「円錐の体積は、円柱の体積に \(\dfrac{1}{3}\) をかける」
学校の数学でこのように習いますが、「なぜ \(\dfrac{1}{3}\) になるの?」と疑問に思ったことはありませんか。
学校の授業では、実際に容器に水や砂を入れ替える実験で「ほら、3回でぴったり満タンになったでしょう。」と確認することがほとんどです。しかし、実は実験に頼らなくても、パズルのように美しく数学的に証明することができます。
「中学生の知識だけで完璧に納得できる証明なんてあるの。」と思うかもしれませんが、安心してください。
本記事では、論理的な正しい証明を、1つの立方体を3つのパーツに分ける立体パズルや、形が変わっても体積が変わらない不思議なルールを使って、誰でもイメージできるように分かりやすく解説します。
なぜ円錐の体積は、円柱の \(\dfrac{1}{3}\) になるのか

学校の数学で「円錐の体積は、円柱の体積に \(\dfrac{1}{3}\) をかける」と学習します。
左図のように、
底面が合同で、高さの等しい円柱と円錐の容器を使い、円柱の容器に円錐の容器の何杯分の水が入るか、を調べる実験をします。
ちょうど3杯分入ることから、円錐の体積は、円柱の体積の \(\dfrac{1}{3}\) であるといえる
と説明します。
このように、学校では実験で水を入れ替えて確かめることが多いですが、実はパズルのように美しく数学的に証明することができます。
中学生の知識だけで納得できるように、3つのステップで証明してみましょう。
ステップ1:立方体を「3つの四角錐」に分解する(パズルで証明)
まずは、円ではなくカクカクした「立方体(サイコロの形)」で考えます。
1辺の長さが \(a\) の立方体を用意し、上の面の4つの角を A, B, C, D、真下の面の4つの角を E, F, G, H と名前をつけます。

このパズルの最大のコツは、
1つの頂点(今回は A )をすべての四角錐の「尖った頂点(頂点)」にする
ことです。
頂点 A を固定したまま、立方体に包丁を入れて3つのパーツに切り分けます。
青色AFG、赤色ACG、緑色AGHの3つの面に包丁を入れます。
すると、次の3つの四角錐ができあがります。
① 1つ目の四角錐(下の面が底面)
- 底面:立方体の「一番下の面」である 正方形 EFGH
- 頂点:A
- 特徴:真上から見ると、頂点 A が真下の角 E の真上にあります。まっすぐな壁が1面ある、少し傾いた四角錐(錐体 A-EFGH)です。
② 2つ目の四角錐(手前の面が底面)
- 底面:立方体の「手前の面」である 正方形 DCGH
- 頂点:A
- 特徴:これも頂点 A から手前の面に向かって伸びる四角錐(錐体 A-DCGH)です。
③ 3つ目の四角錐(右側の面が底面)
- 底面:立方体の「右側の面」である 正方形 BCGF
- 頂点:A
- 特徴:頂点 A から右側の面に向かって伸びる四角錐(錐体 A-BCGF)です。
なぜ「完全に同じ形(合同)」と言えるのか
「向きがバラバラで、本当に同じ形なのか。」と疑いたくなりますよね。
しかし、この3つの四角錐は、どれも次の全く同じサイズの特徴をもっています。
つまり、これらは向きが違うだけで、回転させると完全にぴったり重なる「合同」な図形です。
重なりも隙間もないことの証明
最後に、この3つを合わせると本当に元の立方体に戻るのか、隙間がないのかを確認します。
立方体の6つの面のうち、残りの3つの面(上の面 ABCD、左の面 AEHD、奥の面 ABFE)に注目してください。これらは、3つの四角錐がそれぞれ「頂点 A」を共有することで、きれいに包み込まれます。
このように、1つの頂点から向かい合う3つの面へ向かって広がるピラミッドを3つ組み合わせると、隙間なく1つの立方体が完成します。
立方体全体の体積は \(a^3\) で、それが全く同じ形の3つに分かれたので、四角錐1つの体積は必ず次のようになります。
- 四角錐の体積 = \(\dfrac{1}{3} a^3\) = \(\dfrac{1}{3} \times\) 底面積 \(\times\) 高さ
これで、「高さが同じ錐体(すいたい)の体積は、柱の \(\dfrac{1}{3}\) になる」という大原則が証明できました。
ステップ2:形が変わっても体積は変わらない(カヴァリエリの原理)
「底面が正方形のときは分かったけど、他の形はどうなるのか。」と思いますよね。
ここで、数学の重要な決まりである「カヴァリエリの原理」を使います。
- コインの山をイメージしてください。
- コインをまっすぐ積み上げた柱と、斜めにズラして積み上げた柱があります。
- どちらも使っているコインの枚数(各階の面積)と全体の高さが同じなら、形が斜めに歪んでも体積は同じになります。
この原理により、底面が正方形の四角錐だけでなく、底面が長方形、三角形、あるいは複雑な多角形であっても、
底面積と高さが同じであれば、体積はすべて「\(\dfrac{1}{3} \times \text{底面積} \times \text{高さ}\)」
になります。

