次期学習指導要領で、国語教育はどう改善されるか

次期学習指導要領で、国語教育はどう改善されるか
次期学習指導要領において、今後の国語教育は、どのように改善されるのでしょうか。

国語科では、高校国語・選択科目の大再編(履修の偏り是正)、「知識及び技能」の明確な2ステップ化、単発テストに頼らない「複数単元をまたぐ長期的評価」、AI時代に対応する「話す力」と「人間ならではの感性」の統合 が主な改善点です。
次期改定の背底にあるのは、小・中・高を通じて「AI時代における、人間ならではの言語能力の育成」です。
小学校での「情報の信頼性の吟味」、中学校での「異なる意見を持つ他者との合意形成」、そして高校での「対話と表現」や「論説と批評」は、すべて地続きのストーリーとなっています。校種間の壁を越えた「言葉の機能」に着目し、一斉指導から「児童生徒自らが言葉を使いこなす探究的な授業」へのシフトを進めていくことが大切です。

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文部科学省中央教育審議会・教育課程部会 国語ワーキンググループ(WG)における最新(2026年5月現在)の審議動向に基づき、次期学習指導要領における国語科教育の改善方針を解説します。

出典:中央教育審議会教育課程部会 国語ワーキンググループ[online]https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/107/index.html(CF.20260515)

1 小学校・中学校 国語科の改善

文部科学省の中央教育審議会・国語ワーキンググループ(WG)による2026年4月・5月の最新の審議内容(第7回〜第9回会合)に基づき、まずは、小学校および中学校の国語科における現行指導要領からの具体的な改善点を要点一覧として整理・解説します。

1. 小学校・中学校 国語科 現行および次期学習指導要領 比較一覧

改革・指導の視点 現行学習指導要領次期学習指導要領(改善案・審議中)
【小・中 共通】思考・表現の軸・「話す・聞く」「書く」「読む」の領域ごとに独立した指導項目が中心。「話や文章の機能(目的)」軸へ再編
・「説明する」「説得する」「合意形成する」等の目的別に、読む・書く・話すを横断的・系統的に配置。
【小・中 共通】知識及び技能・語彙、文法、漢字などの事項が個別に羅列され、言語活動との結びつきが曖昧。「生かし深める知識」(活動で直接使う語彙等)と、「土台となる教養」(我が国の言語文化等)の2事項に構造化。
【小・中 共通】学習評価の仕組み・1単元(1つの教材)が終わるたびに定期テストや成果物で評定を出す「単元完結型」。「複数単元をまたぐ長期的評価」へシフト。
・単元途中は「形成的評価」(言葉の使い方の変容の看取り)を徹底し、複数単元の後に総括評価。
【小学校 特有】
ICTとローマ字
・ローマ字の読み書き、タイピングの初期指導は小学校3年生で実施。・情報活用能力の早期育成のため、小学校2年生で「ローマ字入力(タイピング)」の体験時間を導入
【小学校 特有】
情報の扱い方
・「情報と情報との関係」「情報の整理」の2項目を中心としたリテラシー指導。・新設:「情報の信頼性」に関する項目。
・生成AIの回答やネット情報を鵜呑みにせず、内容を自ら確かめ、吟味する力を低学年から育成。
【中学校 特有】
言語活動の高度化
・日常生活や身近な社会における、主に「自己の考えをまとめる」言語活動。・SNS時代の短文化の課題に対応。
・異なる意見を持つ他者との「合意形成」や、多面的なデータを用いた「他者の主張の吟味・論破」など、高度な対話力を重視。
【中学校 特有】
高校への接続
・古典や伝統的な言語文化への親しみ(中学)と、高校「言語文化」の専門的学習との間に大きな段差。・中学から高校の「言語文化」へ円滑に繋ぐための「足場掛け(導入学習)」の充実。
・歴史的背景の暗記ではなく、現代の視点から古典を「面白がる」授業への転換。

2. 実践上の要点まとめ

1. 単元づくりの発想転換(「機能」による教科横断的設計)

次期指導要領では、例えば「事実や知識の整理(機能)」をテーマとする場合、「説明文を読む(読むこと)」⇒「解説リーフレットを作る(書くこと)」⇒「プレゼンをする(話すこと)」を一連のユニットとして系統的に組み立てる授業デザインが求められます。

2. 小2タイピング導入による学習の加速

これまでは「3年生でローマ字を習ってから端末で長文を打つ」という流れでしたが、2年生でタイピング体験を先取りすることで、中・高学年におけるタブレット端末を用いた調べ学習や表現活動の質が大幅に向上します。

3. テストありきの授業からの脱却

教員は「単元が終わったから漢字・文法テストをして成績をつける」という過度な評価負担を減らすことができます。長期的・継続的な児童生徒の「言葉を調整する力」の伸びを看取る、指導一体型の評価へのマインドセットが必須となります。

