- 次期学習指導要領改訂や校務DXの推進を見据え、2学期制の公立小学校における教務主任に求められる役割や具体的な年間業務、および学校現場のミドルリーダーとして発揮すべき理想のリーダーシップとは何か。
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公立小学校の教務主任は、学校教育法施行規則第44条に基づき、教育計画の立案や教務の連絡調整を担う。次期学習指導要領改訂やGIGAスクール構想第2ステージを見据え、その職務には「カリキュラム・マネジメント」と「校務DXの推進」が強く求められている。
2学期制における年間業務は、4月の教育課程編成、5〜6月のCBT調査対応や研究授業、9〜10月の前期評価・後期始業処理、3月の指導要録点検と多岐にわたる。各月最低4つ以上の重要業務を統括し、行事の精選による働き方改革の推進役も務める。
これからの教務主任は、単なる時間割の作成者にとどまらず、管理職の補佐役(ミドルリーダー)として機能すべきである。一斉授業から「個別最適な学びと協働的な学び」への転換を支え、教職員のウェルビーイングを保ちながら全校体制で教育の質を高める、未来志向のリーダーシップが期待されている。
本稿の概要
2学期制(前後期制)を導入する公立小学校において、教務主任は校長を補佐し、教育計画の立案や教務の連絡調整を担う要の存在である。
2027年度の次期学習指導要領告示と2030年度の全面実施を見据えた現在、その役割は従来の事務処理から「カリキュラム・マネジメントの核」へと転換している。
求められる資質は、中教審の論点整理等でも重視される「次世代校務DX推進力」と、授業改善を導く「ミドルリーダーとしての対話能力」だ。
年間業務は4月の教育課程編成から始まり、5月のCBT学力調査環境整備、9〜10月の前期評価(通知表)と後期日課調整、2〜3月の新年度時間割編成や指導要録点検へと連なる。2学期制の柔軟な枠組みを活かし、肥大化した行事や会議を精選するブレーキ役も担う。
教務主任が校務の効率化と「個別最適な学びと協働的な学び」を両立させるリーダーシップを発揮することで、教員のウェルビーイングと教育の質が向上する。前例踏襲を排し、全校体制で持続可能な学校組織を創り出すことが、令和の日本型学校教育を牽引する教務主任の理想像である。
これまで推敲を重ねてきた「2学期制(前後期制)小学校における教務主任の役割と実務」に関する全5章の原稿を、文脈の整合性と最新の教育行政動向(2025年9月中教審論点整理等)を厳密に検証した上で、完全に1つの論説として結合・整理しました。
教育専門誌の論説や教育委員会向けの公用文書として、そのままシームレスに活用できる完結版の原稿です。
1. 教務主任の役割と期待される関わり方
学校教育法施行規則第44条に基づき、公立小学校における教務主任は、校長(および教頭)を補佐し、「教育計画の立案や教務の連絡調整・指導助言」を担う要職である。現在、中央教育審議会(中教審)において議論が大詰めを迎えている次期学習指導要領(2027年度告示予定、2030年度全面実施方針)を見据え、その役割は単なる事務処理の枠組みを超え、「カリキュラム・マネジメントの核」へと転換している。
期待される役割とは、学校教育目標を具現化するために、全教科・領域の教育課程を俯瞰し、組織的な授業改善を主導することである。特に2学期制(前後期制)のメリットである柔軟な時間割編成や、長期的なスパンでの児童の見取りを活かし、単なる「時間割の配分者」ではなく、「学びのデザイナー」として機能することが期待される。教員の働き方改革を推進しつつ、限られた授業時数の中で教育効果を最大化するために、校長・教頭の強力な補佐役(ミドルリーダー)として学校経営方針を現場に浸透させることがその本質である。
2. 必要な教務主任の資質・能力
令和7年(2025年)9月に公表された中教審・教育課程企画特別部会の「論点整理」や、GIGAスクール構想第2ステージの動向を踏まえると、現代の教務主任には、旧来の学校管理能力に加え、以下のような高度な資質・能力が不可欠である。