ステップ3:多角形から「円錐」へ(細かく切って比べる)
最後に、底面を「円」に進化させます。
ここでは、同じ底面積と高さを持つ「円柱」と「円錐」を並べて、ケーキのように中心から1万等分に細かく切り分けた「1ピース」同士で比べてみましょう。
円という図形は、細かく切るほど「底面が極めて小さな三角形」の集まり(多角形)とみなすことができます。

① 円柱を細かく切った「1ピース」
円柱を1万等分に細かく切ると、取り出した1ピースは細長い「三角柱」の形になります。
この細い三角柱の体積 = 小さな底面積 \(\times \) 高さ
② 円錐を細かく切った「1ピース」
円錐をまったく同じように1万等分に切ると、上に向かって尖っているため、細長い「三角錐(ピラミッド型)」の形になります。
③ 1ピース同士を比べると、きれいに「3分の1」になる
ここで、取り出した「細い三角柱」と「細い三角錐」を比べます。
ステップ2のルール(カヴァリエリの原理)を思い出してください。「底面積と高さが同じなら、錐体の体積は柱の体積の \(\dfrac{1}{3}\) になる」という大原則がありました。
つまり、切り分けた「細い三角錐」1つの体積は、相棒である「細い三角柱」の体積の完全に3分の1になります。
細い三角錐1つの体積 = \(\dfrac{1}{3} \times\) (細い三角柱1つの体積)
細い三角錐1つの体積 = \(\dfrac{1}{3} \times\) 小さな底面積 \(\times \) 高さ
全体を合わせれば、公式の完成!
1万等分した「細い三角錐」のすべてのピースが、それぞれ相棒の「細い三角柱」の \(\dfrac{1}{3}\) になっているということです。
ということは、これら1万個の三角錐をすべて集めて元の「円錐」に戻しても、全体の体積は「円柱」をすべて集めた体積の \(\dfrac{1}{3}\) のままになります。
「小さな底面積」を1万個すべて足し合わせると、元の大きな「円の面積(底面積)」に戻ります。
したがって、円錐の体積公式は以下のように美しく証明されます。
\[\text{円錐の体積}=\dfrac{1}{3}\times \text{底面積}\times \text{高さ}=\dfrac{1}{3}\pi r^{2}h\]
まとめ
- 立方体は、頂点Aを共有する3つの合同な四角錐(下・手前・右が底面)に美しく分解できる。
- カヴァリエリの原理により、形が斜めに歪んだり、底面の形が変わったりしても、体積の比率は変わらない。
- 円錐と円柱を細かく切って1ピースずつ比べると、常に「錐は柱の\(\dfrac{1}{3}\)」が成り立つため、全体を集めても\(\dfrac{1}{3}\)になる。