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中学校「特別活動の目標」解説を縦横に読む

平成29年告示の中学校学習指導要領特別活動の目標は,どのようなものでしょうか。
中学校特別活動では,
集団や社会の形成者としての見方・考え方を働かせ,様々な集団活動に自主的,実践的に取り組み,互いのよさや可能性を発揮しながら集団や自己の生活上の課題を解決することを通して」資質・能力の育成を目指します。

人間関係形成」,「社会参画」,「自己実現」の3視点は,特別活動において育成する資質・能力における重要な要素です。
また同時に, これらの資質・能力を育成する学習の過程においても重要な意味をもちます。
このことは,特別活動の学習の方法原理が「なすことによって学ぶ」ことを示します。
集団や社会の形成者としての見方・考え方を働かせるとは,
各教科等の見方・考え方を総合的に働かせながら,自己及び集団や社会の問題を捉え,よりよい人間関係の形成,よりよい集団生活の構築や社会への参画及び自己の実現に向けた実践に結び付けることです。







掲載の趣旨

平成29年告示の学習指導要領では,資質・能力や内容などの全体像を分かりやすく見渡せるよう,枠組みが大きく見直され「学びの地図」として整理されました。
その趣旨に添い,本稿では,解説本文を次のように編集しています。
・ 目標解説の内容が捉えやすいように原文を装飾
・ 他教科等・他学校種の目標や解説が比較しやすように編集
具体的には,本文は原文通りで,次のように編集しています。
・ 各教科等の目標の解説を共通した章立てで構成
・ 学校種間の対応する内容についてリンクで移動 など
掲載の趣旨の詳細は,下のボタンより参照できます。

「掲載の趣旨」の詳細

なお,本稿は,「文部科学省ウェブサイト利用規約」(2018年3月1日に利用)に基づいて,原本を加工し作成しています。
小学校・中学校各教科等の目標の解説 「小・中学校「教科等の目標解説を縦横に読む」シリーズ」は,下のボタンより閲覧できます。

小・中学校各教科等の目標解説

中学校 特別活動の目標

1 特別活動の目標

学習指導要領第5章第1「目標」で,次のとおり示している。

特別活動の目標

集団や社会の形成者としての見方・考え方を働かせ,様々な集団活動に自主的,実践的に取り組み,互いのよさや可能性を発揮しながら集団や自己の生活上の課題を解決することを通して,次のとおり資質・能力を育成することを目指す。
(1) 多様な他者と協働する様々な集団活動の意義や活動を行う上で必要となることについて理解し,行動の仕方を身に付けるようにする。
(2) 集団や自己の生活,人間関係の課題を見いだし,解決するために話し合い,合意形成を図ったり,意思決定したりすることができるようにする。
(3) 自主的,実践的な集団活動を通して身に付けたことを生かして,集団や社会における生活及び人間関係をよりよく形成するとともに,人間としての生き方についての考えを深め,自己実現を図ろうとする態度を養う。

※ 平成20年中学校学習指導要領「特別活動」目標
「望ましい集団活動を通して,心身の調和のとれた発達と個性の伸長を図り,集団や社会の一員としてよりよい生活や人間関係を築こうとする自主的,実践的な態度を育てるとともに,人間としての生き方についての自覚を深め,自己を生かす能力を養う。」
※ 平成10年中学校学習指導要領「特別活動」目標
「望ましい集団活動を通して,心身の調和のとれた発達と個性の伸長を図り,集団や社会の一員としてよりよい生活を築こうとする自主的,実践的な態度を育てるとともに,人間としての生き方についての自覚を深め,自己を生かす能力を養う。」
※ 平成元年中学校学習指導要領「特別活動」目標
「望ましい集団活動を通して,心身の調和のとれた発達と個性の伸長を図り,集団の一員としてよりよい生活を築こうとする自主的,実践的な態度を育てるとともに,人間としての生き方についての自覚を深め自己を生かす能力を養う。」
※ 小学校特別活動の目標と中学校特別活動の目標は,共通。

この特別活動の目標は,
・ 学級活動,
・ 生徒会活動及び
・ 学校行事
の三つの内容(以下「各活動・学校行事」という。)の目標を総括する目標である。
特別活動は,「集団や社会の形成者としての見方・考え方」を働かせながら「様々な集団活動に自主的,実践的に取り組み,互いのよさや可能性を発揮しながら集団や自己の生活上の課題を解決する」ことを通して,資質・能力を育むことを目指す教育活動である。