第一に、「次世代校務DX推進力とデータリテラシー」である。統合型校務支援システムの共同調達や、文部科学省が推進するCBT(Computer Based Testing)調査への対応など、学校のデジタル基盤を理解し、教職員の業務効率化とデータに基づく教育課程評価を先導する能力が求められる。
第二に、「ミドルリーダーとしての調整・対話能力(ファシリテーション能力)」である。ベテランから若手まで多様な教職員の声を傾聴しつつ、時には教科や学年間の利害関係を調整し、組織を1つのベクトルへと導く合意形成力が必須となる。
第三に、「先見的な教育課程編成能力」である。2024年12月の文科大臣諮問「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」にある通り、新設される領域や探究的な学びの時間を時間割の中に構造化できる論理的思考力が求められる。
3. 一年間の業務(2学期制・前後期制における教務主任の動向)
【4月(前期始業)】
- 教育課程の最終確定と各種届出
- 業務内容:校長の経営方針に基づき、新年度の時数計画や週時程、教育課程実施届を確定し、教育委員会へ提出する。
- 関わり方:単なる書類作成にとどめず、次期学習指導要領を見据えた「情報領域」や「CBT調査」の環境整備について、全職員とビジョンを共有する。
- 年間行事予定および月間行事予定の作成・共有
- 業務内容:年間・月間の学校行事や職員会議、研修のスケジュールを精策し、学校暦として確定させる。
- 関わり方:業務精選の観点から行事の重複を排除し、働き方改革と子どもの「個別最適な学び」の時間を両立させる視点で行事を統括する。
- 校内分掌組織・会議体の立ち上げと調整
- 業務内容:校内分掌(教務、生活指導、研究等)の構成員を調整し、各種委員会や学年主任会議の年間計画を承認する。
- 関わり方:各部・学年間の縦横の風通しを良くし、組織が自律的に駆動するためのコーディネーターとして、ミドルリーダーシップを発揮する。
- 学校説明会・PTA総会等に関わる文書作成と調整
- 業務内容:保護者や地域向けの学校説明会、新年度のPTA組織との連携に必要な公文、配布資料の調整を行う。
- 関わり方:開かれた学校経営を具現化するため、地域学校協働活動との接続を意識した情報発信の枠組みを構築する。
【5月】
- 教育課程の進捗管理(第1次時数チェック)
- 業務内容:各学年・教科の授業時数の進捗状況(消化時数)を集計・確認し、予定との乖離がないか点検する。
- 関わり方:時数の不足・過多が生じた学年に対し、行事の振替や時間割の再編を先手で提案し、教員の精神的・時間的負担を軽減する。
- 全国学力・学習状況調査(CBT対応)等の実施と環境管理
- 業務内容:文部科学省の実施要項に準拠し、1人1台端末を活用したCBT調査のネットワーク環境や端末の不具合解消を主導する。
- 関わり方:ICT主任や外部技術員と密に連携し、「次世代校務DX・デジタル学習基盤」の安定運用を校内で実証・周知する。
- 前期指導参観・保護者会の全体調整
- 業務内容:前期最初の授業参観、学級・学年懇談会の運営計画、時程、案内文書の審査を行う。
- 関わり方:一斉授業から「協働的な学び」へと転換しつつある授業の現在地を、保護者へ正しく理解してもらうための演出・意図を授業者に助言する。
- 教育実習生の受け入れ準備と指導体制の構築
- 業務内容:教育実習生(6月受け入れ等)の指導教諭の決定、実習カリキュラム、講話担当の計画を作成する。
- 関わり方:次世代の教員育成を見据え、校内全体で実習生を温かく育て、かつ受け入れ側の負担が一部に偏らない分掌配置を行う。
【6月】
- 校内研究授業・公開研究会の組織的運営
- 業務内容:研究主任と連携し、研究主題に沿った授業公開、研究協議会の時間割変更や会場設営、指導助言者の招聘を行う。
- 関わり方:教科横断的な探究の視点や、デジタル教科書の効果的活用など、次期指導要領の核となる授業改善の方向性へと職員の意識を誘導する。
- 学校評価(前期中間評価・アンケート)の設計
- 業務内容:前期の折り返しを前に、児童、保護者、教職員を対象とした学校評価(中間アンケート等)の設問設計や実施計画を立案する。
