- 次期学習指導要領では、小・中学校の授業時間数の取り扱いはどう改善されるか。
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次期学習指導要領(令和10年代初頭導入予定)では、平成29年改訂による時数増加や必修化で過密化したカリキュラムを改善するため、小・中学校ともに「年間の標準総授業時数をこれ以上増やさない」方針が掲げられている。
現在の中央教育審議会(中教審)の審議経過では、学校現場の負担軽減と柔軟な教育課程の編成に向けて、主に以下の「時間数の弾力化」が検討されている。
1. 「5分短縮授業」の導入
現在の1コマ(小学校45分、中学校50分)を5分ずつ短縮し、年間で約100〜127コマ分に相当する「余白の時間」を生み出して探究学習や学校裁量に充てる。
2. 「調整授業時数制度」の導入
すべての指導内容の網羅を前提としつつ、国が定める標準時数から1割程度を減じて教育課程を編成できる仕組みである。文部科学省としては、授業時間の短縮が授業の詰め込みを招かないよう、時間数の見直しと一体で「学習内容の精選(スリム化)」を断行し、教員の働き方改革と子供たちの深い学びの両立を推進する方針だ。
1 予想される受業時数等
次期学習指導要領の見直し案に基づき、小中学校の現行の授業時数と、今後予想される次期カリキュラムでの時間数(5分短縮・調整授業時数制度導入時)の想定イメージを一覧表にまとめると以下のようになります。(2026年5月17日現在)
次期改訂の最大の方針である「年間の標準総授業時数(コマ数)はこれ以上増やさない」 を前提とした比較です。
1. 【一覧表】現行と次期学習指導要領における授業時数の想定比較
| 区分・学年 | 現行の標準 (平成29年告示) | 次期学習指導要領の想定案 (令和10年代初頭予定) | 変更による効果・現場の裁量 |
|---|---|---|---|
| 小学校 1コマの長さ | 45分 | 40分 (5分短縮案) | 年間で約85時間(5,075分)の「余白」が生まれ、学校裁量の時間に充てられる。 |
| 小学校 1年生 | 850コマ | 850コマ (総枠維持) | 左記の総コマ数のうち、約1割(約85コマ分)は各教科から融通して独自の探究活動等に使える(調整授業時数)。 |
| 小学校 2年生 | 910コマ | 910コマ (総枠維持) | 同上(約91コマ分を学校の裁量で調整可能)。 |
| 小学校 3年生 | 980コマ | 980コマ (総枠維持) | 同上(約98コマ分を学校の裁量で調整可能)。 |
| 小学校 4〜6年生 | 各1,050コマ | 各1,050コマ (総枠維持) | 同上(各学年約105コマ分を学校の裁量で調整可能)。 |
| 中学校 1コマの長さ | 50分 | 45分 (5分短縮案) | 年間で約85時間(5,075分)の「余白」が生まれ、個別学習や探究に充てられる。 |
| 中学校 1〜3年生 | 各1,015コマ | 各1,015コマ (総枠維持) | 左記の総コマ数のうち、約1割(約100コマ分)は主要教科等から減じて独自カリキュラムに充てられる。 |
2. 運用のポイント
総コマ数は変わらない:
年間で受ける授業の「コマ数(回数)」そのものは維持されます。
「実質的な授業時間」の減少と余白:
1コマが5分短縮されることで、子どもたちが従来の教科書をそのまま座学で習う総時間は年間で約85時間分減ります。この浮いた時間が、学校が自由にデザインできる「裁量的な時間(探究学習や補習など)」に変わります。
調整授業時数制度による1割の融通:
さらに各教科(外国語、数学、算数、国語など)の縛りが緩くなり、指導内容を効率よく終わらせることができれば、最大1割以上のコマ数を別の教育活動(教科新設や地域連携など)へ自由に組み替えることができるようになります。
3. 留意点
1) 「5分短縮」の法的な位置づけについて
- 現行制度の周知徹底、および指導要領総則での明記強化という形で進められています。
