【中1数学】負の数の減法は、なぜプラス?3つの教え方でつまずき完全解消
「\(5 – (-3)\) が、なぜ、\(5 + 3\) になるの。」
お子さんに聞かれて、答えに詰まってしまった経験はありませんか。
「マイナスが2つ並んだらプラスに変える約束だから」と、理由を知らないとこのように説明したくなります。また、知っていても説明に時間を要することから避けてしまうこともあるでしょう。
しかしながら、理由を納得しないまま進むと、この先の数学の学習で、ミスを繰り返したり、数学の論理に大きな誤解を生んだりすることにつながります。
小学校の算数科から中学校の数学科への移行期である中学1年生数学との出会いは、多くの生徒が、より抽象化された数学に戸惑う時期です。特にこの「負の数の減法」は、最初の大きな関門と言えます。
この記事では、誰もが最初に出会う「負の数の減法」のつまずき原因を分析し、子どもが「そういうことか」と納得する3つの教え方を分かりやすく解説します。テストの符号ミスを防ぐ具体的な記述の仕方や理解度を確かめる練習問題も用意しました。
納得した手順を身に付け、数学の楽しさに気付く第一歩をここから始めましょう。
本記事の3行まとめ
1. 負の数の減法のつまずき
子どもがマイナスをひくという計算でつまずくのは、頭の中で次の2つの矛盾が起きているからと考えられます。
原因1:日常生活でマイナスをひく経験がない
「リンゴを3個もらう」増えるからプラスや「3個あげる」減るからマイナスは、目に見えます。だから、直感的に計算場面を納得し理解できます。日常生活の場面では、こうした場面は多数存在ことから、子どもはこのような体験を多くもっています。
しかし、「マイナス3個のリンゴを、さらにひき算する」と言われるとどうでしょう。現実世界で見たこと、考えたことがないため、未知の考え方につまずいてしまいます。
一方、負の数を使ってに生活を見る、と見方を変えれば、当てはめられることは多数あります。しかしながら、負の数を知っている人でもそうはしません。面倒だからです。だから、日常生活で、直接見ることも聞くこともほとんどないのです。子どもはそういう環境にいます。日常生活でマイナスをひく経験がないのです。
原因2:減法は減ると思い込んでいる
小学校算数科では、ひき算(\(-\))をすると答えはもとの数より減るのが当たり前でした。算数科の学習では、そのような問題場面に多数触れます。その中で、子どもは、ひき算をするとひく数の分だけもとの数より減るということを確定の事実として受け止めるようになります。日常生活でも、そう考えることが合理的で活用できることを体験してきています。
そのような中、中一数学科の学習で、ひき算のことを減法として学び、\(5 – (-3) = 8\) と「ひいて、答えがもとの数より大きくなる」という未知の考え方に出会います。この矛盾が、子どもたちのつまずきを生んでいます。
一方で、「未知の世界。これが中学校の数学かあ。」とプライドや知的好奇心をわかせながら、がぜん挑戦意欲をわかせる子どもがいることも事実です。
2. 負の数の減法についての基本的考え方
まずは、負の数の減法の基本的な考え方を確かめましょう。
ここでは、加法:\(A\) より大きい数を求める計算、減法:\(B\) より小さい数を求める計算、と考えます。
負の数の加法
\[(-3)+4=1\]\((-3)+4\) は、\(-3\) より、\(4\) 大きい数を求める計算
\[(-3)+(-4)=-7\]\((-3)+(-4)\) は、\(-3\) より、\(-4\) 大きい数を求める計算。これは、\(4\) 小さい数を求めることと同じ計算。
負の数の減法
\[(-3)-(+4)=-7\]\((-3)-(+4)\) は、\(-3\) より、\(4\) 小さい数を求める計算
\[(-3)-(-4)=1\]\((-3)-(-4)\) は、\(-3\) より、\(-4\) 小さい数を求める計算。これは、\(4\) 大きい数を求めることと同じ計算。
すなわち、\((-3)-(-4)\) は、\((-3)+4\) は、と同じ計算。\[(-3)-(-4)=(-3)+4\]
以上のように考え、負の数の減法は、符号を変えた数をたせばよい、と学びます。
