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次期学習指導要領における外国語教育の改訂方針と改善のポイント

 次期学習指導要領における外国語科・外国語活動の改訂において、現行の「英語嫌い」や「小中接続」の課題を踏まえ、どのような基本方針のもとで学習内容の再編や評価方法の見直しが進められているのでしょうか。

 児童生徒の学習意欲の維持と、指導内容の構造化による「実現可能性の確保」を最優先に、小中高を通じた質的な改善が議論されています。
 文部科学省が2025年9月に公表した教育課程企画特別部会の「論点整理(素案)」および2025年秋から開催されている「外国語ワーキンググループ(WG)」での審議に基づき、以下の重要項目を中心に整理が進められています。

1. 評価の観点別評価の見直し:通知表から「主体的に学習に取り組む態度」の数値評価を外し、個人内評価や見取りによる記述評価へとシフトする方針です。

2. 語彙・文法事項の精選と再構成:現行の目標過多による教員の負担や児童生徒の負担を軽減するため、指導内容の「削減・再整理」が行われています。

3. 小中接続のきめ細やかな充実:中学校1年生の初期段階において、小学校で親しんだ話題や語句を再度丁寧に扱う「緩やかな接続」を仕組み化します。

4. デジタル・AIの日常的活用:生成AI等のデジタル学習基盤を対話練習や個別最適な学びに日常的に組み込む方針が示されています。

1 改善の概要

 次期学習指導要領(2026年度内告示予定、2030年度小学校から順次全面実施予定)における外国語教育の改訂は、現行指導要領の「理念の継承」と、現場の「実現可能性の確保」という二大原則のバランスの上に成り立っています。現行の「5領域(聞くこと・読むこと・話すこと[やり取り/発表]・書くこと)」の資質・能力ベースの枠組みは維持しつつも、過度な詰め込みによって生じた「英語嫌いの増加」や「中1ギャップ」を解消するための劇的なリデザインが進められています。

 具体的には、これまでの「あれもこれも」という網羅的な指導から、本質的に重要な言語活動へ「資質・能力の構造化」を図る方向性が打ち出されました。学校現場における授業時数の制限を踏まえ、ただ知識を教え込む時間を減らし、子どもたちが実際に外国語を用いて自分の考えや気持ちを表現する時間を十分に確保できるようにします。また、GIGAスクール構想で配備された1人1台端末と生成AIの進化を受け、AIを「一対一の対話パートナー」や「即時フィードバックツール」として位置づけ、授業内だけでなく家庭学習も含めた個別最適な学びを一体的に充実させることが全校種共通の概要となっています。

 さらに、教員の評価負担軽減と子どもの学習意欲の維持を目的に、指導と評価の一体化も抜本的に見直されます。これまで現場を悩ませていた「主体的に学習に取り組む態度」への不透明な数値評価を改め、子どもたちが失敗を恐れずに外国語を使用できる環境づくりを目指しています。

2 改善のポイント現行学習指導要領と次期学習指導要領との比較

校種改善の視点現行学習指導要領の状況・課題次期学習指導要領の改善方針(予測・方針案含む)
小・中共通評価の在り方「主体的に学習に取り組む態度」の関心・意欲の数値評価が難しく、教員の負担大。数値評価から原則除外し、所見欄等の記述や個人内評価へシフト。思考・判断・表現に包摂。
小・中共通デジタル・AI活用1人1台端末の活用が音声の視聴や調べ学習などの補助的利用に留まる。生成AI等を日常的な対話相手として活用。個別最適な音声・表現練習環境を構築。
小学校外国語活動(3・4年)音声に親しむ活動が中心。中学校への連続性が一部見えにくい。楽しさを維持しつつ、中・高学年への語彙やフレーズの緩やかな基盤づくりを明確化。
小学校外国語科(5・6年)早期の「読むこと・書くこと」の導入により、一部で学習動機が低下。音声によるコミュニケーションを主軸とし、読み書きの質・量を精選
小・中接続中1ギャップの解消小学校での既習事項(語彙等)がリセットされ、中1で文法主導になり躓く。「数学ガイダンス」等と同様の接続期間を設置。小1の話題や語彙を中1初期に再配分。
中学校語彙・文法数の精選現行の1,600〜2,500語への増加(小中計)が現場の過度な負担に。修得すべき語彙数・文法事項を削減・再整理し、「生きて働く知識」へ精選。
中学校言語活動の質「授業は英語で行うことを基本」とするが、文法解説に終始する傾向。言語活動を通した指導を再定義。「練習」「文法」「母語使用」のベストミックス
中・高共通領域の統合的扱い領域ごとに細分化された指導になりがちで、実際のコミュニケーションから遠い。「読む・書く・話す聞く」を一体で扱う機能的な指導への構造転換(国語科の改革と平仄)。
高等学校科目構造の再編「英語コミュニケーション」と「論理・表現」の連動が難しく、形骸化の懸念。各教科の構造作り替えに合わせ、発信力をよりシームレスに育成する科目へ再編
高等学校多様性への対応地域や学校ごとの英語力格差が大きく、共通の基準達成が困難。共通性の確保より「多様性への対応」を優先。学校独自の柔軟なカリキュラム設計。