今回の改訂では,各教科等の指導を通してどのような資質・能力の育成を目指すのかを明確にしつつ,それらを育むに当たり,生徒がどのような学びの過程を経るのかということ,さらにはそうした学びの過程において,各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら,教育活動の充実を図ることを,各教科等の目標の中で示した。

特別活動においても,こうした考え方に基づいて目標を示した。このことは,これまでの特別活動の基本的な性格を転換するものではなく,教育課程の内外を含めた学校の教育活動全体における特別活動の役割を,より一層明確に示すものである。

小学校特別活動「目標」

2 柱書

(1)特別活動における「人間関係形成」,「社会参画」,「自己実現」の視点

特別活動において育成を目指す資質・能力や,それらを育成するための学習過程の在り方を整理するに当たっては,これまで目標において示してきた要素や特別活動の特質,教育課程全体において特別活動が果たすべき役割などを勘案して,「人間関係形成」,「社会参画」,「自己実現」の三つを視点に整理した。

これらの三つの視点は,特別活動において育成する資質・能力における重要な要素であり,(4)において述べるように,これらの資質・能力を育成する学習の過程においても重要な意味をもつ
「人間関係形成」,「社会参画」,「自己実現」の三つの視点が,育成を目指す資質・能力に関わるものであると同時に,それらを育成する学習の過程においても重要な意味をもつということは,特別活動の方法原理が「なすことによって学ぶ」ということにある

三つの視点はそれぞれ重要であるが,相互に関わり合っていて,明確に区別されるものでないことにも留意することが必要である。

※ 特別活動で育成を目指す資質・能力 本稿では「3 三つの柱」

① 人間関係形成

人間関係形成」は,集団の中で,人間関係を自主的,実践的によりよいものへと形成するという視点である。
人間関係形成に必要な資質・能力は,集団の中において,課題の発見から実践,振り返りなど特別活動の学習過程全体を通して,個人と個人あるいは個人と集団という関係性の中で育まれると考えられる。年齢や性別といった属性,考え方や関心,意見の違い等を理解した上で認め合い,互いのよさを生かすような関係をつくることが大切である。
なお,「人間関係形成」と「人間関係をよりよく形成すること」は同じ視点として整理している。

② 社会参画

社会参画」は,よりよい学級・学校生活づくりなど,集団や社会に参画し様々な問題を主体的に解決しようとするいう視点である。
社会参画のために必要な資質・能力は,集団の中において,自発的,自治的な活動を通して,個人が集団へ関与する中で育まれるものと考えられる。学校は一つの小さな社会であると同時に,様々な集団から構成される。学校内の様々な集団における活動に関わることが,地域や社会に対する参画,持続可能な社会の担い手となっていくことにもつながっていく。
なお,社会は,様々な集団で構成されていると捉えられることから,
・ 学級や学校の集団をよりよくしようとするために参画することと,
・ 社会をよりよくしようとするために参画することは,
「社会参画」という意味で同じ視点として整理している。

③ 自己実現

自己実現」は,一般的には様々な意味で用いられるが,特別活動においては,集団の中で,現在及び将来の自己の生活の課題を発見しよりよく改善しようとする視点である。
自己実現のために必要な資質・能力は,自己の理解を深め,自己のよさや可能性を生かす力,自己の在り方生き方を考え設計する力など,集団の中において,個々人が共通して当面する現在及び将来に関わる課題を考察する中で育まれるものと考えられる。

小学校特別活動「三つの視点」

(2)見方・考え方

【集団や社会の形成者としての見方・考え方を働かせる】
学級や学校は,生徒にとって最も身近な社会である。生徒は学級や学校という社会での生活の中で,様々な集団活動を通して,多様な人間関係の築き方や,集団の発展に寄与すること,よりよい自分を追求することなどを学ぶことになる。生徒は,学年・学校段階が上がるにつれて人間関係や活動の範囲を広げ,特別活動で身に付けたこのような資質・能力と,教科等で学んだことを,地域・社会などその後の様々な集団や人間関係の中で生かしていく。

