか。
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※ 次期学習指導要領を見通した指導に資するため、「次期学習指導要領【社会科】における改訂の方向性と改善のポイント(2026-0522:追記)」の章を追加しています。ご参照ください。
中学校社会科では,「社会的な見方・考え方を働かせ,課題を追究したり解決したりする活動を通して,広い視野に立ち,グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な公民としての資質・能力の基礎」の育成を目指します。中学校社会科における社会的な見方・考え方は,
・ 社会的事象の地理的な見方・考え方,
・ 社会的事象の歴史的な見方・考え方,
・ 現代社会の見方・考え方です。
それらの見方・考え方を働かせ,多面的・多角的に考察,構想し,表現する学習が求められます。
掲載の趣旨
平成29年告示の学習指導要領では,資質・能力や内容などの全体像を分かりやすく見渡せるよう,枠組みが大きく見直され「学びの地図」として整理されました。
その趣旨に添い,本稿では,解説本文を次のように編集しています。
・ 目標解説の内容が捉えやすいように原文を装飾
・ 他教科等・他学校種の目標や解説が比較しやすように編集
具体的には,本文は原文通りで,次のように編集しています。
・ 各教科等の目標の解説を共通した章立てで構成
・ 学校種間の対応する内容についてリンクで移動 など
掲載の趣旨の詳細は,下のボタンより参照できます。
なお,本稿は,「文部科学省ウェブサイト利用規約」(2018年3月1日に利用)に基づいて,原本を加工し作成しています。
小学校・中学校各教科等の目標の解説 「小・中学校「教科等の目標解説を縦横に読む」シリーズ」は,下のボタンより閲覧できます。
次期学習指導要領【社会科】における改訂の方向性と改善のポイント
1. 次期学習指導要領【社会科】の方向性
次期学習指導要領における社会科・地理歴史科・公民科の改訂は、人口減少社会の深刻化、地理空間情報(GIS)や生成AIの普及、SNSの変容による「言説(言論や言動)」の多様化といった実社会の課題を真正面から見据えています。2025年9月に中央教育審議会が取りまとめた「論点整理」の基本方針に則り、2026年現在、国語や他教科と同様に「分かりやすく、使いやすい」指導要領への構造化が教育課程部会のワーキンググループ(以下、中教審社会科WG)で鋭意審議されています。現行の「見方・考え方」をベースに据えながらも、膨大な知識の暗記に終始しがちだったカリキュラムを精選し、生徒自らが問いを発見して解決へ向かう「探究学習の実装」と、現場の「指導・評価の負担軽減」の両立を目指す前向きな変革が進められています。
2. 改善のポイント
① 社会的な「見方・考え方」に「言説(言図・ディスコース)」の視点を追加【現在議論中】
- 最新の動向・議論: 中教審社会科WGの審議(2026年2月の第5回会議等)において、社会科を貫く中核概念である「社会的な見方・考え方」の定義をアップデートする案が示されました。具体的には、多様なメディアやSNS上に溢れる情報・主張を批判的に読み解くため、対象にまつわる「言説(言論や主張の背景・文脈)」に着目する視点が新たに加えられる方向です。
- 背景と内容: フェイクニュースの拡散や生成AIの日常化に直面する子供たちにとって、単に事実を調べるだけでなく、「その情報がどのような意図や文脈で語られているか(言説)」を問い直す力が不可欠であるという認識に基づいています。
② 「人口減少」や「地域社会の変化」を中核とした内容の再編【方針案】
- 最新の動向・議論: 小・中・高校の系統性を踏まえ、我が国最大の課題である「深刻な人口減少」や「地方・地域社会の構造変化」を学習内容の随所により明確に組み込む方針案が議論されています。
- 背景と内容: 2025年秋のWG発足時より、現実の社会課題との地続きの学びが最重視されてきました。地理的分野における地域調査の実施率低下や、歴史教育における近現代史の接続課題、公民的分野における主権者意識の形骸化を受け、実社会の存続や価値に関わるリアルな題材を通して「持続可能な社会の創り手」を育む内容構成へと再整理されます。
③ 地理歴史科・公民科における「探究プロセスの質」の向上と指導の精選【方針案】
- 最新の動向・議論: 現行課程で導入された高校の必履修科目「歴史総合」「地理総合」「公共」の枠組みや成果を継承しつつ、授業内の学習内容(暗記すべき細かな知識)をさらに「削減・精選」する大改革が進んでいます。