3 改善のポイント

(1) 全教科共通の改善ポイント

1. 「主体的に学習に取り組む態度」の数値評価からの除外と記述・個人内評価への移行
 現行の観点別学習評価において、評価の客観性確保や教員の業務負担軽減が長年の課題となっていた「主体的に学習に取り組む態度」の3段階等による目標準拠評価(数値評価)を廃止し、評定(5段階等の評定総括)の積算対象から除外する方針である。
 今後は、児童生徒が自らの学びを振り返り調整する姿を看取るための「個人内評価」としてその役割を再定義する。通知表や指導要録等においては、数値による観点別評価を排し、所見欄等の活用による記述式評価や記号を用いた見取りへと移行することで、評価業務の適正化と実質的な授業改善への集中を図る。

2. 評価の二観点化による数値評価の重点化
 上記の評価改革に伴い、今後の通知表や指導要録における観点別の数値評価および評定算出は、「知識・技能」および「思考・判断・表現」の二つの観点へと重点化される。
 これにより、客観的に計測・評価可能な側面に数値評定を集中させ、児童生徒や保護者に対しても「何が身に付き、どこで思考が深まったか」をより明確かつ納得感のある形でフィードバックできる体制を全教科等で確立する。

3. 新領域・新教科の設置に伴う情報活用能力の全教科展開
 生成AI等の急速な普及やデジタル社会の深化を受け、情報活用能力を「あらゆる学習の基盤」としてすべての教科で系統的に育成する。
次期学習指導要領に向けては、小学校段階における「情報の領域(仮称)」の新設や、中学校段階における「情報・技術科(仮称)」の再編設置が議論されている。これに伴い、全教科等において単に端末を利用する段階から、提示された情報やAIが出力したテキストの信憑性を批判的に読み解くメディアリテラシー(クリティカル・シンキング)や、著作権、情報モラル、データの適切な扱いを、各教科の探究的な学習活動に確実に組み込む指導への高度化を推進する。

4. カリキュラムの構造化による教育課程の明確な可視化
 学習指導要領が示す「資質・能力の三つの柱」を、各学校現場がより実効的に教育課程に反映できるよう、目標の構造化を図る。各教科・科目において、学習の目的や場面に応じた共通の機能カテゴリや、資質・能力の段階的な見通しを明瞭に提示する。
 これにより、指導者が単元の目的や他教科とのつながりを明確に意識し、見通しの良いカリキュラムマネジメントを効果的に編成できる体制を構築する。

5. デジタル学習基盤の早期定着と指導の系統化
 GIGAスクール構想による1人1台端末をすべての教科の授業で効果的に使いこなすため、デジタル入出力のスキルを学習の共通基盤として位置付ける。
 特に小学校のスタートアップ期におけるキーボード入力(タイピング)や音声入力等の指導手順を全教科共通の基盤として体系化する。「手書きによる身体的な習得」と「ICTによる効率的な表現」のバランスを最適化し、全ての教科等において端末を思考の道具として滑らかに活用できる指導体制を目指す。

6. 対話の質の向上と協働的な合意形成・課題解決の重視
 主体的・対話的で深い学びの形骸化を防ぐため、すべての教科における話し合い活動の質的向上を図る。単なる感想の交流や同調的なグループワークにとどまらず、「異なる意見を整理し、客観的根拠をもとに調整して、新たな最適解を導く合意形成のプロセス」を重視する。
各教科の特質に応じた適切な対話の方法(数学的な説明、道徳的な価値の議論など)を段階的に指導し、集団として質の高い課題解決へと導く資質・能力を育成する。

7. 情報活用能力を基盤とした探究的な学びの全教科横断展開
 「総合的な学習(探究)の時間」で培う探究のプロセス(課題の設定、情報の収集、整理・分析、まとめ・表現)を基礎としつつ、次期課程では「情報活用能力」をその中核的基盤に位置付ける。小学校の総合的な学習の時間内等に新設が検討されている「情報の領域(仮称)」等で習得した情報の収集・分析スキルを背景に、理科、社会、算数・数学などすべての教科において、自ら問いを立てて仮説を検証する探究的な授業デザインへの転換を全教科等で推進する。

8. 幼少中高の連続性確保と多様なニーズに対応する接続期カリキュラムの強化
 校種間の移行期における学習環境の急変や段差(いわゆる中1ギャップ小1プロブレム)を緩和するため、総則を含めた教育課程全体の接続性を強化する。小学校低学年における「スタートアップカリキュラム」による幼児期の経験との円滑な接続を図る。また、中学校から高等学校への移行や生徒の多様な進路に応じた柔軟な教科・科目の選択配置を可能とするとともに、不登校等の児童生徒への配慮事項や特別の教育課程の特例に関する事項を総則等へ反映し、誰一人取り残さない学びの連続性を担保する。