2 小・中・高等学校 国語科の改善

続いて、文部科学省の中央教育審議会・教育課程部会 国語ワーキンググループ(WG)における2026年4月・5月の最新の審議内容に基づき、これまでの小学校・中学校の枠組みに高等学校の改定動向を加え、小・中・高の一貫した変革の様子がわかるよう一覧を作成しました。

1. 小・中・高 国語科の現行および次期学習指導要領 比較

校種改革・指導の視点現行学習指導要領(現行)次期学習指導要領(改善案・審議中)






思考・表現の軸・「話す・聞く」「書く」「読む」の領域ごとに独立した指導項目が中心。「話や文章の機能(目的)」軸へ再編
・「説明する」「説得する」「合意形成する」等の目的別に、領域を横断して系統的に配置。
知識及び技能・語彙、文法、漢字などの事項が個別に羅列され、実際の言語活動との結びつきが曖昧。「生かし深める知識」(活動で直接使う語彙等)と、「土台となる教養」(伝統的な言語文化等)の2事項に構造化。
学習評価の仕組み・1単元(1つの教材)が終わるたびに定期テストや成果物で評定を出す「単元完結型」。「複数単元をまたぐ長期的評価」へシフト。
・単元途中は「形成的評価」(言葉の使い方の変容の看取り)を徹底し、複数単元の後に総括評価。


ICTとローマ字・ローマ字の読み書き、タイピングの初期指導は小学校3年生で実施。・情報活用能力の早期育成のため、小学校2年生で「ローマ字入力(タイピング)」の体験時間を導入
情報の扱い方・「情報と情報との関係」「情報の整理」の2項目を中心としたリテラシー指導。・新設:「情報の信頼性」に関する項目。
・生成AIの回答やネット情報を鵜呑みにせず、内容を自ら確かめ、吟味する力を低学年から育成。


言語活動の高度化・日常生活や身近な社会における、主に「自己の考えをまとめる」言語活動。・SNS時代の短文化の課題に対応。
・異なる意見を持つ他者との「合意形成」や、多面的なデータを用いた「他者の主張の吟味・論破」など、高度な対話力を重視。
高校への接続・古典や伝統的な言語文化への親しみ(中学)と、高校「言語文化」の専門的学習との間に大きな段差。・中学から高校の「言語文化」へ円滑に繋ぐための「足場掛け(導入学習)」の充実。
・歴史的背景の暗記ではなく、現代の視点から古典を「面白がる」授業への転換。



選択科目の構成・必履修の後に続く選択4科目(論理国語、文学国語、国語表現、古典探究)がすべて4単位。
・入試等の影響で履修率に著しい偏り(国語表現16%、文学国語49%)。
・選択6科目(標準4単位×2、発展2単位×4)へ再編(すべて仮称)。
・多様な文章をバランスよく、個々の興味・進路に応じて柔軟に学ぶ。
教材の扱い(文学)・「現代の国語」等における文学作品の扱いを巡り、現場の解釈に混乱。・「現代の国語II」等において、科目の趣旨(論理的表現など)に合致すれば文学作品の取り扱いも可能と公式に整理。
高度な言語能力・主にテキスト(文章)の読解や論理的・文学的な記述力の育成。・AI時代を見据えた「対話・話す力(対話と表現)」の最重点化
・生成AIへのプロンプト作成、学校外の人とのフィールドワーク、学術的な論文作成(論説と批評)の推進。

2. 高等学校における新科目構成案のまとめ(すべて仮称)

高校段階における最大の変更点は、「4単位の壁」を壊し、2単位の発展科目を新設した点にあります。これにより、生徒の進路に応じた多様な組み合わせが可能になります。

  • 必履修科目(現行を維持・改善):
    • 「現代の国語I」「言語文化I」
  • 選択・標準科目(4単位):バランスよく基礎を固める
    • 「現代の国語II(論理+表現)」
    • 「言語文化II(文学+古典)」
  • 選択・発展科目(2単位):興味や進路に応じて深める
    • 「論説と批評」:学術的な論考の読解、小論文の作成など
    • 「対話と表現」:ディベート、プレゼンテーション、インタビューなど
    • 「文学と叙述」:多様な文学作品の深い鑑賞と創作など
    • 「古典と文化」:日本の伝統的な言語文化や思想の探究など

3. 小・中・高「話や文章の機能」指導計画例

文部科学省の中央教育審議会・国語ワーキンググループにおいて審議されている「話や文章の機能(目的)」の整理に基づき、小学校・中学校・高等学校を貫く具体的な指導計画のマトリクス案です。