- 背景と内容: 2026年4月の教育課程審議の動向において、社会科全般でも「考えるための技法」の見直しがなされており、これまでの「問いを持たせる」段階から、論述・レポート・プレゼンテーション等による「成果の外化」へのプロセスをどう質的に高めるかが焦点となっています。知識を詰め込む時間を減らして「余白」を創出し、質の高い探究を保障する狙いがあります。
④ 指導目標・内容の「構造化」およびデジタル化への対応【確定・議論中】
- 最新の動向・議論: 2025年9月の「論点整理(素案)」以降確定している方針として、これまでの複雑な文章による指導要領の目標記述を改め、「表形式化」「構造化」を行います。
- 背景と内容: これにより、小学校の「地域・我が国の産業・歴史」から高校の「地歴・公民」に至るまで、どの学年でどの「概念」をどこまで深めればよいのか、教員が直感的に系統性を把握できるようになります。1人1台端末やデジタル教科書の活用を前提とし、デジタル上で他の教科(国語科の言語活動や情報科のデータ活用など)の指導目標とリンクさせやすい仕様への変更が議論されています。
⑤ 学習評価の頻度精選と「主体的に学習に取り組む態度」の見直し【現在議論中】
- 最新の動向・議論: 中教審の教育課程企画特別部会および社会科WGでは、教員の大きな負担となっている「記録に残す評価」の過度な頻度を見直す方向で議論を重ねています。
- 背景と内容: 「毎学期必ず3観点を数値化して評定を定める」という現行の運用が、かえって授業の余白を奪っているとの反省に基づくものです。社会科における「主体的に学習に取り組む態度」についても、単なる関心・意欲のポーズ(ノートの美しさや発言回数など)を見取るのではなく、生徒自らが社会課題に対して自律的に問いを修正していく「学習改善のプロセス」をいかにデジタル学習履歴(スタディ・ログ)等から見取るか、ガイドラインの具体化が進行しています。
3. 今後の改訂スケジュール
文部科学省のロードマップ(2026年5月時点)によると、次期学習指導要領は2026年度(令和8年度)末までに中央教育審議会としての最終答申をまとめる予定です。その後、2027年度(令和9年度)の告示を経て移行期間を挟み、小学校は2030年度、中学校は2031年度、高等学校は2032年度から順次全面実施(方針案)される見込みとなっています。
(※本原稿は2026年5月22日現在、文部科学省・中教審が公開している社会科・地歴・公民WG等の最新の審議動向に基づき作成されています。)
★ 以下の内容の記事を下記のリンク先に掲載しています。ご参照ください。
| Q | 次期学習指導要領において、社会科教育は、どのように改善されるのでしょうか。 |
| A | 予測困難な時代に対応するため、現行の知識偏重や過度な評価の負担を解消し、社会を生き抜く「真正の資質・能力」を育む教育へと構造転換を図ります。改善の重要ポイントは以下の4点に集約されます。 1. 「中核的な概念・方略」による指導内容の重点化: 単なる事実知識の暗記を削減し、社会的事象を多角的に分析するための構造的見方(例:地域社会の変化、人口減少問題)を指導の中心に据えます。 2. 「社会調査・地域調査」の確実な必修化と探究の深化: これまで学校現場で実施率の低さが課題だった地域調査をカリキュラムに確実に組み込み、実社会との接点を強化します。 3. デジタル学習基盤の前提化と情報教育の連動: GIGAスクール構想環境を活かし、統計データ(地理情報システム:GISなど)の高度な分析・活用能力を高めます。 4. 学習評価の抜本的合理化: 教員の負担となっていた「主体的に学習に取り組む態度」を「学びに向かう力、人間性等」の個人内評価へ移行させ、現場に「余白」を創出します。 |
中学校 社会科の目標
1 教科の目標
(1)目標
社会的な見方・考え方を働かせ,課題を追究したり解決したりする活動を通して,広い視野に立ち,グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な公民としての資質・能力の基礎を次のとおり育成することを目指す。
(1) 我が国の国土と歴史,現代の政治,経済,国際関係等に関して理解するとともに,調査や諸資料から様々な情報を効果的に調べまとめる技能を身に付けるようにする。
(2) 社会的事象の意味や意義,特色や相互の関連を多面的・多角的に考察したり,社会に見られる課題の解決に向けて選択・判断したりする力,思考・判断したことを説明したり,それらを基に議論したりする力を養う。