- 関わり方:形骸化したアンケートを見直し、次期改訂で重視される「自らの人生を舵取りする力」や「多様性の包摂」が育まれているかを測る指標を導入する。
- 夏季休業中の教職員研修・校務計画の策定
- 業務内容:7〜8月の夏季休業中に実施する10年経験者研修、校内専門研修、および職員作業等のスケジュールを確定する。
- 関わり方:研修の厳選とオンライン活用を推進し、教員がまとまった夏季休暇(リフレッシュ期間)を確保できるよう、勤務時間管理の視点から配慮する。
- 非常災害・緊急時対応訓練の計画と検証
- 業務内容:防災担当、生活指導主任と連携し、不審者対策や気象警報発表時を想定した引き渡し訓練等の日課を調整する。
- 関わり方:マニュアルの確認にとどまらず、教職員の臨機応変な「危機管理能力」を高めるシミュレーション型の訓練となるよう企画する。
【7月】
- 夏季休業前の全校集会および事前指導の調整
- 業務内容:夏季休業に入る直前の全校集会の時程確保、司会進行、および長期休業中の生活・学習指導文書の最終決裁を行う。
- 関わり方:2学期制のメリットを活かし、「通知表を出さない7月」だからこそ、点数評価に縛られない個別の自由研究や探究活動への意欲を高める働きかけを行う。
- 教科書無償給与手続きおよび次年度使用教科書の選定準備
- 業務内容:次年度使用教科書(文科省の採択結果・指針等に基づく)の需要数調査や給与手続きの書類を整理する。
- 関わり方:将来的な「デジタル教科書の本格導入(2030年度目標)」を見据え、校内の紙とデジタルの併用指針を先見的に検討する。
- 前期前半の教育課程進捗評価の集約
- 業務内容:各学年・教科の4〜7月期の指導計画が計画通り消化されたかを算出し、遅れがある場合は補習や日課変更等の措置を講じる。
- 関わり方:各教員が焦って詰め込み授業を行わないよう、前後期のスパンを長く取ったゆとりある時間割の再構築を促す。
- 校務DXシステムのデータ整合性チェック
- 業務内容:統合型校務支援システム内の出欠データや、指導要録の基となる日常の評価データの入力状況を確認・バックアップする。
- 関わり方:学年末に業務が集中しないよう、日々の校務処理のデジタル化・分散化を定着させ、管理職への進捗報告をスムーズにする。
【8月(夏季休業期間)】
- 次年度に向けた「教育課程編成方針」の骨子作成
- 業務内容:中教審の最新答申(2026年の審議動向等)を分析し、次年度および2030年度全面実施に向けた自校の教育計画の骨子を起草する。
- 関わり方:校長・教頭と密に議論を重ね、学校経営目標を具現化するためのカリキュラム・マネジメントのリーダーとして機能する。
- 校内デジタル・ICT環境のマスタープラン更新
- 業務内容:GIGAスクール構想第2ステージに伴うOS更新、次世代校務DXの共同調達に合わせた校内インフラの再点検を行う。
- 関わり方:ICT主任、事務職員、教育委員会と連携し、教員がストレスなく生成AI活用やブレンド型学習を推進できる環境を設計する。
- 夏季自治体教育委員会・各種教育研究会への出席と伝達準備
- 業務内容:行政や教育センターが主催する教務主任研修、教育課程説明会に出席し、国や自治体の最新施策の情報を収集する。
- 関わり方:単に拝聴するだけでなく、得られた知見を9月以降の自校の校内研修へどのように還元するか、具体的な還流プランを構築する。
- 学校諸備品・備蓄物資および学習教材の点検・選定
- 業務内容:事務職員や各教科主任と連携し、特別教室の備品、消耗品、公費で購入する教材の検収と次期予算要望を精査する。
- 関わり方:予算の有効活用と、児童の探究活動(ものづくり・創造創作領域等)に必要な新しい学習素材の確保を両立させる。
【9月(前期後半開始〜前期末)】
- 前期の学習評価(通知表)の作成・点検の統括
- 業務内容:2学期制における最初の大きな評価時期(前期末)に向け、各担任が入力する通知表の評定、所見の点検スケジュールを管理する。
- 関わり方:所見の重複チェックに追われるだけでなく、児童の「主体的に学習に取り組む態度」が、適切なエビデンス(ポートフォリオや端末内の履歴)に基づき前向きに評価されているか、指導的な助言を講じる。
- 前期末・後期始業式および「通知表配付日」の日課調整