こうした学習の過程においては,特別活動ならではの「見方・考え方」を働かせることが重要である。
今回の改訂で各教科等の目標に位置付けられた「見方・考え方」は,各教科等の特質に応じた,各教科等ならではの物事を捉える視点や考え方であり,各教科等を学ぶ意義の中核をなすものである。
特別活動の特質が,課題を見いだし解決に向けて取り組むという実践的な学習であるということや,各教科等で学んだことを実際の生活において総合的に活用して実践するということにあることから考え,特別活動の特質に応じた見方・考え方は「集団や社会の形成者としての見方・考え方」として示した。
「集団や社会の形成者としての見方・考え方」を働かせるということは,
各教科等の見方・考え方を総合的に働かせながら,自己及び集団や社会の問題を捉え,よりよい人間関係の形成,よりよい集団生活の構築や社会への参画及び自己の実現に向けた実践に結び付けることである。
こうした「見方・考え方」は特別活動の中で働くだけでなく,大人になって生活していくに当たっても重要な働きをする。

※ 【英訳(仮訳)】中学校学習指導要領では,「各教科等の特質に応じた物事を捉える視点や考え方(以下「見方・考え方」という。)」を「discipline-based epistemological approaches, hereinafter referred to as “Approaches”」と訳す。見方・考え方を“Approaches”で代表している。このことを考え合わせると見方・考え方の意味がより一層捉えやすくなる。すなわち,見方・考え方は,物事を認識するときの入り方,近づき方,せまり方と言い換えることができる。
引用:文部科学省「平成29年改訂中学校学習指導要領英訳版(仮訳)」[ONLINE]https://www.mext.go.jp/content/20200227-mxt_kyoiku02-100002604_2.pdf(cf:2020.05.26)

小学校特別活動「見方・考え方」

(3)学び方

【様々な集団活動に自主的,実践的に取り組み,互いのよさや可能性を発揮しながら集団や自己の生活上の課題を解決する】
今回の改訂では,資質・能力を育成するために,「様々な集団活動に自主的,実践的に取り組み,互いのよさや可能性を発揮しながら集団や自己の生活上の課題を解決すること通して」という学習の過程を示した。

① 様々な集団活動

私たちは社会の中で,様々な集団を単位として活動する。集団は,目的によってつながっていたり,生活する地域を同じにするという点においてつながっていたりと様々なものがある。目的や構成が異なる様々な集団での活動を通して,自分や他者のよさや可能性に気付いたり,それを発揮したりすることができるようになる。

学校は一つの小さな社会であり,様々な集団から構成される。特別活動は,各活動・学校行事における様々な集団活動の中で,生徒が集団や自己の課題の解決に向けて取り組む活動である。集団の活動の範囲は学年や学校段階が上がるにつれて広がりをもっていき,社会に出た後の様々な集団や人間関係の中でその資質・能力は生かされていくことになる。

ア 学級活動
学級活動は,学校生活において最も基礎的な集団である学級を基盤とした活動である。
卒業後においては,職業生活を共にする職場における集団や,日々の生活の基盤となる家庭といった集団での生活につながる活動である。
日々の生活を共にする中で,生徒は,一人一人の意見や意思は多様であることを知り,時には葛藤や対立を経験する。こうした中で,自ら規律ある生活を送るために,様々な課題を見いだし,課題の解決に向けて話し合い,合意形成を図って決まったことに対して協力して実践したり,意思決定したことを努力して実践したりする。

イ 生徒会活動
生徒会活動は,主に学校生活全般に関する自発的,自治的な活動である。
卒業後においては,地域社会における自治的な活動につながる活動である。生徒会では,生徒会全体が一つの集団であるという側面と,委員会活動などにおいて,役割を同じくする異年齢の集団を構成する面もある。いずれにしても学級の枠を超え,よりよい学校づくりに参画し,協力して諸課題の解決を行う活動である。

ウ 学校行事
学校行事は,学年や学校全体という大きな集団において,一つの目的のもとに行われる様々な活動の総体である。
卒業後は地域や社会の行事や催し物など,様々な集団で所属感や連帯感を高めながら一つの目標などに向かって取り組む活動につながる活動である。学年や学校が計画し,実施するものであり,生徒が積極的に参加したり協力したりすることにより充実する教育活動である。生徒の積極的な参加による体験的な活動を行うものであり,学校内だけでなく,地域行事や催し物等,学校外の活動ともつながりをもち,内容によっては,地域の様々な人々で構成する集団と協力することもある。
このような学校行事の活動を通して,生徒は多様な集団への所属感や連帯感を高めていくものである。