上記の基本的な考え方を踏まえて、その理解を促す手段として、以下の考え方を活用してください。
3. 負の数の減法を理解を促す考え方
お子さんの性格や好みに合わせて、次の3つの方法から納得できるものを選んで説明してみてください。
アプローチA:数直線を歩く、顔の向きと進む向き
いちばんよく使われる方法で、数学の本質に近い教え方です。
数直線を「歩く道」と考えます。
数直線の道ですから、右に進めば道のりは長くなり、数は大きくなります。左に進めば数は小さくなります。ここでは、数直線上を、右、左に動く場面を考えます。
登場人物のキャラクターが、数直線の上を歩きます。キャラクターから見れば、前向き、後ろ向き、前に進む、後ろに進むという動きです。
ここでは、負の数の減法の学習のため、右向き、左向き、その向きに進む、反対向きに進むとして話を進めます。
1. 正の符号「+」、負の符号「-」は、顔の向き
道を歩く子どもが、どちらに向いているかを示します。
正の符号のときは、右を向きます。負の符号のときは、左を向きます。
2. 演算記号「+」「-」は、進む向き
道を歩く子どもが、どちら向きに進むかを示します。
たし算「+」のときは、道を歩く子どもの顔の向きに進みます。ひく計算「-」のときは、顔の向きとは反対向きに進みます。
この約束で、 「\(- (-3)\)」 を考えてみましょう。
まず、\(-3\) には、負の符号マイナスがついているので、「左(後ろ)」を向きます。
次に、ひく計算「-」なので 顔とは反対向き、すなわち、右に進みます。したがって、\(-(-3)\) は、もとの数より \(3\) 大きくなります。
3. 道を歩く子どもの様子
道を歩く子どもの様子を想像してみましょう。
まず、負の符号マイナスで、左を向きます。次に、ひく計算なので、顔とは反対向きに進もうとします。キャラクター本人からすると、左を向いた後、次に、後ろにさがれ、といわれているのです。
結果的に「右=プラスの向き」に進むことになります。だから、負の数をひく計算は、正の数をたす計算と同じになるのです。
4. 生活場面に、負の数の減法をあてはめて考える
日常成果の場面を考えてみましょう。
散歩していると、夕日がとても美しい。しばらく見ていたい。
でも、帰り道は、夕日と反対向き。
夕日を眺めつつ、後ずさりする。夕日からしだいに離れていく。
この場面は、負の数の減法とみることができます。
後ろを向いて後ろ向きに進めば、帰りたい家に向かえます。
「負の数をひく計算」という見方をすれば、あてはめられることは、生活の中にもいろいろありそうです。
アプローチB:増えたマイナス
お金の動きに例えると、納得する子どもも多いです。生活で接することが多いからでしょう。
ゲームが好きな子どもにゲームを例として説明するなど、その子どもの生活の中で触れることが多い事象を例にすると、意味の理解が深まります。
1. 財布の中には、5万円。手元にゲーム機と3万円の借金
あなたの財布には、自由に使える現金が 「5万円」 あります。
そして、あなたの部屋には、3万円のツケ(借金)で買ったばかりの 3万円のゲーム機 があります。
ゲーム機は、人気の機種。買った店から、1年以内ならいつでも3万円で買い戻せると言われています。
今のあなたの「本当の財産(純資産)」はいくらでしょうか。
本当の財産とは、持っているものを全部売って借金を返したら、手元に残る本当のお金のことです。
計算してみましょう。
「本当の財産(純資産)」=「現金 5万円」+「ゲーム機 3万円」-「借金 3万円」
すべてを合わせると、あなたの本当の財産は「5万円」の状態です。
\[5 + 3\text{ } – \text{ }3 = 5\]
2. お父さんが代わりに3万円払う
ここで、お父さんが笑顔で声をかけてきました。
「いつも家の仕事を頑張っているから、その 3万円の借金(マイナス3万円)を引き受けてあげるよ」
お父さんがあなたの3万円の借金を代わりに払って、借金を引き取ってくれました。
さあ、あなたの本当の財産はどうなったでしょうか。
借金という「マイナス」が消えました。だから、「3万円増えた」ことと同じ状態になります。
あなたには「現金 5万円」と、借金が消えて完全に自分のものになった「ゲーム機 3万円」が残りました。