- 業務内容:10月上旬の前期終了・後期開始に伴う学校行事、式典の式次第、週時程の組み換えを決定する。
- 関わり方:3学期制と異なり「秋休み」を挟む、あるいは秋の連休と接続させるなど、児童と教職員にとって最も効果的なリフレッシュ・次期への移行期間となるよう日課をデザインする。
- 後期(10月以降)の年間行事予定の再修正
- 業務内容:上半期の反省や地域の状況を踏まえ、後期の運動会・音楽発表会・修学旅行等の詳細な時間割や職員配置を微調整する。
- 関わり方:学校行事が肥大化して通常授業(特に次期指導要領の新領域など新規時数)を圧迫しないよう、ブレーキ役としての調整力を発揮する。
- 研究授業(後期公開に向けた中間発表等)の進捗管理
- 業務内容:研究主任と連携し、10〜11月にピークを迎える校内公開研究会に向けた指導案の審査、学年内事前検討会のスケジュールを調整する。
- 関わり方:若手教員が指導案作成で孤立しないよう、メンターチームの結成を促し、組織で授業を創る機運を醸成する。
【10月(後期始業)】
- 後期教育課程の始業処理と教育委員会への進捗報告
- 業務内容:後期(2学期制後半)のスタートに伴い、システム上の学期切り替え処理を行い、前期の確定時数を行政に報告する。
- 関わり方:前期の時数過不足を正確に分析し、後期での弾力的な時間割編成(モジュール授業の導入など)によって時数調整を図る。
- 後期公開研究会(研究発表会)の全体統括と対外調整
- 業務内容:他校の教員や教育委員会関係者を招く公開研究会について、案内状の発送、当日の日課、受付・誘導、指導助言者との最終打合せを行う。
- 関わり方:自校の「個別最適な学びと協働的な学び」の実践を広く社会に発信し、地域における拠点校としてのプレゼンスを高める。
- 秋季宿泊学習・修学旅行の実施に関わる安全・時程管理
- 業務内容:高学年の修学旅行や自然体験学習について、引率教員の時間割変更、非常時連絡体制、下校時刻の調整を行う。
- 関わり方:単なる付き添い行事とせず、特別活動や総合的な学習の時間(探究)の文脈と教科の学びが「総合的に発揮」されるよう、学年主任と事前にカリキュラムの繋がりを確認する。
- 次年度「新入生就学時健康診断」の実施計画
- 業務内容:保健主事や事務職員、自治体行政と連携し、10〜11月に実施される新入生向けの就学時健診の会場設営、案内、教員配置を計画する。
- 関わり方:幼保小連携の最初の窓口として、来春入学する幼児や保護者が安心できるよう、スムーズで温かみのある運営体制を差配する。
【11月】
- 教育課程の中間点検と補正(後期の時数マネジメント)
- 業務内容:後期の授業が本格化する中、11月末時点の授業時数を集計し、冬季休業までの見通しを立てる。
- 関わり方:特に次期指導要領で新設・重視される領域や、特別活動などの時数確保に偏りがないか、教科主任に目配りする。
- 後期(秋・冬期)授業参観および「学校開放週間」の運営
- 業務内容:地域や保護者に学校の日常を公開する開放週間の時間割、参観者の受付、授業評価シートの集約を行う。
- 関わり方:特別な授業を見せるのではなく、日常的に子どもたちが1人1台端末を使いこなし、生成AIや対話を通して探究している「ありのままの学び」を地域に提示する。
- 次年度の「校内組織・分掌希望調査」の設計と配布
- 業務内容:次年度の学校経営を見据え、全教職員を対象とした校内分掌・学年配置の希望調査票を作成し、管理職(校長・教頭)に繋ぐ。
- 関わり方:教員の適材適所によるモチベーション向上と、若手・中堅・ベテランのバランスが取れた持続可能な組織体制の構築を、客観的データで支援する。
- 児童質問紙調査・いじめ問題対策委員会との連携調整
- 業務内容:生活指導主任やスクールカウンセラー(SC)と連携し、定期の児童アンケートやいじめ対策に関わる特設会議のスケジュールを確保する。
- 関わり方:教務の立場から、児童の小さな変化(欠席の傾向、学習意欲の減退など)をデータ面から早期に察知し、生徒指導部へ速やかに共有する。
【12月】
- 冬季休業前の教育課程進捗集約と補修・発展学習の計画