② 自主的,実践的に取り組む

特別活動の各活動・学校行事は,一人一人の生徒の学級や学校の生活における諸問題への対応や課題解決の仕方などを自主的,実践的に学ぶ活動内容によって構成されている。
特別活動の目標や内容で示している資質・能力は,自主的,実践的な学習を通して初めて身に付くものである。

例えば,多様な他者と協働する様々な集団活動の意義を理解し,そうした活動に積極的に取り組もうとする態度を育てるためには,実際に学級や学校の生活をよりよくするための活動に全ての生徒が取り組むことを通して,そのよさや大切さを,一人一人が実感を伴って理解することが大切である。
また,例えば事件や事故,災害等から身を守る安全な行動を体得するためには,表面的・形式的ではなく,より具体的な場面を想定した訓練等を体験することによって,各教科等で学習した安全に関する資質・能力が実際に活用できるものとなる。

このように,集団活動の中で,一人一人の生徒が,実生活における課題の解決に取り組むことを通して学ぶことが,特別活動における自主的,実践的な学習である。

特別活動のいずれの活動も,生徒が自主的,実践的に取り組むことを特質としているが,学級活動の内容(1)及び生徒会活動においては,さらに「自発的,自治的な活動」であることを特質としている。
自発的,自治的な活動」は,「自主的,実践的」であることに加えて,目的をもって編制された集団において,生徒が自ら課題等を見いだし,その解決方法・取扱い方法などについての合意形成を図り,協力して目標を達成していくものである。
生徒の自発的,自治的な活動に係る内容と,それ以外の内容については,本解説第3章で説明す るように,学習過程に違いがあるが,いずれの場合にも,生徒の自主的,実践的な活動が助長されるようにする必要がある。この点については本解説第4章で解説する。

③ 互いのよさや可能性を発揮しながら

互いのよさや可能性を発揮しながら」は,これまでの学習指導要領の目標で「望ましい集団活動を通してとして示した趣旨をより具体的に示したものである。

①で説明したように,特別活動の大きな特質の一つとして,様々な集団での活動を基本とすることが挙げられる。
特別活動における集団活動の指導においては,過度に個々やグループでの競争を強いたり,過度に連帯による責任を求めて同調圧力を高めたりするなど,その指導方法によっては,違いを排除することにつながり,例えば,「いじめ」などに見られるように一部の生徒が排斥されたり,「不登校」のきっかけになったり,生徒一人一人のよさが十分発揮できなかったりすることも危惧される。
また,一見すると学級全体で協力的に実践が進められているように見えても,実際には教師の意向や一部の限られた生徒の考えだけで動かされていたり,単なるなれ合いとなっていたりしている場合もある。
このような状況は,特別活動の学習過程として望ましいものとは言えない。

集団における合意形成では,同調圧力に流されることなく,批判的思考力をもち,他者の意見も受け入れつつ自分の考えも主張できるようにすることが大切である。そして,異なる意見や意思をもとに,様々な解決の方法を模索し,問題を多面的・多角的に考えて,解決方法について合意形成を図ることが, 「互いのよさや可能性を発揮しながら」につながるのである。

こうしたことを常に念頭に置き,特別活動における集団活動の指導に当たっては,「いじめ」や「不登校」等の未然防止等も踏まえ,生徒一人一人を尊重し,生徒が互いのよさや可能性を発揮し,生かし,伸ばし合うなど,よりよく成長し合えるような集団活動として展開しなければならない。
このような特別活動の特質は,学級経営や生徒指導の充実とも深く関わるものである。

なお,学習指導要領の前文においても,
「(中略)一人一人の生徒が,自分のよさや可能性を認識するとともに,あらゆる他者を価値のある存在として尊重し,多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え,豊かな人生を切り拓き,持続可能な社会の創り手となることができるようにすることが求められる。」
と示されている。
このことは特別活動にとどまらず,学校教育全体で大切にする必要があることを示している。