(3) 社会的事象について,よりよい社会の実現を視野に課題を主体的に解決しようとする態度を養うとともに,多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵(かん)養される我が国の国土や歴史に対する愛情,国民主権を担う公民として,自国を愛し,その平和と繁栄を図ることや,他国や他国の文化を尊重することの大切さについての自覚などを深める。
※ 平成20年中学校学習指導要領「社会」目標
「広い視野に立って,社会に対する関心を高め,諸資料に基づいて多面的・多角的に考察し,我が国の国土と歴史に対する理解と愛情を深め,公民としての基礎的教養を培い,国際社会に生きる平和で民主的な国家・社会の形成者として必要な公民的資質の基礎を養う。」
※ 平成10年中学校学習指導要領「社会」目標
「広い視野に立って,社会に対する関心を高め,諸資料に基づいて多面的・多角的に考察し,我が国の国土と歴史に対する理解と愛情を深め,公民としての基礎的教養を培い,国際社会に生きる民主的,平和的な国家・社会の形成者として必要な公民的資質の基礎を養う。」
※ 平成元年中学校学習指導要領「社会」目標
「広い視野に立って,我が国の国土と歴史に対する理解を深め,公民としての基礎的教養を培い,国際社会に生きる民主的,平和的な国家・社会の形成者として必要な公民的資質の基礎を養う。」
(2)目標の構成
社会的な見方・考え方を働かせ,課題を追究したり解決したりする活動を通して,広い視野に立ち,グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な公民としての資質・能力の基礎を次のとおり育成することを目指す。
教科目標のこの部分は,中学校社会科で育成を目指す目標のうち柱書として示された箇所であり,以降示された,「知識及び技能」,「思考力,判断力,表現力等」,「学びに向かう力,人間性等」という,育成を目指す資質・能力の三つの柱に沿った目標とともに,従前の目標の趣旨を継承するものとなっている。
この柱書は,前段と後段の二段階で構成されている。
前段は「社会的な見方・考え方を働かせ,課題を追究したり解決したりする活動を通して」という部分で,中学校社会科を含む社会科,地理歴史科,公民科の特質に応じた学び方を示している。
2 柱書
(1)見方・考え方
社会的な見方・考え方については,第1 章の2 において示したとおり,社会科,地理歴史科,公民科の特質に応じた見方・考え方の総称であり,
・ 社会的事象等の意味や意義,特色や相互の関連を考察したり,
・ 社会に見られる課題を把握して,その解決に向けて構想したり
する際の「視点や方法(考え方)」であると考えられる。
そして,社会的な見方・考え方を働かせるとは,そうした「視点や方法(考え方)」を用いて課題を追究したり解決したりする学び方を表すとともに,これを用いることにより児童生徒の「社会的な見方・考え方」が鍛えられていくことを併せて表現している。
こうした「社会的な見方・考え方を働かせ」ることは,
・ 社会科,地理歴史科,公民科としての本質的な学びを促し,
・ 深い学びを実現するための思考力,判断力の育成はもとより,
・ 生きて働く知識の習得に不可欠であること,
・ 主体的に学習に取り組む態度にも作用すること
などを踏まえると,資質・能力全体に関わるものであると考えられるため,柱書に位置付けられている。
また,中学校社会科における「社会的な見方・考え方」は,
・ 地理的分野における「社会的事象の地理的な見方・考え方」,
・ 歴史的分野における「社会的事象の歴史的な見方・考え方」,
・ その上に立つ公民的分野における「現代社会の見方・考え方」
を総称しての呼称であり,第1 章の2 において示したとおりである。
※ 「第1章の2」では,社会科,地理歴史科,公民科における「見方・考え方」について中教審答申(別添3‐4,別添3‐5)を参照としている。そこでは,次のように示されている。
【地理的分野】社会的事象の地理的な見方・考え方:社会的事象を,位置や空間的な広がりに着目して捉え,地域の環境条件や地域間の結び付きなどの地域という枠組みの中で,人間の営みと関連付けること。
【歴史的分野】社会的事象の歴史的な見方・考え方:社会的事象を,時期や推移などに着目して捉え,類似や差異などを明確にしたり,事象同士を因果関係などで関連付けたりすること。
【公民的分野】現代社会の見方・考え方:社会的事象を,政治,法,経済などに関わる多様な視点(概念や理論など)に着目して捉え,よりよい社会の構築に向けて,課題解決のための選択・判断に資する概念や理論などと関連付けること。