- 実は、現行の学校教育法施行規則でも「1単位時間は小学校45分、中学校50分」はあくまで計算上の標準例であり、学校の裁量で40分や45分に短縮することは現法制上も可能です。
しかし、現場への認識が十分に浸透していない実態がありました。
そのため次期学習指導要領では、総則において「単位授業時間は各学校で柔軟に設定可能であること」を一層明確に示し、弾力化を促す方針で合意がなされています。
2) 「調整授業時数制度」の最新の具体化
- 各教科の標準時数を「1割以上」調整(削減)可能とする新制度の創設に向けて、先行実施が始まっています。
- 中教審の論点整理において、すべての学校が独自に教科時数を調整し、「裁量的な時間」を生み出せるよう、現行の「授業時数特例校制度」などを発展・統合した【調整授業時数制度】の創設が固まりました。
- 制度の円滑な導入に向け、文部科学省は一部の公立小中学校において教育課程の柔軟化を先行実施(先行モデル事業)させており、現場の実践知を蓄積した上で次期指導要領の基準へ反映させる段取りをとっています。
3) 「標準授業時数(総枠)」と「授業週数」の見直し
- 「総コマ数の上限(小学校1,050、中学校1,015)」はこれ以上増やさない方針です。
- 前回の平成29年改訂のような「英語・道徳の導入にともなう一律の上乗せ」は、現場の過密化を招いたため完全に否定されています。
また、最新の審議では、総則にある「年間35週以上」という授業週数の示し方も実態に合わせて見直され、週当たりの授業時数が児童生徒の過重な負担にならないよう配慮することが検討材料に加わっています。
2 小学校授業時数の改善
次期学習指導要領(令和10年代初頭導入予定)では、平成29年改訂のような「外国語教育等の導入にともなう時数の一律増加」を行わず、「年間の標準総授業時数をこれ以上増やさない」方針が掲げられています。
現在の中央教育審議会の審議経過では、学校現場の負担軽減と柔軟な教育課程の編成に向けて、主に以下の「時間数の弾力化」が検討されています。
- 「40分授業」への短縮:現在の1コマ45分から5分短縮し、年間で約127コマ分の「余白の時間」を生み出し学校裁量に充てる。
- 「調整授業時数」の導入:指導内容の網羅を前提としつつ、国が定める標準時数から1割程度を減じて編成できる仕組み。
これら時間数の見直しに合わせ、授業時間の短縮が教員の過密化を招かないよう「学習内容の精選(スリム化)」を一体的に進め、現場の働き方改革と児童の深い学びの両立を図ります。
次期学習指導要領(令和10年代初頭の全面実施を視野に、中央教育審議会等で議論が進められている改訂)に向けた、小学校の授業時数および時間数の取り扱いについて、文部科学省の検討状況を解説します。
1. 次期学習指導要領における時間数管理の基本方針
中央教育審議会(中教審)への諮問および現在までの審議経過において、次期改訂の最大の方針は「年間の標準総授業時数をこれ以上増加させない」 ことです。
平成29年告示(2020年度完全実施)の改訂では、小学校3〜6年生の年間総授業時数が一律「35コマ」上乗せされ、高学年では年間1,015コマ(週当たり約29コマ相当)に達しました。
これが学校現場の過密化や教員の長時間労働の一因となっているとの指摘を受け、次期改訂では一転して「ゆとりと柔軟性の確保」へと舵を切っています。
2. 現在検討されている具体的な「時間数」の弾力化策
現在、ワーキンググループや特別部会等の中間報告・審議経過において、主に以下の2つの画期的な見直しが骨子として浮上しています。
① 1コマの授業時間を「45分」から「40分」へ短縮 [6]
- 内容:現在、学校教育法施行規則等で小学校の1コマの標準は「45分」と定められていますが、これを「40分」へ5分短縮する案が検討されています。
- 狙い:年間の総授業時数(コマ数)そのものは維持しつつ、1コマを5分短縮することで、高学年であれば年間で約127コマ分に相当する「余白の時間」を生み出します。