④ 集団や自己の生活上の課題を解決する

集団や自己の生活上の課題を解決する」とは,様々な集団活動を通して集団や個人の課題を見いだし,解決するための方法や内容を話し合って,合意形成や意思決定をするとともに,それを協働して成し遂げたり強い意志をもって実現したりする生徒の活動内容や学習過程を示したものである。

なすことによって学ぶを方法原理としている特別活動においては,
・ 学級や学校生活には自分たちで解決できる課題があること,
・ その課題を自分たちで見いだすことが必要であること,
・ 単に話し合えば解決するのではなく,その後の実践に取り組み,振り返って成果や課題を明らかにし,次なる課題解決に向かうことなどが大切であること
気付いたり,その方法や手順を体得できるようにしたりすることが求められる。

ここでいう「課題」とは,
・ 現在生じている問題を解消するにとどまらず,
・ 広く集団や自己の現在や将来の生活をよりよくするために取り組む内容
を指してい る。
各活動・学校行事における課題については,第3章において解説する。

小学校特別活動「学び方」






3 三つの柱

【特別活動で育成を目指す資質・能力】
特別活動では,学んだことを人生や社会での在り方と結び付けて深く理解したり,これからの時代に求められる資質・能力を意識して身に付けたり,生涯にわたって能動的に学び続けたりすることができるようになることが重要である。
そこで,指導に当たっては, 生徒が互いのよさや可能性を発揮し,よりよく成長し合えるような集団活動を特別活動における 「集団や社会の形成者としての見方・考え方」を働かせながら展開することを通して,次のような資質・能力を育むことが大切である。

(1)知識及び技能

【何を知っているか,何ができるか】

多様な他者と協働する様々な集団活動の意義や活動をする上で必要となることについて理解し,行動の仕方を身に付けるようにする。

学級や学校における集団活動を前提とする特別活動は,よりよい人間関係の形成や合意形成,意思決定をどのように図っていくかということを大切にしている。こうした集団活動を通して,
・ 話合いの進め方やよりよい合意形成と意思決定の仕方,
・ チームワークの重要性や役割分担の意義等
について理解することが必要である。
これは,
・ 方法論的な知識や技能だけではなく
・ よりよい人間関係とはどのようなものなのか,
・ 合意形成や意思決定とはどういうことなのか,
という本質的な理解も極めて重要である。
知識や技能を教授するのではなく,各教科等において学習したことも含めて,特別活動の実践活動や体験活動を通して体得させていくようにすることが必要である。

具体的には,例えば次のように知識や技能を身に付けていくことが考えられる。
・ 集団で活動する上での様々な困難を乗り越えるためには何が必要になるのかを理解すること,
・ 集団でなくては成し遂げられないことや集団で行うからこそ得られる達成感があることを理解することなど,
集団と個との関係について理解することが重要である。
集団活動の意義が社会の中で果たしている役割や意義,人間としての在り方や生き方との関連で集団活動の価値を理解することも必要である。
また,
・ 基本的な生活習慣,
・ 学校生活のきまり,
・ 社会生活におけるルールやマナー及びその意義
について理解し,実践できるようにすることなど,集団や人間関係をよりよく構築していく中で大切にすべきことを理解し実践できるようにすることも必要である。
さらに,
・ 現在及び将来の自己と学習の関連や意義を理解し,
・ 課題解決に向けて意思決定し,行動することの意義や,そのために必要となること,大切にしなければならないことなどを理解することも
必要である。
特に,将来の社会的・職業的な自立と現在の学習がどのように関わるかということを理解し,現在,自分でできることを意思決定し,実践していくことが重要である。

小学校特別活動「知識及び技能」

(2)思考力,判断力,表現力等

【知っていること,できることをどう使うか】

集団や自己の生活,人間関係の課題を見いだし,解決するために話し合い,合意形成を図ったり,意思決定したりすることができるようにする。

特別活動では,学級や学校における様々な集団活動を通して,
1. 自己の生活上の課題や他者との関係の中で生じる課題を見いだす
2. そして,その解決のために話し合い,決まったことを実践する。
3. さらに,実践したことを振り返って次の課題解決に向かう。

この一連の活動過程において,生徒が各教科等で学んだ知識などを課題解決に関連付けながら主体的に考えたり判断したりすることを通して,個人と集団との関わりの中で合意形成意思決定が行われ,こうした経験や学習の積み重ねにより,課題解決の過程において必要となる「思考力,判断力,表現力等」が育成される。