なお,小学校社会科については,「社会的な見方・考え方」は「社会的事象の見方・考え方」として「社会的事象を,位置や空間的な広がり,時期や時間の経過,事象や人々の相互関係に着目して捉え,比較・分類したり総合したり,地域の人々や国民の生活と関連付けたりすること。」と説明している。
中央教育審議会: 「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)別添資料 別添3-5」平成28年12月21日[ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2017/01/10/1380902_3_1.pdf(参照2018.3.29)
※ 【英訳(仮訳)】中学校学習指導要領では,「各教科等の特質に応じた物事を捉える視点や考え方(以下「見方・考え方」という。)」を「discipline-based epistemological approaches, hereinafter referred to as “Approaches”」と訳す。見方・考え方を“Approaches”で代表している。このことを考え合わせると見方・考え方の意味がより一層捉えやすくなる。すなわち,見方・考え方は,物事を認識するときの入り方,近づき方,せまり方と言い換えることができる。
引用:文部科学省「平成29年改訂中学校学習指導要領英訳版(仮訳)」[ONLINE]https://www.mext.go.jp/content/20200227-mxt_kyoiku02-100002604_2.pdf(cf:2020.05.26)
(2)学び方
次に,課題を追究したり解決したりする活動については,
単元など内容や時間のまとまりを見通して学習課題を設定し,諸資料や調査活動などを通して調べたり,思考・判断・表現したりしながら,社会的事象の特色や意味などを理解したり社会への関心を高めたりする学習などを指している。
こうした学習は,従前から「適切な課題を設けて行う学習」として,その充実が求められており,「課題を追究したり解決したりする活動」はそれと趣旨を同じくするものである。
そこでは,主体的・対話的で深い学びが実現されるよう,生徒が社会的事象等から学習課題を見いだし,課題解決の見通しをもって他者と協働的に追究し,追究結果をまとめ,自分の学びを振り返ったり新たな問いを見いだしたりする方向で充実を図っていくことが大切である。
三つの柱に沿った資質・能力を育成するためには,生徒が課題を追究したり解決したりする活動の一層の充実が求められる。
それらはいずれも「知識及び技能」を習得・活用して思考・判断・表現しながら課題を解決する一連の学習過程において効果的に育成されると考えられるからである。
そのため「課題を追究したり解決したりする活動を通して」という文言が目標に位置付けられている。
次に,後段は「広い視野に立ち,グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な公民としての資質・能力の基礎を次のとおり育成することを目指す」という部分で,
「広い視野に立ち」という部分を除けば,小学校及び中学校の社会科の共通のねらいであり,小学校及び中学校における社会科の指導を通して,その実現を目指す究極的なねらいを示している。
(3)資質・能力
① 広い視野に立ち
広い視野に立ちについては,
従前を引き継ぎ,社会科の学習が目指している
・ 多面的・多角的に事象を捉え,考察することに関わる意味と,
・ 国際的な視野という空間的な広がりに関わる意味の
二つが含まれている。
小学校社会科から中学校社会科へと接続していく過程で,中学校社会科は分野別の構造になっており,社会的事象を多面的・多角的に考察することや複数の立場や意見を踏まえて構想(選択・判断)することなどが求められている。また,学習対象も小学校以上に世界へと広がりを見せる。こうした点を踏まえて,中学校社会科においては,その特質である各分野ならではの視野,国内外の社会的事象等を取り扱う地球的な視野をもつことが期待されている。
② 公民としての資質・能力の基礎
グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な公民としての資質・能力の基礎を次のとおり育成することを目指すの部分は,