ゲーム機は今売ると「現金3万円」。
つまり、あなたの本当の財産は、最初の5万円から「8万円」に増えたのです。
3. 負の数を使った式で表す
負の数の減法で式に表すと、こうなります。
5万円(最初の財産) - (-3)万円(借金を引く) = 8万円
マイナス(借金)を引き算する、なくすと、全体の数はプラス、増えるに変わります。
お父さんの行動で、負の数の減法の場面がよく分かります。
\[\begin{align}5-(-3)&=5+3\\
&=8\end{align}\]
アプローチC:「タイルの加法・減法」ゲーム
ゲームやパズルが好きな子どもには、相殺(そうさい)のルールで説明するのが効果的です。
タイルの操作
1枚でプラス \(1\) を表す「+タイル」と、1枚でマイナス \(1\) を表す「ータイル」があるとします。
この2枚を合わせると、\(1 + (-1) = 0\) となり、きれいに消滅し、数はゼロになります。
今、手元に 「+タイルが5枚」 あります。
ここから 「ータイル3枚をひく計算」、-タイルを3枚取り除きます。
でも、手元には+タイルしかないので、ータイルを取り除けません。
そこで、手元の大きさが変わらないように、手元の「 \(5\) 」に 0(+タイル3枚とータイル3枚の組)を加えます。
このとき、全体の大きさは「5」のまま変わりません。
ここから、 ータイル3枚を取り除きます。
すると、何が残るでしょうか。
もともとあった「+タイル5枚」に加えて、「+タイル3枚」が残ります。+タイル3枚は、ゼロペアを作った時の余りです。
これらのタイルの操作を基に考えると、\(5 – (-3)\) は、結果として \(5 + 3\) という計算に変えられることが説明できます。
正の数、負の数の計算の体系をつくる観点からの説明
負の数は、たしてもひいても答えは同じという矛盾
これまで、\(5-(-3)=5+3\) と説明しています。
仮に、\(5-(-3)=5-3\) とします。
すると、\(5-(-3)=5-3=2\) となります。
一方、 \(5+(-3)\) は、\(5\) より \(-3\) 大きい数を求める計算、 「\(-3\) 大きい」は「\(3\) 」小さいと同じなので、
\(5+(-3)\) は、\(5\) より \(3\) 小さい数を求める計算。
したがって\(5+(-3)=2\) であり、\(5-3=2\) と同じ計算です。
\(5+(-3),5-(-3)\) どちらも答えは、\(2\) とすると \(\Rightarrow 5+(-3)=5-(-3)\)
\(5-(-3)=5-3\) を許容すると、負の数は、たしてもひいても答えは同じ、ということが起きます。
正の数の和と差は違うのに、負の数の和と差は同じというずれが起きます。
減法が、加法の逆算とならない矛盾
減法は、加法の逆算です。\[C-B=A\text{ならば}A+B=C\]
このことから、\(5-(-3)=2\) ならば、\(2+(-3)=5\) になる必要があります。
ですが、\(2+(-3)=-1\) です。答えが矛盾します。
そこで、\(5-(-3)\) を \(5+3\) の計算と同じとすると、たし算と整合性がとれます。 答えの矛盾も起きません。
このように、数学は、計算結果などが矛盾しないようにつくられ、体系化されています。
4. 符号ミスを防ぐ記述の仕方
理屈が分かったら、あとは確実に正しい解答を作るための実戦テクニックです。式の記述の仕方を次のようにすると、不注意な間違いは、かなり減ります。
ステップ1:符号の変化を「○」で囲むようにする
問題用紙やノートの \(- (-3)\) の部分を、鉛筆や赤ペンでぐるっと一緒に丸で囲むようにしましょう。
そして、その丸の上に小さく 「+」 と書き換える習慣をつけます。
または、\(-\) と \(-\) を結んで、\(+\) の記号に書き換える方法もあります。
ポイントは、視覚的に、「ここは符号が変わったぞ」と脳に意識させることです。
ステップ2:式を略さず、書き換えた式をはさむ
数学が苦手な子ほど、頭の中で一気に計算して、
答えを「 8 」とかこうとします。
途中の式を省かず、計算します。
\(5 – (-3)\)