- 活用方法:生み出された時間は、各学校の裁量により、児童の興味・関心に応じた探究学習、補習、地域連携活動、あるいは教員の授業準備・負担軽減へと弾力的に充てられます。
② 「調整授業時数制度」および「裁量的な時間」の導入
- 内容:各教科の指導内容(学習指導要領に定められた教育内容)はすべて網羅することを前提としつつ、国が定める標準時数から1割程度(またはそれ以上)を減じて教育課程を編成できる仕組みです。
- 外国語・英語への影響:平成29年改訂で倍増した5・6年生の「外国語科(年間70コマ)」や3・4年生の「外国語活動(年間35コマ)」についても、一律に時間を縛るのではなく、学校の裁量によって時数を調整し、他教科との統合的な学習や、モジュール時間(10〜15分の短時間学習)への置き換えをより認めやすくする方向で議論されています。
3. 文部科学省としての検証と今後の課題
この「時間数の取り扱いの見直し」には、現場から歓迎の声がある一方で、省内および専門家からいくつかの課題が提起され、慎重な制度設計が進められています。
- 指導内容の削減(スリム化)との連動:
授業時間を「45分から40分」に短縮、あるいは「調整授業時数」を導入しても、教科書の内容や教えるべき総量がそのままであれば、現場の教員は「短い時間で同じ量を教え込まなければならない」という二重の負担を強いられます。そのため、時間数の削減だけでなく、学習内容自体をいかに本質的なものへと精選(スリム化)するかが現在ワーキンググループの主眼となっています。 - 学力定着への懸念への対応:
授業時間が短縮されることで、児童の基礎的・基本的な学力(特に外国語科における「読み・書き」や算数の演習など)の定着に影響が出ないよう、効果的なデジタル教科書の活用や、主体的・対話的で深い学びの質的向上が前提となります。
4. まとめ:小学校
次期学習指導要領では、平成29年告示のような「英語導入にともなう時数の一律増加」 ではなく、「40分授業への短縮」や「調整授業時数」の導入を通じた【学校裁量の拡大】と【教育課程の柔軟化】 が柱となります。文部科学省としては、現場の負担軽減(働き方改革) と児童の学びの質向上を両立させるため、審議をさらに深めてまいります。
3 中学校授業時数の改善
次期学習指導要領(中学校)では、平成29年改訂で英語や道徳の拡充により過密化したカリキュラムを反省し、「年間の標準総授業時数を増やさない」方針のもと、学校現場の負担軽減と柔軟な教育課程の編成に向けて「時間数の弾力化」が検討されています。
審議経過における主な柱は以下の2点です。
- 「45分授業」への短縮:現在の1コマ50分から5分短縮し、年間約100コマ分の「余白の時間」を生み出して探究学習や学校裁量に充てる。
- 「調整授業時数」の導入:指導内容の網羅を前提としつつ、標準時数から1割程度を減じて編成できる仕組み。
授業時間の短縮が授業の詰め込みを招かないよう、時間数の見直しと一体で「学習内容の精選(スリム化)」を断行し、教員の働き方改革と生徒の質の高い学びの両立を推進します。
旧課程(平成29年告示)における中学校の授業時数変更点と、それを踏まえた次期学習指導要領(令和10年代初頭導入予定)の検討状況について、文部科学省の審議経過を基に解説します。
中学校における授業時数の変遷と次期改訂の方向性
1. 平成29年告示(2021年度完全実施)における変更点
小学校のような外国語科の新設(時数増)とは異なり、平成29年改訂時の中学校は、年間総授業時数 1,015コマ(1コマ50分・週29コマ相当)の枠組み自体は据え置かれました。しかし、各教科の内訳が以下のように変更されました。
- 英語(外国語)の充実:週3コマから週4コマ(年間140コマ)へ増加しました。
- 道徳の教科化:「特別な教科 道徳」として年間35コマが編成内に位置づけられました。
- 時数調整の工夫:総枠(1,015コマ)を維持するため、従前の「選択教科」に充てられていた時間や各校の裁量時間が削られ、実質的に全生徒共通の必修コマが限界まで詰め込まれる形となりました。
2. 次期学習指導要領における時間数管理の基本方針