目標の(1)から(3)までにそれぞれ示された資質・能力を育成することが,「グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者」に必要とされる「公民としての資質・能力の基礎」を育成することにつながることを示している。
なお,ここでいう「公民としての資質・能力の基礎」とは,
小・中学校社会科の目標に一貫した表現であり,社会科の究極のねらいを示している。
このうちの「公民としての資質・能力」が,平成21 年改訂の高等学校学習指導要領公民科の目標に示されている「平和で民主的な国家・社会の有為な形成者として必要な公民としての資質を養う」ことの趣旨を一層明確にするとともに,人,商品,資本,情報,技術などが国境を越えて自由に移動したり,組織や企業など国家以外の様々な集合体の役割が増大したりしてグローバル化が一層進むことが予測されるこれからの社会において,教育基本法,学校教育法の規定を踏まえ,国家及び社会の形成者として必要な資質・能力を育成することの大切さへの意識をもつことを期待してこのような表現へと整理したものである。
また,これまで「小学校学習指導要領解説 社会編」で「公民的資質」として説明してきた,
「平和で民主的な国家及び社会の形成者としての自覚をもち,自他の人格を互いに尊重し合うこと,社会的義務や責任を果たそうとすること,社会生活の様々な場面で多面的に考えたり,公正に判断したりすること」
などの態度や能力や,「高等学校学習指導要領解説 公民編」で「公民としての資質」として説明してきた,
「現代の社会について探究しようとする意欲や態度,平和で民主的な国家・社会の有為な形成者として,社会についての広く深い理解力と健全な批判力とによって政治的教養を高めるとともに物心両面にわたる豊かな社会生活を築こうとする自主的な精神,真理と平和を希求する人間としての在り方生き方についての自覚,個人の尊厳を重んじ各人の個性を尊重しつつ自己の人格の完成に向かおうとする実践的意欲」
を基盤とし,
「これらの上に立って,広く,自らの個性を伸長,発揮しつつ文化と福祉の向上,発展に貢献する能力と,平和で民主的な社会の実現,推進に向けて主体的に参加,協力する態度」
などは,「平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者に必要な資質・能力」であると考えられることから,今後も「公民としての資質・能力」に引き継がれるものである。
3 三つの柱
(1)知識及び技能
我が国の国土と歴史,現代の政治,経済,国際関係等に関して理解するとともに,調査や諸資料から様々な情報を効果的に調べまとめる技能を身に付けるようにする。
① 知識・理解
我が国の国土と歴史,現代の政治,経済,国際関係等については,
中学校社会科で扱う学習対象を示し,それらに関して理解するとは,単に知識を身に付けることではなく,基礎的・基本的な知識を確実に習得しながら,既得の知識と関連付けたり組み合わせたりしていくことにより,学習内容の深い理解と,個別の知識の定着を図るとともに,社会における様々な場面で活用できる,概念などに関する知識として獲得していくことをも示している。
② 技能
調査や諸資料から様々な情報を効果的に調べまとめる技能を身に付けるについては,
・ 調査活動や諸資料の活用など手段を考えて課題の解決に必要な社会的事象に関する情報を収集する技能,
・ 収集した情報を社会的な見方・考え方を働かせて読み取る技能,
・ 読み取った情報を課題解決に向けてまとめる技能
を身に付けることを意味している。
これらの技能は,単元など内容や時間のまとまりごとに全てを身に付けようとするものではなく,資料の特性等とともに情報を収集する手段やその内容に応じて様々な技能や留意すべき点が存在すると考えられる。
そのため,小学校の社会科での学習を踏まえるとともに,高等学校の地理歴史科,公民科での学習を視野に,中学校社会科の学習において生徒が身に付けることが目指される技能を繰り返し活用し,その習熟を図るように指導することが大切である(巻末の参考資料を参照)。
(2)思考力,判断力,表現力等
社会的事象の意味や意義,特色や相互の関連を多面的・多角的に考察したり,社会に見られる課題の解決に向けて選択・判断したりする力,思考・判断したことを説明したり,それらを基に議論したりする力を養う。
① 思考力「多面的・多角的に考察」
社会的事象の意味や意義,特色や相互の関連を多面的・多角的に考察…する力については,
社会的事象個々の仕組みや働きを把握することにとどまらず,その果たしている役割や事象相互の結び付きなども視野に,様々な側面,角度から捉えることのできる力を示している。
このうちの「多面的・多角的に考察」するとは,