具体的には,様々な集団活動の中で,例えば次のようなことができるようにすることが考えられる。
○ 人間関係をよりよく形成していくために,多様な場面で, 自分と異なる考えや立場にある多様な他者を尊重し,認め合いながら,支え合ったり補い合ったりして,協働していくこと。
○ 集団をよりよく改善したり,主体的に社会に参画したりしていくために,自他のよさや可能性を発揮しながら,主体的に集団や社会の問題について理解し,合意形成を図ってよりよい解決策を決め,それに取り組むこと。
○ 現在及び 将来に向けた自己実現のために,自己のよさや個性,置かれている環境を様々な角度から理解するとともに,進路や社会に関する情報を収集・整理し,将来を見通して人間としての生き方を選択・形成すること。また,意思決定したことに向けて努力したり,必要に応じて見直したりすること。

小学校特別活動「思考力,判断力,表現力等」

(3)学びに向かう力,人間性等

【どのように社会・世界と関わり,よりよい人生を送るか】

自主的,実践的な集団活動を通して身に付けたことを生かして,集団や社会における生活及び人間関係をよりよく形成するとともに,人間の生き方についての考えを深め,自己実現を図ろうとする態度を養う。

人は,実社会において,目的を達成するため,また,自己実現を図るために様々な集団に所属したり,集団を構築したりする。その中で様々な困難や障害を克服し,自分を磨き人間性を高めている。
したがって,多様な集団に所属し,その中でよりよい人間関係を形成しようとしたり,よりよい集団や社会を構築しようとしたり,自己実現を図ろうとしたりすることは,正に学び続ける人間としての在り方や生き方と深く関わるものである。

特別活動では,様々な集団活動の意義や役割を理解し,生徒自身が様々な活動に自主的,実践的に関わろうとする態度を育てることが必要がある。
具体的には,例えば次のような態度を養うことが考えられる。
○ 多様な他者の価値観や個性を受け入れ,助け合ったり協力し合ったり,新たな環境のもとで人間関係を築こうとする態度
○ 集団や社会の形成者として,多様な他者と協働し,問題を解決し,よりよい生活をつくろうとする態度多様な他者と協働して解決しようとする態度
○ 日常の生活や自己の在り方を主体的に改善しようとしたり,将来を思い描き,自分にふさわしい生き方や職業を主体的に考え,選択しようとしたりする態度

小学校特別活動「学びに向かう力,人間性等」

4 特別活動の目標と各活動・学校行事の目標との関連

特別活動は,各活動・学校行事で構成されており,それぞれ独自の目標と内容をもつ教育活動である。しかし,それらは決して別々に異なる目標を達成することとしているものではない。構成や規模,活動の形態などが異なる集団活動を通して,第1の目標に掲げる特別活動で育成すべき「資質・能力」を身に付けることを目指して行うものである。

学習指導要領第5章の第2では,各活動・学校行事の目標を,次のとおり示している。
いずれの目標も集団の特質や活動の過程の特徴を踏まえた活動を通して,第1の目標に示す資質・能力を育てるものであることを示している。学習指導要領において,各活動・学校行事ごとに育成を目指す資質・能力を資質・能力の三つの柱に即して具体的に示していないのはそのためであり,各学校においては,こうした特別活動の全体目標と各活動・学校行事の目標の関係を踏まえて,それぞれの活動の特質を生かした指導計画を作成し,指導の充実を図ることが大切である。

特別活動の目標(全体目標)

集団や社会の形成者としての見方・考え方を働かせ,様々な集団活動に自主的,実践的に取り組み,互いのよさや可能性を発揮しながら集団や自己の生活上の課題を解決することを通して,次のとおり資質・能力を育成することを目指す。
(1) 多様な他者と協働する様々な集団活動の意義や活動を行う上で必要となることについて理解し,行動の仕方を身に付けるようにする。
(2) 集団や自己の生活,人間関係の課題を見いだし,解決するために話し合い,合意形成を図ったり,意思決定したりすることができるようにする。
(3) 自主的,実践的な集団活動を通して身に付けたことを生かして,集団や社会における生活及び人間関係をよりよく形成するとともに,人間としての生き方についての考えを深め,自己実現を図ろうとする態度を養う。