中央教育審議会(中教審)のワーキンググループ等における現在の最大の方針は、小学校と同様に 「年間の標準総授業時数(1,015コマ)をこれ以上増加させない」 ことです。
必修教科が過密化した結果、学校現場の硬直化や教員の長時間労働が限界に達しているため、次期改訂では 「ゆとりと柔軟性の確保」 へと大きく舵を切っています。
3. 現在検討されている具体的な「時間数」の弾力化策
現在の中間報告や審議経過において、中学校向けに提示されている主な見直しは以下の通りです。
① 1コマの授業時間を「50分」から「45分」へ短縮
- 内容:学校教育法施行規則等で定められている中学校の1コマの標準「50分」を、「45分」へ5分短縮する案が検討されています。
- 狙い:年間の総授業時数(コマ数)は維持しつつ、1コマを5分短縮することで、年間で約100コマ分に相当する「余白の時間」を生み出します。
- 活用方法:生み出された時間は、総合的な学習の時間(探究学習)の拡充、生徒の個別最適な学び(補習や発展学習)、部活動とのバランス調整、および教員の授業準備の時間へと弾力的に充てられます。
② 「調整授業時数制度」の導入
- 内容:学習指導要領に定められた指導内容はすべて網羅することを前提としつつ、国が定める各教科の標準時数から、学校の裁量で1割程度を減じて教育課程を編成できる仕組みです。
- 外国語(英語)等への影響:週4コマ(年間140コマ)となっている英語などの主要教科についても、デジタル教材の活用等を前提に効率化し、浮いた時数を他教科との教科横断的な学習や探究活動に充てることが可能になります。
4. 今後の課題
この弾力化には現場から期待が寄せられる一方、以下の課題について慎重な制度設計が進められています。
- 「学習内容の精選(スリム化)」との連動:
授業時間を「50分から45分」に縮めても、教科書の情報量や指導項目がそのままであれば、現場は「短い時間で同じ量を詰め込む」ことになり、授業の質が低下します。そのため、時間数の見直しと同時に、指導内容自体の精選(スリム化)が不可欠であり、現在各教科のワーキンググループで「本当に教えるべき本質的な内容」の絞り込みが進められています。 - 高校入試への影響と学力確保:
授業時数が柔軟化されることで、地域や学校間での学習進度の差や、高校入試対策への影響が出ないよう、評価方法や入試制度との整合性を図る必要があります。
まとめと出典
次期改訂は「学習量の詰め込み(量)」から「柔軟性とゆとりの確保による学びの質的向上」への大転換となります。
1コマ5分短縮によって生まれる「年間約85時間の余白」や「調整授業時数」は、単なる休み時間ではなく、デジタル教科書を活用した個別最適な学びや、地域と連携した総合的な探究学習へと還元されます。
授業時間を短縮しても教育の質を落とさないよう、文部科学省は「教科書・学習内容自体の精選(スリム化)」を中央教育審議会のワーキンググループ等で一体的に検証し、制度設計を進めています。
1. 授業時数の弾力化・5分短縮授業に関する根拠
- 文部科学省:余白の創出を通じた教育の質の向上(PDF)
- 1単位時間を「45分から40分」へ短縮することで、指導内容を精選しながら「裁量的な時間」をいかに捻出するか、その構造的な関係が図解されている基本資料です。
- 文部科学省:柔軟な教育課程編成の促進について(PDF)
- 実際に1単位時間を「45分から40分」に変更し、午前中に5コマの授業を実施することで「余白の時間」を生み出している全国の自治体(目黒区など)の先行事例やタイムスケジュールの実例がまとまっています。
2. 「調整授業時数制度」の創設と1割削減に関する根拠
- 文部科学省:調整授業時数制度等の具体化について(PDF)
- 中教審の「教育課程企画特別部会」に提出された最新の具体的な検討資料です。現行の授業時数特例校制度を発展・統合し、各教科の標準時数から「1割以上」を削減・調整可能にすることで、小学校で最大85コマ、中学校で最大76コマの「裁量的な時間」を生み出す仕組みが明記されています。