- 業務内容:後期前半(10〜12月)の進捗を確定させ、冬季休業中の課題(デジタルドリル等の活用を含む)の範囲設定を調整する。
- 関わり方:一律の宿題提示から脱却し、子どもたちが個々の習熟度や興味に応じて自ら選択できる「個別最適な冬休みの学び」の枠組みを学年に推奨する。
- 次年度「教育課程編成(新1年生〜新6年生)」の具体的起草
- 業務内容:文科省の最新の「教育課程の基準等の在り方について(答申・指針)」に基づき、次年度の全校のコマ数、週当たりの日課表のドラフトを作成する。
- 関わり方:2学期制ならではの柔軟性を活かし、次期改訂で求められる「情報の領域(仮称)」や各教科での探究的学びの時間をどこに配置するか、タイムラインを構造化する。
- 年末の校務データ整理と次世代校務環境への移行シミュレーション
- 業務内容:指導要録等の基礎となる評価データ、指導録、出席黒板等のデジタルデータを整理・統合する。
- 関わり方:県域での共同調達等により新システムが導入される動きを見据え、古いデータのクレンジングと移行手順を先導する。
- 職員会議等の精選と年末の「働き方改革」の推進
- 業務内容:12月の多忙期における各種会議(予算委員会、学年主任会等)を精選・短縮し、持ち回り決裁やチャットでの情報共有へ切り替える。
- 関わり方:無駄な拘束時間を徹底的に排除し、教職員が期末業務や児童の個別の見取り(面談等)に集中できる時間を生み出す。
【1月】
- 冬季休業明けの後期後半教育課程の再開処理
- 業務内容:1月からの時間割、日課、および1〜3月のカウントダウン期における授業時数の最終追い込み計画を点検する。
- 関わり方:インフルエンザ等による学級閉鎖を想定し、端末を活用したリモート学習や反転学習のバックアップ体制をあらかじめ各学年に指示しておく。
- 新1年生向け「入学説明会」の企画・運営調整
- 業務内容:2月に実施する入学説明会の時程、配布資料(学校生活のしおり、デジタル端末購入・利用同意書等)、教員配置を計画する。
- 関わり方:保護者の不安を解消するため、紙の資料を電子化して事前に配信するなど、学校全体のDX姿勢を入学前から可視化する。
- 次年度「年間行事予定・学校暦」の第1次素案作成
- 業務内容:教育委員会が提示する次年度の共通行事、CBT調査日程、地域の祭事等を踏まえ、次年度の年間行事のドラフトを引く。
- 関わり方:従来の行事を踏襲するのではなく、次期指導要領の「実現可能性の確保」の方針に乗り、教育効果が薄いと判断された行事を大胆に廃止・縮小する。
- 「全国学力・学習状況調査」等の次年度実施体制の検討
- 業務内容:次年度の調査対象学年(新6年等)のCBT環境、事前接続テストの実施日に向け、学校全体のPC教室・Wi-Fi環境の優先割り当てを検討する。
- 関わり方:過去の接続不具合の教訓を活かし、自治体の指導主事と連携して、当日にシステムトラブルが起きない完璧なインフラ計画を構築する。
【2月】
- 新年度「時間割・専科配置・日課表」の編成と調整
- 業務内容:内定した新年度の人事配置(学年担任、専科)に基づき、各教科の持ちコマ数、空き時間の確保、特別教室の重複を避けたマスター時間割を作成する。
- 関わり方:教員の負担軽減(連続授業の回避など)と、子どもの学習効率(効果的な教科配置)を高度に両立させる「職人技」の調整力を発揮する。
- 学校評価(後期・年間総括評価)の集約と公表準備
- 業務内容:1年間を通して実施した児童・保護者・教職員アンケートを集計・分析し、学校評議員会(学校運営協議会)への報告書を作成する。
- 関わり方:数値をただ並べるのではなく、「次期指導要領改訂に向け、我が校は何が達成でき、何が次年度の課題か」を論理的かつ前向きなストーリーとして総括する。
- 次年度使用教科書・副読本・デジタル教材の確定と発注
- 業務内容:教育委員会の採択一覧に基づき、児童数に応じた教科書の最終発注、およびデジタル教科書のライセンス数の管理を行う。
- 関わり方:無償給与の教科書だけでなく、有償の副読本やワークブックが次期指導要領の「個別最適な学び」の理念に合致しているか、各教科主任と吟味する。
- 次年度に向けた引継ぎ(校務分掌マニュアルの更新)