※ 平成20年中学校学習指導要領「特別活動」目標
「望ましい集団活動を通して,心身の調和のとれた発達と個性の伸長を図り,集団や社会の一員としてよりよい生活や人間関係を築こうとする自主的,実践的な態度を育てるとともに,人間としての生き方についての自覚を深め,自己を生かす能力を養う。」

学級活動の目標

学級や学校での生活をよりよくするための課題を見いだし,解決するために話し合い,合意形成し,役割を分担して協力して実践したり,学級での話合いを生かして自己の課題の解決及び将来の生き方を描くために意思決定して実践したりすることに,自主的,実践的に取り組むことを通して,第1の目標に掲げる資質・能力を育成することを目指す。

※ 平成20年中学校学習指導要領「学級活動」目標
「学級活動を通して,望ましい人間関係を形成し,集団の一員として学級や学校におけるよりよい生活づくりに参画し,諸問題を解決しようとする自主的,実践的な態度や健全な生活態度を育てる。」

生徒会活動の目標

異年齢の生徒同士で協力し,学校生活の充実と向上を図るための諸問題の解決に向けて,計画を立て役割を分担し,協力して運営することに自主的,実践的に取り組むことを通して,第1の目標に掲げる資質・能力を育成することを目指す。

※ 平成20年中学校学習指導要領「生徒会活動」目標
「生徒会活動を通して,望ましい人間関係を形成し,集団や社会の一員としてよりよい学校生活づくりに参画し,協力して諸問題を解決しようとする自主的,実践的な態度を育てる。」

学校行事の目標

全校又は学年の生徒で協力し,よりよい学校生活を築くための体験的な活動を通して,集団への所属感や連帯感を深め,公共の精神を養いながら,第1の目標に掲げる資質・能力を育成することを目指す。

※ 平成20年中学校学習指導要領「学校行事」目標
「学校行事を通して,望ましい人間関係を形成し,集団への所属感や連帯感を深め,公共の精神を養い,協力してよりよい学校生活を築こうとする自主的,実践的な態度を育てる。」

5 特別活動における「主体的・対話的で深い学び」の実現

学習指導要領第1章総則の第3の1の(1)において,資質・能力を偏りなく育成するために,生徒の主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を行うこと,その際には各教科等の見方・考え方を働かせ,各教科等の学習の過程を重視して充実を図ることを示している。

特別活動においては,生徒同士の話合い活動や,生徒が自主的,実践的に活動することをその特質としてきた。
特別活動における主体的・対話的で深い学びの実現は,各活動・学校行事の学習過程において,授業や指導の工夫改善を行うことで,一連の活動過程の中での質の高い学びを実現することである。
それは,特別活動の各活動・学校行事の内容を深く理解し,それぞれを通して資質・能力を身に付け,中学校卒業後も能動的に学び続けるようにすることでもある。

(1)「主体的な学び」の実現

主体的な学びの実現とは,
学ぶことに興味・関心をもち,学校生活に起因する諸課題の改善・解消やキャリア形成の方向性と自己との関連を明確にしながら,見通しをもって粘り強く取り組み,自己の活動を振り返りながら改善・解消 に励むなど,活動の意義を理解した取組である。

特別活動においては,学級や学校における集団活動を通して,生活上の諸課題を見いだし解決できるようにすることが大切である。
例えば,
・ 自分たちの実態や自己の現状に即して,課題を見いだしたり,
・ 解決方法を決めて実践したり,
・ その取組を振り返り,よい点や改善点に気付いたり
できるようにすることが大切である。
こうした学習過程によって,集団や自己の新たな課題の発見や目標の設定が可能となり,生活を更によりよくしようという次の活動への動機付けとなるなど,生徒の主体的な学びが可能になる。

※【主体的な学び】学ぶことに興味や関心を持ち,自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら,見通しを持って粘り強く取り組み,自己の学習活動を振り返って次につなげる「主体的な学び」が実現できているか。
子供自身が興味を持って積極的に取り組むとともに,学習活動を自ら振り返り意味付けたり,身に付いた資質・能力を自覚したり,共有したりすることが重要である。
「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の 学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)平成28年12月21日 中央教育審議会」