・ 学習対象としている社会的事象自体が様々な側面をもつ「多面性」と,
・ 社会的事象を様々な角度から捉える「多角性」と
を踏まえて考察することを意味している。
② 判断力「選択・判断,構想」
社会に見られる課題の解決に向けて選択・判断…する力については,
現実社会において生徒を取り巻く多種多様な課題に対して,
・ 「それをどのように捉えるのか」,
・ 「それとどのように関わるのか」,
・ 「それにどのように働きかけるのか」
といったことを問う中で,それらの課題の解決に向けて自分の意見や考えをまとめることのできる力を意味している。
このことに関連して,中学校社会科においては,学習指導要領の内容において「選択・判断」とともに「構想」の表記を用いている箇所があることに留意する必要がある。
これは,平成24 年12 月に文部科学省に設置され,平成26 年3 月に論点整理を取りまとめた「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会」における検討の方向性を踏まえるとともに,今回の中央教育審議会答申の第1 部の第2 章「2030 年の社会と子供たちの未来」において,
「(前略)このような時代だからこそ,子供たちは,変化を前向きに受け止め,私たちの社会や人生,生活を,人間ならではの感性を働かせてより豊かなものにしたり,現在では思いもつかない新しい未来の姿を構想し実現したりしていくことができる」
と示されたことなどを受けて,社会科,地理歴史科,公民科においては,中央教育審議会答申の第2 部の第2 章「各教科・科目等の内容の見直し」の2「社会,地理歴史,公民」において,
「『社会的な見方・考え方』は,課題を追究したり解決したりする活動において,社会的事象等の意味や意義,特色や相互の関連を考察したり,社会に見られる課題を把握して,その解決に向けて構想したりする際の視点や方法であると考えられる」
と示されたことを踏まえている。
このような中央教育審議会答申の記載を踏まえ,中学校学習指導要領社会科においては,各分野にわたりその内容において「…について多面的・多角的に考察,構想し,表現すること」などと示している。
③ 表現力
思考・判断したことを説明したり,それらを基に議論したりする力については,
考察,構想(選択・判断)したことを,資料等を適切に用いて論理的に示したり,その示されたことを根拠に自分の意見や考え方を伝え合い,自分や他者の意見や考え方を発展させたり,合意形成に向かおうとしたりする力であると捉えられる。
(3)学びに向かう力,人間性等
社会的事象について,よりよい社会の実現を視野に課題を主体的に解決しようとする態度を養うとともに,多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵(かん)養される我が国の国土や歴史に対する愛情,国民主権を担う公民として,自国を愛し,その平和と繁栄を図ることや,他国や他国の文化を尊重することの大切さについての自覚などを深める。
社会的事象について,よりよい社会の実現を視野に課題を主体的に解決しようとする態度については,
・ 社会的事象について主体的に調べ分かろうとして学習上の課題を意欲的に解決しようとする態度や,
・ よりよい社会の実現に向けて,多面的・多角的に考察,構想(選択・判断)したことを社会生活に生かそうとする態度
などを意味している。
我が国の国土や歴史に対する愛情,国民主権を担う公民として,自国を愛し,その平和と繁栄を図ることや,他国や他国の文化を尊重することの大切さについての自覚については,
いずれも我が国の国土と歴史,現代の政治,経済,国際関係等についての多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵(かん)養されるものであり,既述の資質・能力を含む三つの柱に沿った資質・能力の全てが相互に結び付き,養われることが期待される。
出典:文部科学省「中学校学習指導要領解説社会編 第2章 社会科の目標及び内容 第1節 教科の目標」平成29年6月[ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2017/12/04/1387018_3.pdf(参照2018/03/29)を加工して作成
平成29年7月版[ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/05/07/1387018_3_1.pdf(cf:2018-12-15)確認済み