\(= 5 + 3\) ← この1行を省かない
\(= 8\)
\[\begin{align}5 – (-3)&= 5 + 3\\
&= 8\end{align}\]
1行目右辺( \(5+3\) )を省かない
この1行をはさむ手間を惜しまないことが、のちの複雑な文字式や方程式で大きな差になります。
5. やる気を引き出す声かけ
「こういうルールだから、言われたとおりに覚えなさい。」
このように関わってしまうと、子どもは数学をただの暗記教科だと考えるようになます。そして、理由が判然としないまま、学習が進んでいくと、手順優先の理解になりやすくなります。なぜそういう手順でできるのか。それは正しいのか。という疑問をもたなくなります。
式が出てくると、ほぼ正確に計算できる。でも文章問題では立式ができない。よくある構図です。
そこで、上記の手立てを使いながら、負の数の減法について、再度教科書に戻って、教科書の説明を確実に理解することが大切です。
教科書の説明は、より数学的です。場面や数値、細かい言葉や図の表現は、厳密に高等数学と矛盾しないよう作られています。これが理解できれば、計算技術は確かなものになります。少々複雑になっても迷うことはないでしょう。
おすすめの声かけ:「これ、実は大人でも最初は『え?』って不思議に思う難しいところ。でも、この仕組みが分かれば、中1数学の大きな第一関門はクリアしたことなるよ。」
難しさを共感することで、子どものプライドを傷つけずに「解けるようになりたい」という意欲を引き出すことができます。
6. まとめ
負の数の減法、また、負の数の扱いは、小学校の算数から中学校の数学へ、抽象度がどの程度上がるのか体感できる学習内容です。
また、数を拡張する意味も実感してきます。これまで、0と自然数を対象とし、日常生活で数と対応する具体的場面を実感をもって体験してきました。これからは、頭の中で抽象度を上げて考える場面が多くを占めるようになります。考え方のアップデートです。
今回紹介した「数直線」や「借金」のイメージを使った学びを生かして、丸暗記ではない本質的な理解をお子さんと一緒に取り組み、楽しんでみてください。ここを乗り越えれば、この先に待っている「文字と式」や「方程式」もスムーズに理解できるようになります。
7. 【練習問題】3つのクイズに挑戦
理由が分かったら、実際に試してみましょう。
ノートとペンを用意して、「マイナスが2つ並んだら+に書き換える1行」をかいて解いてみてください。
一番最後に、アプリの問題もあります。挑戦してください。
【第1問】
$$4 – (-2) = \text{?}$$
【第2問】
$$-3 – (-5) = \text{?}$$
【第3問】
$$2 – 7 = \text{?}$$
答え合わせと解説
【第1問の答え】 \(6\)
- 式を書き換える1行: \(4 + 2\)
- 解説:
記事の通り、\(- (-2)\) の部分をぐるっと丸で囲んで「\(+\)」に変えましょう。「\(4\)万円持っている状態から、\(2\)万円の借金を取り除く」と考えれば、手元のお金は増えて \(6\)万円 になります。
【第2問の答え】 \(2\)
- 式を書き換える1行: \(-3 + 5\)
- 解説:
スタートが「\(-3\)」になってもルールは同じです。まずは後ろの \(- (-5)\) を \(+ 5\) に書き換えます。
「現在、\(3\)万円の借金がある状態(\(-3\))に、\(5\)万円が手に入った(\(+5\))」と考えましょう。借金を全額返しても、手元に \(2\) 万円が残ります。
【第3問の答え】 \(-5\)
- 式を書き換える1行: (書き換えは不要)
- 解説:
「あれ、プラスにならないのか」と思った人は、ひっかかっています。
この問題には、マイナスが2つ並んでいません。ただの「ひく計算」です。
「\(2\)万円持っているのに、\(7\)万円の買い物をした」と考えます。お金が足りないので、結果は \(-5\) (\(5\)万円の借金)になります。
「マイナスをひくとき(\(- (- \text{数})\))だけプラスに変わる」というルールを、正しく見極められたら完璧です。
負の数のひき算チャレンジクイズ!✏️
3問解いて、負の数のルールをマスターしよう!