(2)対話的な学びの実現

対話的な学びの実現とは,
生徒相互の協働,教職員や地域の人との対話,先 哲の考え方や資料等を手掛かりに考えたり話し合ったりすることを通して,自己の考え方を協働的に広げ深めていくことである。

特別活動は多様な他者との様々な集団活動を行うことを基本とし,そこでの「話合い」を全ての活動において重視してきた。
学級活動や生徒会活動の自治的な活動においては,学級や学校における生活上の課題を見いだし,解決するために合意形成を図ったり,意思決定したりする中で,他者の意見に触れ,自分の考えを広げ,課題について多面的・多角的に考えたりすることが重要である。

また,対話的な学びは,学級など同一集団の生徒同士の話合いにとどまるものではない。
・ 異年齢の児童生徒や障害のある幼児児童生徒等,多様な他者と対話しながら協働することや地域の人との交流を通して自分の考えを広げたり,自分のよさや努力に気付き自己肯定感を高めたりすること,
・ 自然体験活動を通して自然と向き合い学校生活では得られない体験から新たな気付きを得ること,
・ 職場体験活動を通して働く人の思いに触れて自分の勤労観・職業感を高めること,
・ キャリア形成に関する自分自身の意思決定の過程において他者や教師との対話を通して自己の考えを発展させることなど,
感性や思考力,実践力を豊かにし,よりよい合意形成や意思決定ができるようになることも,特別活動における対話的な学びとして重要である。

※【対話的な学び】子供同士の協働,教職員や地域の人との対話,先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ,自己の考えを広げ深める「対話的な学び」が実現できているか。
身に付けた知識や技能を定着させるとともに,物事の多面的で深い理解に至るためには,多様な表現を通じて,教職員と子供や,子供同士が対話し,それによって思考を広げ深めていくことが求められる。
「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の 学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)平成28年12月21日 中央教育審議会」

(3)深い学びの実現

深い学びの実現とは,
学びの過程の中で,各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら,知識を相互に関連付けてより深く理解したり,情報を精査して考えを形成したり,新たな課題を見いだして解決策を考えたり,思いや 考えを基に創造したりすることで,学んだことを深めることである。

特別活動における「深い学び」の実現には,特別活動が重視している「実践」を,単に行動の場面と狭く捉えるのではなく,課題の設定から振り返りまでの一連の活動を「実践」と捉えることが大切である。
特別活動において重視する「人間関係形成」,「社会参画」,「自己実現」の三つの視点のいずれについても各教科等で育成する資質・能力と様々に関わっている。
基本的な学習過程を繰り返す中で,各教科等の特質に応じた見方・考え方を総合的に働かせ,各教科等で学んだ知識や技能などを,集団及び自己の問題の解決のために活用していくことが大切である。

そのためには,それぞれの学習過程において,どのような資質・能力を育むことが必要なのかを明確にした上で,意図的・計画的に指導に当たることが,「深い学び」の実現につながるのである。

※【深い学び】習得・活用・探究という学びの過程の中で,各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら,知識を相互に関連付けてより深く理解したり,情報を精査して考えを形成したり,問題を見いだして解決策を考えたり,思いや考えを基に創造したりすることに向かう「深い学び」が実現できているか。
子供たちが,各教科等の学びの過程の中で,身に付けた資質・能力の三つの柱を活用・発揮しながら物事を捉え思考することを通じて,資質・能力がさらに伸ばされたり,新たな資質・能力が育まれたりしていくことが重要である。教員はこの中で,教える場面と,子供たちに思考・判断・表現させる場面を効果的に設計し関連させながら指導していくことが求められる。
「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の 学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)平成28年12月21日 中央教育審議会」


出典:文部科学省「中学校学習指導要領解説 特別活動編  第2章 特別活動の目標 第1節 特別活動の目標 」平成29年7月 [ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2017/07/25/1387018_13_1.pdf(参照2018/04/09)を加工して作成
平成29年7月版[ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/05/07/1387018_13_2.pdf(cf:2018-12-30) 確認

資料

特別活動において育成を目指す資質・能力の整理

特別活動において育成を目指す資質・能力の整理

中央教育審議会「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)別添資料(3/3)『特別活動において育成を目指す資質・能力の整理』別添17-1 」平成28年12月21日[ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2017/01/20/1380902_3_3_1.pdf(参照2018/04/09)






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