次期学習指導要領では、従来の「読む」「書く」「話す・聞く」という領域ごとの縦割りを排し、「どのような言語的な目的・機能(言語行動の目的)を果たすか」という軸で授業を設計します。

1) 小・中・高「話や文章の機能」指導計画マトリクス(案)

本マトリクスは、「情報の処理・伝達(インプット・アウトプット)」から「論理的思考・合意形成(社会参画)」へと、校種が上がるにつれて高度化するよう系統的に設計されています。

言語の機能(目的)小学校(低・中・高学年)の指導重点中学校の指導重点高等学校(現代の国語Ⅰ・Ⅱ / 新科目)の指導重点
① 記録・報告
(事実を正確に写し取る)
・観察日記の作成
・体験したことの順序に沿った報告
・短いインタビューの記録
・社会科見学や理科の実験レポートの作成
・事実と個人の意見を明確に区別した活動報告
・フィールドワークに基づく本格的な調査報告書の作成
・多角的な一次データの客観的な要約と提示
② 説明・解説
(物事の仕組みを伝える)
・リーフレットや新聞づくり(紹介)
・事典の使い方と要点の要約
・日常の事象の理由を順序立てて説明
・多角的な図表やデータを引用した解説文の執筆
・複数のテキストを比較・統合したレポート
・新科目「論説と批評」等における、抽象的概念や社会現象の論理的解説・論文作成
③ 論述・説得
(自身の主張を通す)
・根拠を明確にした意見文の作成
・提案理由を明確にした学級活動での発表
・読書感想文での推し本の紹介
・根拠の妥当性を検証した上で書く論説文
・社会問題に対する意見書の執筆
・反論を想定したスピーチ
・新科目「論説と批評」における多角的な学術論考の執筆
・批判的読解に基づく小論文・書評の作成
④ 対話・合意形成
(他者と協働する)
・話し合いのルールの習得
・役割(司会・記録など)分担の体験
・互いの意見の共通点・相違点の発見
・異なる立場や利害関係を調整する話し合い
・学級や地域課題に対する解決策の合意形成
・新科目「対話と表現」におけるディベート、模擬国際会議、他者と協働するワークショップ
⑤ 吟味・評価
(信頼性を確かめる)
・【新設】情報の信頼性の吟味(小2~)
・図書室の本とネット情報の比較
・表現の効果の捉え方の習得
・メディアリテラシーの育成(広告やニュースの意図の分析)
・他者の主張の論理的矛盾の指摘
・生成AIが出力した文章の妥当性・倫理性の評価
・社会的・文化的な言説に対する高度な批評

2) マトリクスを活用した「1つの単元」の授業展開イメージ

このマトリクスに基づき、「1つの機能」を軸にして、領域(読む・書く・話す)を横断した単元を設計します。

中学校:機能「③ 論述・説得」および「④ 対話・合意形成」を軸とした12時間単元の例
  • ステップ1【読む】(4時間):
    地域の環境問題を扱った複数の論説文や、統計データを読み解く。筆者がどのような「根拠」を用いて読者を「説得」しているか(テクニック)を分析・吟味する。
  • ステップ2【書く】(4時間):
    ステップ1で学んだ説得の手法(データ引用、反論への配慮)を使い、自分自身の「地域課題に対する解決策の提案意見書」を論理的に執筆する。
  • ステップ3【話す・聞く】(4時間):
    各自が書いた意見書を持ち寄り、グループでディスカッションを行う。単に自分の主張を述べる(論述)だけでなく、互いの妥協点を見つけ出し、班としての「最適解」を1つにまとめる(合意形成)。

3) 指導計画作成における留意点

次期学習指導要領におけるこの「機能軸への移行」は、「国語の授業の中で、教科横断的なスキルを完結させる」という強いメッセージを持っています。

例えば、「記録・報告」の機能は理科の実験レポートや社会科の調査に直結し、「対話・合意形成」は総合的な探究の時間や特別活動の土台となります。国語科単体で文学の鑑賞や文法の暗記に終始するのではなく、「この単元で育てた言葉の機能は、子どもの実生活や他教科のどこで生きて働くのか」を常に意識したカリキュラム・マネジメントが必要です。

3 主な改善点の解説

1. 高校国語・選択科目の大再編(履修の偏り是正)

1) 現行学習指導要領との比較

  • 現行: 必履修の後に続く選択4科目(論理国語、文学国語、国語表現、古典探究)がすべて4単位でした。その結果、大学入試等の影響から「国語表現(履修率16%)」や「文学国語(49%)」の履修が著しく低迷し、実社会に必要な表現力や文学的感性の学びが偏る課題がありました。
  • 次期(提案・審議中): 選択科目を4科目から6科目へと再編します。基礎を組み合わせた標準科目(4単位)と、関心に応じて選ぶ発展科目(2単位)に分ける案が2026年5月に示されました。