- 業務内容:各校務分掌の担当者に対し、今年度の業務内容、予算執行の反省、次年度への申し送り事項を記載した引継書の作成を督促する。
- 関わり方:前任者の経験がブラックボックス化しないよう、共有クラウド上の「次世代校務マニュアル」へ知見を集約させ、組織の持続可能性を高める。
【3月(後期末・学年末)】
- 指導要録・出席簿等「指導に関する記録」の最終点検と決裁
- 業務内容:2学期制(後期)の全ての成績・評価の入力を確認し、公簿としての指導要録の記述、出欠日数の整合性を厳密にチェックして校長決裁に回す。
- 関わり方:記載ミスを未然に防ぐため、校務システムによる自動エラーチェック機能をフル活用し、教職員の精神的負担と目視による確認時間を最小化する。
- 卒業証書授与式および修了式の日課・式次第の最終調整
- 業務内容:6年生の卒業式、1〜5年生の修了式、および後期終業式にともなう特別日課、会場使用計画、全体のタイムラインを確定する。
- 関わり方:過度な呼びかけや長時間の練習など、児童と教職員を疲弊させる旧来の慣習を排し、簡潔でありながら厳かで感動的な、真の「学びの集大成」としての式典を演出する。
- 次年度教育課程の完全確定と教育委員会への最終提出
- 業務内容:4月から全面実施(または移行)となる次年度の教育課程編成書、年間授業時数計画、週時程表を確定し、教育委員会へ正式に提出する。
- 関わり方:校長のリーダーシップを支え、新年度のスタートダッシュが4月1日から切れるよう、すべてのバグ(時数計算のミス等)を取り除いた完璧な計画書として仕上げる。
- 新旧教務主任・管理職による最終校務引継ぎ
- 業務内容:次年度の教務主任(または主幹教諭)に対し、年間のタイムライン、行政との連絡ルート、自校のカリキュラム・マネジメントの核となる課題を引き継ぐ。
- 関わり方:単なる書類の受け渡しではなく、これまで構築してきた「働き方改革」と「次期指導要領への対応」という学校の未来を託す、前向きなマインドの伝承を行う。
4. よりよい学校を創るために
これからの公立小学校における教務主任は、単に時間割の作成や行事の進行といった従来のルーティンワークをこなすだけの存在にとどまってはならない。中央教育審議会において議論が進む次期学習指導要領の本質は、急激な社会変革や技術革新に対応し、子どもたち一人ひとりの「主体的・対話的で深い学び」を確かなものとすることにある。
この激動の時代において、教務主任に求められる最大の使命は、「カリキュラム・マネジメントによる教育の質の向上」と「次世代校務DXの推進による働き方改革」の有機的な両立である。
2学期制(前後期制)という柔軟な枠組みを最大限に活用し、従来の「前例踏襲」による肥大化した学校行事や形骸化した会議体を果敢に見直すことが求められる。生み出された時間的・精神的ゆとりを、児童の個別最適な学びと協働的な学びの設計へと再投資しなければならない。小学校における情報領域の充実や、デジタル教科書・生成AIの効果的な活用など、学びの構造が劇的に変化する中で、教務主任は校長・教頭の強力な補佐役(ミドルリーダー)として、全教職員のベクトルを同じ方向へと導くコンパスとなる必要がある。
「子どもにとってよりよい学びとは何か」「教職員がウェルビーイングを保ちながら最大のパフォーマンスを発揮できる環境とは何か」を常に問い続け、教育行政の最新動向を素早く自校の教育計画に血肉化していくこと。それこそが、令和の日本型学校教育を牽引し、持続可能な未来の学校を創り出す教務主任の理想のあり方である。
5. 参考・出典一覧
- 学校教育法 第37条第10項(指導教諭の職務)
- 学校教育法施行規則 第44条(教務主任等の設置と職務規定)
- 中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会 「教育課程企画特別部会における論点整理」(2025年9月公表)
- 文部科学省 大臣諮問「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)」(2024年12月10日諮問)
- 文部科学省「GIGAスクール構想の下での校務情報化の在り方に関する専門家会議」(次世代校務DX推進ガイドライン等)