(2) 外国語教育の改善のポイント

 現行学習指導要領の検証から見えてきた課題に対処するため、次期改訂では具体的に以下のポイントに沿って詳細な改善が進められています。重要度および全校種共通の観点、ならびに小中学校の接続に重点を置いた解説は以下の通りです。

1. 「主体的に学習に取り組む態度」の評価方法の抜本的見直し(小・中・高共通)
 現行の観点別評価において、「関心・意欲・態度」をA・B・Cといった数値で画一的に評価することは、児童生徒の自由な発話を萎縮させ、教員の主観に頼らざるを得ないという深刻な課題を抱えていました。中教審の審議(2025年7月・9月方針発表)では、この観点を原則として個人内の「学びに向かう力」として捉え、通知表の数値評価から外す方向で検討されています。思考・判断・表現の過程で特に発揮された粘り強さなどはそちらの観点に内包させ、見取りは所見欄の記述で行うことで、失敗を恐れず挑戦する外国語活動の本質を取り戻します。

2. 小中学校の緩やかな接続と「中1初期カリキュラム」の創設(小・中接続)
 小学校高学年での教科化以降、音声中心で学んできた児童が、中学校に入学した途端に文字や文法規則のシャワーを浴びて英語嫌いになる「中1ギャップ」が頻発しています。外国語WG(2025年12月第4回会合等)では、中学校1年生の最初の期(4〜6月等)を「接続期間」と位置づけ、小学校で扱った身近な「話題」や「語句」を再度繰り返し用いるカリキュラムの導入が議論されています。小学校の学びをリセットせず、音声から文字への広がりをきめ細かくケアする仕組みを制度化します。

3. 学習内容の「削減・再整理」による授業の質の向上(中学校・高等学校)
 現行改訂で大幅に増加した語彙数(小中高を通じて最大5,000語程度)や文法事項は、授業の消化不良を引き起こしていました。次期指導要領では、2026年4月の各教科WGの動向に見られるように、学習内容そのものを適切に「間引く(精選する)」ことで、一つの表現を多様な場面で使いこなす「深い意味理解」を重視します。

4. 生成AIなどのデジタル学習基盤を組み込んだ言語活動の再定義(小・中・高共通)
 GIGAスクール構想の端末を、単なる調べ学習ではなく「個別最適な言語習得ツール」へ進化させます。2026年2月の外国語WG(第9回会合)で示されたように、生成AIを日常的な対話相手として活用することで、45分や50分の授業時間内では絶対に担保できなかった「生徒一人あたりの圧倒的なアウトプット時間」を確保する方向性が、次期指導要領の目玉として議論されています。

4 今後の取組

 次期学習指導要領の2026年度内告示、および2030年度からの小学校全面実施に向けて、学校現場や教育委員会が今から着手すべき取組の方向性は極めて明確です。総括として最も重要なのは、「指導内容の削減=指導の質の向上」であるという意識改革です。単に教科書を最後まで終わらせるための「詰め込み型授業」から脱却し、子どもたちが主体的に言葉を発する言語活動の時間へと構造転換を図る必要があります。

 具体的な留意点として、まずは教育委員会主導のもと、「小中学校の教員間における合同研修」を定期化し、小学校の外国語科でどのような言語活動が行われているかを中学校側が正しく把握する仕組みを作ることです。また、指導と評価の一体化に向けて、2030年度を待たずに現行の通知表評価の見直し(数値評価に縛られない見取りの工夫)をサキドリ的に研究・実践することが推奨されます。さらに、生成AIなどのデジタルツールを「教育の敵」とするのではなく、児童生徒が自立的な学習者(自己調整学習)へと育つための伴走者として授業デザインにどう組み込むか、今からの積極的な検証と実践の積み重ねが求められています。

参考文献・出典一覧

文部科学省 中央教育審議会 教育課程部会「教育課程企画特別部会 論点整理(素案)」(2025年9月公表)文部科学省 中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会 外国語ワーキンググループ(2025年9月〜2026年現在継続審議中)

  • 第4回会合(2025年12月1日開催):小中接続の円滑化、中1初期カリキュラムに関する議論
  • 第8回会合(2026年2月6日開催):言語活動の充実、「練習・文法・母語使用」のベストミックスに関する議論
  • 第9回会合(2026年2月20日開催):AIを含むデジタル学習基盤の外国語教育における活用の在り方に関する議論

文部科学省 報道・各種動向資料「次期学習指導要領の見直し方針・主体的に学習に取り組む態度の評価見直しについて」(2025年7月・9月発表)

 

 

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