2) 具体的な新科目構成(すべて仮称)

  • 必履修科目: 「現代の国語I」「言語文化I」として現行の枠組みを維持・改善。
  • 選択・標準科目(4単位): 「現代の国語II(論理+表現)」、「言語文化II(文学+古典)」を新設し、バランスよい基礎を担保。
  • 選択・発展科目(2単位): 「論説と批評」「対話と表現」「文学と叙述」「古典と文化」の4科目を置き、生徒の興味や進路に柔軟に対応。

2. 「知識及び技能」の明確な2ステップ化

1) 現行学習指導要領との比較

  • 現行: 語彙、文法、漢字などの「知識・技能」が個別の事項として羅列されており、実際の文章読解や表現活動の中でどう生かすかという「生きて働く知識」としての構造化が不十分でした。
  • 次期(有力方針): 2026年5月の第9回WGにて、知識及び技能を明確に2つの役割に分けて整理する方針が示されました。

2) 具体的な改善内容

  • 生かし深める事項: 読む・書く・話すといった「各領域の学習プロセスの中で、直接的に活用して深める知識」。
  • 教養として深める事項: 我が国の言語文化や態度など、「学習の土台を支える教養・文化的な知識」。

3. 単発テストに頼らない「複数単元をまたぐ長期的評価」

1) 現行学習指導要領との比較

  • 現行: 1つの教材(例:1つの小説、1つの論説文)が終わるたびに定期テストで知識の定着を測る「単元完結型」の総括的評価が中心でした。
  • 次期(有力方針): 2026年4月の第7回WGにおいて、知識・技能の評価は単発のテストではなく、複数学年の文脈や複数単元をまたいだ長期的な視点で捉える案が提案されています。

2) 具体的な改善内容

  • 形成的評価の重視: 各単元の途中では、児童生徒の言葉の使い方の変容を捉える「形成的評価」を徹底します。
  • 総括的評価の合流: 複数の単元を経験し、様々な文脈で言葉を繰り返し活用させた後にまとめて「生きて働く知識・技能」が身についたかを総括評価します。

4. AI時代に対応する「話す力」と「人間ならではの感性」の統合

1) 現行学習指導要領との比較

  • 現行: SNS等の普及に伴い短文でのやり取りが日常化する中、論理的な発信力や、他者と対話して合意形成する「話すこと・聞くこと」の日常的な深まりに課題がありました。
  • 次期(最重点): 生成AIが文章を自動生成する時代だからこそ、「自らの考えを言葉にし、他者と対話して納得解をつくる力(話す力)」と、「人間ならではの豊かな感性や情緒」をバランスよく育むことを重視します。

4 まとめ

現行および次期学習指導要領 国語科の比較

改革の視点現行学習指導要領(現行)次期学習指導要領(改善案・審議中)
高校の科目構成・選択4科目(各4単位)
・入試等の影響で履修率に著しい偏り
・選択6科目(標準4単位×2、発展2単位×4)へ再編
・多様な文章を偏りなく学ぶ
知識・技能の扱い・各個別事項の羅列「活用する知識」と「土台となる教養」の2つに構造化
評価のタイミング・単元ごとの定期テストによる総括複数単元をまたいだ長期的な総括評価へシフト
育成する言語能力・実用文と文学の二元論的議論・AI時代を見据えた「対話・話す力」と「感性・情緒」の統合

 国語科では、高校国語・選択科目の大再編(履修の偏り是正)、「知識及び技能」の明確な2ステップ化、単発テストに頼らない「複数単元をまたぐ長期的評価」、AI時代に対応する「話す力」と「人間ならではの感性」の統合 が主な改善点です。
 次期改定の背底にあるのは、小・中・高を通じて「AI時代における、人間ならではの言語能力の育成」です。
 小学校での「情報の信頼性の吟味」、中学校での「異なる意見を持つ他者との合意形成」、そして高校での「対話と表現」や「論説と批評」は、すべて地続きのストーリーとなっています。校種間の壁を越えた「言葉の機能」に着目し、一斉指導から「児童生徒自らが言葉を使いこなす探究的な授業」へのシフトを進めていく必要があります。
 なお、新科目名は「仮称」の段階です。中教審国語WGは2026年5月以降も引き続き詳細な内容が審議され、最終的な答申に向けて調整が続けられています。表面的な科目名に惑わされることなく、「AI時代に求められる人間ならではの言語能力の育成」という本質に向けた授業改善(一斉指導から対話・探究へ)を意識していくことが大切です。

出典:中央教育審議会教育課程部会 国語ワーキンググループ[online]https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/107/index.html(CF.20260515)

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